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TS生贄娘は役割を遂行したい!  作者: 雲間
TS元生贄娘は誤解を解きたい!
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 お兄様は結構な時間笑いまくっていたのにまだ笑いがまだ治らないのか、半笑いの状態のままこう言った。


「あ、ありえね〜。カテリーネとヴァルだぞ? この2人……はははっ、げほっ。……あ〜、笑える。……ふぅ。そもそも2人を知ってたら、仲が熱々の熱烈すぎて疑う余地もねーって分かるのにな」

「お、お兄様……」


 身内にそうやって言われるのはすごく恥ずかしいんですけど……!

 お兄様が引き続きひいひいと笑っている中で、噂を報告してきた兵士さんは困り果てた様子で言葉を続けていく。


「はい。我々のように御二方を知っている者は、ありえないと思っております。ですので、知らない者からそのような噂が上がっているようでして……」


 おれとヴァルムントが婚約していることは知られてはいても、直接おれやヴァルムントのことを見たりしている人はそこまで多くない。

 そもそもおれはほぼ城に引き篭ってる状態だし、ヴァルムントくんはヴァルムントくんで暇な時に市井へ繰り出す性格ではないのだ。

 だから全員が全員おれ達の性格を知っている訳ではない故に、他の人からどういう人か聞いていても「裏では実は……」なんて考える人が出てくるのはあるだろう。

 あることないこと邪推するのも好きだからねぇ、人間って。

 おれは取り繕ってる部分があるからアレだけどさぁ、ヴァルムントくんを疑うのは許さないからな!

 スーパーハイパーウルトラクソ真面目ちゃんなんだぞ!

 冗談を言ったら真に受けちゃうかもしれないんだぞ!

 噂だって……、……あっ。


「ヴァ、ヴァルムント様に噂が届いてしまったらどうしましょう! 誤解されてしまったら……!」


 おれは恐ろしいことを思いついてしまって、思わず両手で口元を覆った。

 そもそもヴァルムントくんが噂を耳にするのすら嫌なんですけれども!?

 おっ、おれが! おれが好きなのはヴァルムントくんであって!

 2主人公のことも好きではあるけど、ヴァルムントくんの好きとは種類が違うんだからね!?

 い、嫌だ〜〜〜〜! ヴァルムントくん誤解しないで〜〜〜!!

 お、おれが、あ、あっ、あ、ああ愛してるのは君だけなんだから……!

 ひんひんしていたら、お兄様やラドおじさまも含めた周囲の人全員が生温い視線を送ってきているのに気がついた。

 なんでと困惑していると、お兄様がおれの隣にやってきて肩をポンポンしてくる。


「カテリーネ、お前はそのままでいいんだよ……」


 これ誤魔化されてる! 誤魔化されてるやつだよこれ!!

 おれってそんなおかしなことを言ったか!?


「なっ、何がでしょうか? そ、それよりも、ヴァルムント様の元へ行って説明をしないと……!」

「カテリーネ〜、参加者との接触は大会期間中禁止だぞ〜」


 あああああああ! そうだった!!

 こっちが主催にあたる以上、変な憶測立てられないようにと会うの駄目になってたんだったぁ!

 い、いや、でもこれは緊急……、緊急事態……う、うう。

 行くの駄目なことくらい分かってるんだよぉ!!

 でもでもでもでも!


「わたくしが行かないとヴァルムント様の誤解が解けません……!」


 他人におつかいさせて誤解だって伝えるのは駄目だ。

 ちゃんと自分自身が自分の気持ちを伝えなくちゃ、何の意味もない。

 おれがヴァルムントを好きだって気持ちは、おれしか持っていないんだから。

 ただでさえ、やっとちょっと進んだばっかりなのに、ここで変に誤解されて拗れるのは勘弁なんだよ!!

 恋のスパイスだとか、そんなもんいらねーんだから!

 ムッスーとお兄様を見つめていると、お兄様は「ん〜」と呻いてからおれの肩に片腕を回して再びポンポンしてくる。


「この中で一番ヴァルを知っているのは俺だと思う。だからこそ言えるんだが、ヴァルはそういった噂で惑わされるような人間じゃないぞ」

「……ヴァルムント様は純粋なお方です。ですので、そう思われてしまうのではないかと心配に」


 ……お兄様がそう言うのなら、そうなのかもしれない。

 お兄様の方がヴァルムントをずっと知っているのは本当だし、間違いはないんだと思う。

 でも、でも、うう~ん。不安で仕方ない気持ちが晴れない……!

 やっぱヴァルムントと直接話がしたいよ!!

 なおも悩み続けるおれに、お兄様はお気楽そうな声でこう言ってきた。


「噂を払拭させたいってんならアレだな。ヴァルムントが優勝した時にでも熱々っぷりを見せつけてやれ。抱き着いて熱烈なちゅ~でもかませば誰もお前達の仲を疑いなんかしないだろうさ」

「おっ、お兄様!!」


 何を言ってんのこの人は!!

 真っ赤になってお兄様をぺちぺちすると、ケタケタ笑いながら言葉を続けた。


「まぁ、なんだ! ヴァルのことを信じてやれ。それが今のお前にできることだ。……分かるだろ?」

「……はい」


 お兄様に気持ちを発散させたことで気持ちが静まったのか、素直に言葉を受け取ることができたおれは、ゆっくりと頷いたのだった。


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