56.vsバニング
翌朝。
決勝の日が訪れた。
コロッセウムは開場前から人で埋め尽くされ、熱気に包まれていた。
トーマは控え室で最後の準備を整えていた。
フィーナとリアナ、そしてアルターが見守る中、トーマは深呼吸をする。
「行ってくる。」
「トーマなら勝てるよ!」
フィーナが小さな拳を握る。
「無茶はしないでよ。」
リアナも心配そうに言う。
「あのバニング相手にどう戦うのか…見せてもらうぞ。」
アルターが静かに告げる。
トーマは頷き、闘技場への通路へと歩き出した。
観客席から轟音のような歓声が聞こえてくる。
(さあ…始めよう。)
トーマは通路の先に見える光へと、一歩を踏み出した。
◆
『さあ!ついに来ました!闘技大会決勝戦!』
実況の声が会場中に響き渡る。
『一方は予選から驚異の強さを見せ、準決勝ではダークホースのシェド選手を劇的な逆転で下した!トーマ選手!』
トーマが闘技場に姿を現すと、大歓声が上がる。
『そして、もう一方は!三年連続優勝!誰もが認める最強の男!バニング・ライオンハート選手!』
対面から現れたバニングを見て、会場の空気が変わる。
圧倒的な存在感。
それだけで、勝負が決まっているかのような雰囲気。
バニングはトーマを一瞥し、不敵に笑った。
「よく来たな、小僧。昨日の試合、見せてもらったぞ。」
「…ああ。」
トーマは短く返す。
「お前、成長したな。あのエキシビジョンの時とは別人だ。」
「色々…あったからな。」
「だが…」
バニングの目が鋭くなる。
「それでも、まだ渇きを満たすほどじゃねぇ。全てをぶつけてこい。じゃないと…殺す。」
その言葉に、会場がどよめく。
だが、トーマは怯まなかった。
「安心しろ。俺はお前をぶっ飛ばす。」
トーマの言葉に、バニングの笑みが深くなる。
「面白い…その自信、本物かみせてみろや。」
二人は対峙する。
審判が手を上げる。
会場が静まり返る。
トーマは深呼吸をする。
(来るぞ…)
そして…
「始め!」
審判の声と共に、決勝戦の火蓋が切って落とされた。
◆
バニングが動く。
いや、消えた。
(速い!)
トーマは即座に【反転】を発動する。
次の瞬間、背後から凄まじい殺気を感じた。
(感じる…バニングの敵意が!)
トーマの【反転】が、その敵意を感知する。
バニングの拳がトーマを襲う―が、その軌道が僅かにずれる。
「!」
バニングの拳が空を切る。
トーマはそのまま反撃の拳を放つ。
だが、バニングは余裕で避ける。
「やっぱり【反転】か。エキシビジョンの時と同じだな。」
バニングは納得したように言う。
「だが、それだけじゃ俺には勝てねえぞ。」
バニングが再び動く。
今度は正面から。速度を上げた突進。
トーマは【反転】で対応しようとするが―
「遅い!」
バニングの拳がトーマの腹部に叩き込まれる。
「ぐっ!」
トーマは吹き飛ばされ、地面に転がる。
(くそ…速すぎる…!【反転】が間に合わない…!)
トーマは立ち上がり、バニングを睨む。
「どうした?その程度か?」
バニングは挑発するように言う。
「だったら…つまんねえな!」
その言葉にトーマは歯を食いしばる。
(集中しろ…【反転】の感知範囲を広げるんだ…!)
トーマは意識を研ぎ澄ます。
バニングが再び動く。
今度は左から。
(感じる…!)
トーマの【反転】が、バニングの敵意を感知する。
バニングの拳が―外れる。
トーマはそのまま反撃の蹴りを放つ。
バニングは避けようとするが―
「!」
トーマの蹴りがバニングの脇腹を捉える。
「おっ!」
バニングは少し後退する。
会場がどよめく。
『トーマ選手、バニング選手に攻撃を当てました!』
実況の声が響く。
バニングは脇腹を撫でながら笑う。
「ハハハ!やるじゃねえか!」
バニングの目が輝く。
「面白くなってきた!もっとやろうぜ!」
バニングの全身から、さらに強大な気配が溢れ出す。
「【剛力】!」
バニングの拳に【剛力】が発動する。
(来る…!)
トーマは警戒を最大にする。
バニングが突進する。
速度が更に速くなっている。
(速い…だが…!)
トーマは【反転】を発動し続ける。
バニングの拳が次々とトーマを襲う。
だが、そのどれもが僅かにずれる。
「ちっ!」
バニングは舌打ちする。
「面白いスキルだな…だが!」
バニングは攻撃の手を緩めない。
連打、連打、連打。
トーマは必死に【反転】で対応するが、次第に集中力が削られていく。
(くそ…維持がきつい…!)
その隙を、バニングは見逃さなかった。
「もらった!」
バニングの拳がトーマの顔面を捉える。
「がっ!」
トーマは吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。
口から血が溢れる。
「ハァ…ハァ…」
トーマは立ち上がるが、視界が揺れる。
(くそ…やはり【反転】を維持し続けても上回ってくる…)
バニングの強さを肌で感じる。
(だが…まだ負けるわけにはいかない!)
トーマは【反転】を自分の傷にかける。一瞬で傷が無くなる。
バニングはトーマを見て、少し残念そうな顔をする。
「もう終わりか?だったらつまんねえな。まだアルターの方がマシだったぜ?」
その言葉にトーマは歯を食いしばる。
(ふざけるな…!)
トーマは立ち上がり、拳を握りしめる。
「まだだ…まだ終わってない!」
その言葉に、バニングの目が輝く。
「そうだ!それでいい!」
バニングは嬉しそうに笑う。
「もっと楽しませてくれよ、トーマ!」
二人は再び対峙する。
トーマは深呼吸をする。
(【反転】で敵意を感知して反転させる…それだけじゃ足りない。)
トーマは
(もっと…もっと広く、深く感知するんだ!)
トーマは意識を極限まで研ぎ澄ます。
バニングの動き、呼吸、殺気、視線…全てを感じ取ろうとする。
(感じろ…バニングの全てを…!)
バニングが動く。
今度は右から。
(感じる…!)
トーマの【反転】が、バニングの攻撃を感知する。
バニングの拳が―ずれる。
トーマは即座に反撃の拳を放つ。
バニングは避けようとするが―
「!」
トーマの拳がバニングの腹部を捉える。
「ぐっ!」
バニングは僅かに後退する。
会場がどよめく。
『トーマ選手、再びバニング選手に攻撃を当てました!』
実況の声が響く。
トーマは自分の手応えを確かめる。
(いける…【反転】の感知範囲が広がってる…!)
バニングは腹部を撫でながら笑う。
「ハハハ!面白い!お前、さっきより動きが良くなってるじゃねえか!」
バニングの目が鋭くなる。
「だが…まだまだだな!」
バニングが突進する。
速度がさらに上がっている。
(速い…!)
トーマは【反転】を発動し続ける。
バニングの拳が次々とトーマを襲う。
トーマは感知して、反転させて、避ける。
だが、バニングの速度は衰えない。
(くそ…このままじゃ…!)
その時、観客席から声が響く。
「トーマ!」
フィーナの声だ。
「がんばれ!」
リアナの声も聞こえる。
「やれ!トーマ!」
アルターの声も。
その声援が、トーマの心に火を灯す。
(俺は…負けるわけにはいかない…!)
トーマは再びバニングに向かって突進する。
バニングも構える。
「いいぞ!来い!」
二人の拳が激突する。
ドゴォォン!
衝撃波が会場を揺らす。
トーマとバニング、互いに一歩も引かない。
(まだだ…まだ終わらせない…!)
トーマは【反転】を駆使し、バニングの攻撃を感知し続ける。
(敵意、殺気、攻撃の意図…全てを感じ取って、反転させる…!)
バニングの拳が次々と襲いかかる。
トーマはそれらを反転させ、避け、反撃する。
「ハハハ!いいぞ、トーマ!もっとだ!」
バニングは歓喜の声を上げる。
「お前は…俺を楽しませてくれる!」
二人の激闘は、まだまだ続く。
会場は熱狂に包まれ、歓声が止まらない。
そして―
この戦いの行方は、まだ誰にもわからなかった。




