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最弱スキル【反転】で無双する異世界冒険譚  作者: いわたん
第三章 強くなるために
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54.アルターVSバニング

シェド戦後、控え室に戻ったトーマを、フィーナとリアナが駆け寄ってきた。


「トーマ!」


フィーナが満面の笑みでトーマに抱きつこうとするが、トーマは軽く避けた。


「やめろフィーナ。汗だらけだ。」


「でも、すごかった!」


フィーナは嬉しそうに飛び跳ねる。リアナも安堵した表情を浮かべていた。


「心配したわよ…最初はあんなボコボコにされて。」


「悪かったな。」


トーマは短く返すと、部屋の隅に置かれた椅子に腰を下ろした。


「それにしても…どうやって逆転したの?あの最後の攻撃、シェドは影に隠れてたはずなのに。」

リアナが首を傾げる。


「…運が良かっただけだ。」


トーマはそう言って考え込む。

(【反転】の変化についてむやみに言うべきではないな。)

精神世界で起きたことのせいかトーマは心の中で警戒心を保っていた。仲間とはいえ、自分の能力の変化について明かすつもりはなかった。


「運…?でも、明らかに何か変わってたわよね?」


「運命の女神さまが味方してくれたのかもな。」


リアナが食い下がろうとしたが、その時控え室のドアがノックされた。


「入っていいか?」


低く落ち着いた声。アルターだ。


「アルター。」


トーマが返事をすると、アルターが入ってくる。


「すごい試合だったな。特に後半…お前、まるで別人のようだった。」


アルターはトーマを真っ直ぐ見つめる。


「何があったんだ?」


「別に。ただ…本気を出しただけだ。」


トーマは表情を変えずに答える。

アルターはトーマの様子を見て、何かを察したような表情を浮かべたが、それ以上は追及しなかった。


「そうか…まあ、勝てたならそれでいい。」


アルターは肩をすくめる。


「さて…俺の出番だな。次はバニングとの準決勝だ。」


その言葉に、部屋の空気が引き締まる。


「バニング…」


リアナが緊張した面持ちで呟く。


「ああ。正直、勝てる気はしないが…全力でぶつかってみるさ。」


アルターは淡々と言う。


「負けるな。」


トーマが短く言い放つ。


「俺以外に負けるのは許さない。」


その言葉にアルターは笑った。


「ははは…相変わらずだな、お前は。わかった、やれるだけやってみるさ。」


アルターはそう言い残し、闘技場へと向かっていった。

『さあ!準決勝第二試合!』


実況の声が会場中に響き渡る。


『一方は予選から圧倒的な強さを見せ続け、A級ライセンスを持つ大剣使い!アルター選手!』


アルターが闘技場に姿を現すと、歓声が上がる。


『そして、もう一方は!三年連続優勝!共和国最強の男!バニング・ロレアル選手!』


バニングが現れると、会場の空気が一変する。

圧倒的な存在感。

それだけで、勝負が決まっているかのような雰囲気。

バニングはアルターを一瞥し、不敵に笑った。


「お前か…A級とはいえ、随分と上がってきたじゃねえか。」


「光栄だな。最強の男と戦えるなんて。」


アルターは落ち着いた口調で返す。


「だが…お前じゃ俺の飢えは満たせねえな。」


バニングは興味なさそうに言う。


「さっさと終わらせて、次のトーマとやらと戦いてえんだ。」


その言葉にアルターの目が鋭くなる。


「舐めるなよ、バニング。俺も…それなりにやれる自信はあるぞ。」


アルターは素手で構える。


(この闘技大会は武器禁止か…だが、素手でも俺にはやれることがある。)


二人は対峙する。

審判が手を上げる。

会場が静まり返る。

そして…


「始め!」


審判の声と共に、準決勝第二試合の火蓋が切って落とされた。

バニングが動く。

いや、消えた。


「!?」


アルターは瞬時に警戒態勢に入るが、次の瞬間、背後から凄まじい殺気を感じた。


(速い!)


アルターは咄嗟に腕で防御する。

ドゴォン!

鈍い音と共に、アルターの体が大きく吹き飛ばされる。


「ぐっ!」


アルターは空中で体勢を立て直し、地面に着地する。


(この速さ…そして威力…!腕が痺れる…!)


「おいおい、防御だけじゃつまんねえぞ。」


バニングは退屈そうに言う。


「もっと本気出せよ。お前ならもっとやれるだろ?」


その言葉にアルターは歯を食いしばる。


(くそ…武器なしじゃここまで差があるのか…!)


アルターは決断する。


(【闘気】!)


アルターの全身から黄金の気配が漂い始める。


「おっ?【闘気】か!面白くなってきたじゃねえか!」


バニングは興奮した様子で構える。

二人の激突が始まる。

アルターの拳とバニングの拳が何度も激突し、その度に衝撃波が会場を揺らす。


「いいぞ!もっと来い!」


バニングは嬉しそうに笑いながらアルターの攻撃を受け止める。

アルターは【闘気】で強化した拳を振るい、バニングの顔面を狙う。

バニングはそれを避けるが、アルターは即座に回し蹴りを放つ。


「おっ!」


バニングは腕でガードするが、その威力に少し後退する。


「やるじゃねえか!」


バニングの目が輝く。


(いける…!こいつ、まだ本気じゃない!)


アルターはさらに攻撃の手を緩めない。【闘気】を全身に纏い、連続攻撃を仕掛ける。

左ジャブ、右ストレート、膝蹴り、回し蹴り、そして跳び蹴り。

バニングはそれらを次々と捌いていくが、その表情には明らかな興奮が浮かんでいる。


「面白い!面白いぞ!」


バニングが笑いながら反撃に転じる。

だが、アルターもそれを読んでいた。バニングの拳を最小限の動きで避け、カウンターの肘打ちを放つ。

ゴッ!

肘打ちがバニングの顎を捉える。


「!」


バニングの顔が僅かに上を向く。

会場がどよめく。


『おおっと!アルター選手、バニング選手にまさかのクリーンヒット!』


実況の声が響く。

だが、バニングは笑っていた。


「ハハハ!いいぞ!アルター!」


バニングの全身から、さらに強大な気配が溢れ出す。


「【剛力】!」


バニングの拳に【剛力】が発動する。

アルターは即座に防御態勢に入るが、次の瞬間―

ドゴォォン!

バニングの拳がアルターの腕を通して腹部に衝撃を与える。


「ぐっ…!」


アルターは吹き飛ばされるが、空中で体勢を立て直し着地する。


(くそ…さすがに【剛力】は重い…!)

アルターの腕が痺れている。


「まだまだ!」


アルターは再び突進する。【闘気】を最大限に高め、全力の連打を放つ。

バニングもそれに応える。二人の拳が激突し、衝撃波が次々と会場を揺らす。

観客席では―


「アルター…すごいわ!あのバニングと互角に…!」


リアナが興奮して叫ぶ。


「すごい!」


フィーナも目を輝かせている。

トーマは冷静に戦いを分析していた。


(アルター…善戦してる。だが…バニングはまだ本気じゃない。【獣化】を使っていない。)


トーマの読み通り、バニングはまだ余裕を残していた。

だが、その表情には確かな満足感が浮かんでいる。


バニングが戦いながら問う。


「アルターか…お前、強いな。久々に楽しめてる。」


バニングの目が鋭くなる。


「だが…そろそろ終わりにしねえとな。」


バニングの雰囲気が変わる。


(来るか…!)


アルターは警戒を最大にする。


「【獣化】…使おうかと思ったが…」


バニングは一瞬考え込む。


「いや、お前にはまだ必要ねえな。このままで十分だ。」


その言葉にアルターは驚く。


(俺では…【獣化】を使わせるほどじゃないのか…!)


「いくぞ。」


バニングがそう言うと次の瞬間、バニングの速度が倍になる。


「!?」


アルターは反応できなかった。

バニングの拳が、アルターの腹部、顔面、脇腹に次々と叩き込まれる。


「ぐっ…がっ…!」


アルターは防御する暇もなく、一方的に攻撃を受ける。


(速い…これが…最強の男…!)


最後に、バニングの渾身の右ストレートがアルターの顔面を捉える。

ドゴォォン!

アルターは吹き飛ばされ、闘技場の壁に叩きつけられる。

そしてそのまま地面に崩れ落ちた。

審判が駆け寄り、アルターの状態を確認し戦闘継続は出来ないと判定された。


『戦闘続行不可能!勝者、バニング・ライオンハート!』


会場が歓声に包まれる。

だが、バニングは少し残念そうな顔をしていた。


「まだ…まだ足りないな。」


そして、観客席のトーマを見た。


「次はお前だ、トーマ。アルターより強いんだろうな?俺の飢えを満たせるのは…お前しかいねえ。」


バニングはそう言い残し、闘技場を後にした。



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