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side:剣聖と聖女

王宮に残された勇人と美咲の心境は複雑だった。二人は豪華な部屋に通され、食事や寝床などの手厚いもてなしを受けていた。しかし、その心はどこか満たされていなかった。


部屋は豪華絢爛で、絹のカーテンや金の装飾が施された家具が並んでいた。だが、その煌びやかな環境は、二人の心を余計に重くさせるだけだった。豪華な食事も、柔らかなベッドも、全てが「自分たちが選ばれた者だ」という現実を突きつける一方で、東真が追放された事実を忘れさせてはくれなかった。


勇人はベッドに腰掛け、深くため息をついた。「東真、あいつ…本当に大丈夫かな…」勇人の声には、不安と罪悪感が滲んでいた。彼の心には、親友を救えなかった無力感と、自分だけが英雄として扱われていることへの違和感が常に付きまとっていた。


「私も…心配だよ、勇人」


美咲は窓辺に立ち、遠くに広がる森の方角をじっと見つめていた。その瞳には、不安と後悔が色濃く表れていた。彼女はあの時、東真を助けられなかった自分を悔やみ続けていた。勇人と美咲の間には沈黙が広がり、その沈黙は部屋の豪華さとは対照的に、冷たく、重苦しいものだった。


「何か…何かできたはずなのに…」美咲は涙ぐむ声で言った。彼女の言葉には、自分に対する苛立ちと後悔が込められていた。


勇人は拳を強く握りしめ、立ち上がった。「でも、今は…俺たちがもっと強くなるしかないんだ。東真のためにも…そして、自分たちのためにも。」


勇人の声には決意がこもっていた。彼はこの世界で自分の力を証明し、いつか東真を助け出すことを誓っていた。彼らがこの異世界に呼ばれた理由、それを受け入れ、今できることを全力で果たすしかないと、自分に言い聞かせていた。


「東真がどこにいるのかもわからないけど、きっと無事でいるはずだよ。あいつはそんなに弱くない」


美咲は小さく頷き、視線を森から離して勇人を見つめた。「そうだね、東真なら…きっと大丈夫だよね。でも、私たちも強くならないと、東真に顔向けできない…」


「そうだ。俺たちが弱ければ、あいつを助けるどころか、また失ってしまうかもしれない。だから…今は訓練に集中しよう」


勇人の言葉に、美咲はもう一度大きく頷いた。彼女もまた、東真が必ず生き延びていると信じていた。もしも再び会う日が来たとき、彼を誇らしげに迎えることができるように、自分たちがこの異世界で強く成長する必要があると痛感していた。


「東真が戻ってきた時に、私たちがちゃんと勇者として立派に戦えるように…頑張らなきゃね」


美咲の言葉は決意に満ちていた。彼女の瞳には、どこか不安な影がありながらも、その奥底には強い覚悟が宿っていた。


「そうだ。俺たちが強くなって、必ず東真を取り戻す。そのために、今は耐えなければならない。」


二人は互いに目を見て頷き合った。その瞬間、彼らの中にあった迷いや不安が少しだけ和らぎ、前に進む力を取り戻したように感じた。豪華な部屋の中での静かな誓い。彼らはそれぞれの場所で、異なる試練に立ち向かっていた。東真が森の中で孤独に戦い続けるように、勇人と美咲もまた、自分たちの中にある恐れと不安を乗り越え、強くなろうとしていたのだった。


「東真、あいつ…本当に大丈夫かな…」


勇人はベッドに腰掛けながら呟いた。豪華な寝室であっても、心は落ち着かなかった。東真が追放されてからというもの、自分たちが選ばれた「勇者」としての待遇の良さがむしろ胸を締めつけていた。彼らが祝福を受ける一方で、親友である東真が冷たい扱いを受けたことに対する罪悪感が、勇人の中で渦巻いていた。


「私も…心配だよ、勇人」


美咲もまた、窓辺に立ちながら森の方向を見つめていた。その目には不安と心配が色濃く表れていた。彼女はあの時、東真の背中が見えなくなるまで、何もできなかった自分を責め続けていた。


「何か…何かできたはずなのに…」


「でも、今は…俺たちがもっと強くなるしかないんだ」


勇人は拳を握りしめたが、その心の中には複雑な感情が渦巻いていた。東真を守れなかった無力感、自分たちだけが選ばれたという後ろめたさ、そして異世界という未知の場所で「勇者」として期待されることへの重圧。その全てが彼を苦しめていた。


(俺たちがもっと強くならなきゃ…でも、本当にそれでいいのか?)


自問自答を繰り返しながらも、勇人は前に進むことを選んだ。東真を見捨てたまま、自分だけが王国に迎え入れられた事実が、心に棘のように突き刺さっている。彼はその痛みを無視することでしか、今の自分の立場を受け入れることができなかった。


(俺は…本当に勇者なんだろうか…)


そう思う瞬間もあった。だが、それでも彼は東真を取り戻すため、そして自分の選ばれた理由を証明するため、強くなるしかないと自分に言い聞かせるしかなかった。この世界のことがまだ全くわからない中、二人は自分たちにできることを見つけ出そうとしていた。


「東真がどこにいるのかもわからないけど、きっと無事でいるはずだよ。あいつはそんなに弱くない」


勇人の言葉に、美咲は小さく頷いた。彼女もまた、東真が必ず生き延びていると信じていた。彼がどこかで孤独に戦っているならば、自分たちはここで強くなり、再び彼に会う日までに備えなければならない。


「東真が戻ってきた時に、私たちがちゃんと勇者として立派に戦えるように…頑張らなきゃね」


美咲の言葉に勇人も頷く。東真のために、そして自分たち自身のために、二人は新たに与えられた役割を全うする決意を固めた。


彼らはそれぞれの場所で、異なる試練に立ち向かっていた。東真が森の中で孤独に戦い続けるように、勇人と美咲もまた、自分たちの中にある恐れと不安を乗り越え、強くなろうとしていたのだった。

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