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最弱スキル【反転】で無双する異世界冒険譚  作者: いわたん
第三章 強くなるために
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45.引き分けという名の敗北

バニングが去った後、トーマはサラに問いかけた。


「俺が負けていた、というその判断の根拠は何だ?」


サラはトーマの言葉に余裕のある微笑みを浮かべながら答えた。


「私はね、この闘技場で数え切れないほどの戦士たちを見てきたのよ。その経験の中でわかるの。あなたは確かに素晴らしい才能を持っている。だけど、あのバニング・ライオンハートには及ばない。」


トーマはその言葉を聞いても納得がいかない表情を浮かべた。


「経験としての判断か…ただ俺は全力を出していない、それでも俺の負けだというのか?」


「ええ、そうよ。」


サラは一歩近づき、真剣な眼差しでトーマを見つめる。


「あなたの一撃は確かに見事だったわ。でも、彼に本当にダメージを与えたわけじゃない。むしろ、彼はその一撃でさらに高揚し、次の段階に進もうとしていた。もしあのまま続けていたら、あなたの身体が先に悲鳴を上げていたでしょう。」


トーマはサラの見透かしたようなその言葉に少し悔しそうな表情を浮かべたが、確かに自分の体力が限界に近づいていた。


(あのまま同じ闘い方をしていたら…間違いなく【反転】すら使えなくなっていた)


「その気持ちは立派だわ。だけど、戦いは感情だけでは勝てないの。」


サラは柔らかい口調で諭しながら続けた。


「バニングはこの国最強の戦士よ。彼は勝利に執着するだけじゃない。戦いそのものを楽しみ、極限の中でさらに力を発揮するタイプなの。彼とまともに渡り合うためには、もっと多くの経験と戦略が必要だわ。」


トーマはサラの言葉を受け止め、深く息を吐いた。


「なるほどな…。分かった。」


そう言ってトーマは闘技台を降りる。


そしてサラの方へ振り返り、


「次に闘うときは、俺が勝つ。」


その宣言して通路へと戻って行った。トーマのその言葉にサラは満足そうに微笑んだ。


「そうね、楽しみにしているわ。闘技場がさらに盛り上がるでしょうし、それに…」


サラが空を見つめる。


「アイツの願いも叶うかも知れないしね」


サラはそう呟きながら、闘技台から踵を返して去っていった。闘技台にはまだ先程の闘いの熱気が冷めやらぬ様子だった。



トーマたちは闘技場を後にし、街の中心にある酒場で合流することにした。フィーナは最初にトーマを見つけると、心配そうな表情で


「大丈夫?」


と声をかけてきた。しかし、トーマはすでに【反転】を使い怪我を治していたため、


「大丈夫だ、問題ない」


と答える。リアナは


「まあ、こんなものじゃない?」


と軽く挑発するような態度を見せた。すると、トーマは無言でリアナの頭に軽くチョップを入れ、「ふぎゃっ!」という声が酒場の入口に響き渡った。


酒場の中では賑やかな雰囲気が広がり、トーマたちは空いているテーブルを見つけて腰を下ろした。飲み物と料理を注文し、落ち着いたところでアルターが口を開いた。


「それで…バニングはどうだった?」


トーマは少し間を置いて答えた。


「…はっきり言って、勝てない。」


その言葉を聞いて、リアナは驚愕した表情を浮かべる。「え!?あのゾンビみたいなトーマが!?そんなこと言うなんて!」


トーマは再びリアナに軽くチョップを入れ、「ふぎゃ!」という声がまた響く。アルターは真剣な表情で続けた。「勝てないって、具体的にはどういうことだ?単純な実力差か?」


「いや、単純な実力差なら慣れて対応はできる。実際、試合の後半ではある程度対応できていた。ただ…」


とトーマは言葉を選びながら続けた。


「バニングはスキルを4つ持っているんだが、試合中に使ったのは【剛力】、残り3つの【不屈】、【獣化】も【??】も使っていなかった。つまり、あいつの底はまだ全然見えていない。」


アルターはその言葉に目を見開き、


「【獣化】だと!?本当にあいつがそのスキルを持っているのか?」


トーマに問いただした。


「【鑑定】で見た限り、間違いない。」


アルターは少し間を置いて説明を始めた。


「【獣化】は身体能力を飛躍的に向上させるスキルだ。体が獣人化して攻撃力も防御力も何倍にもなる。ただし、知能が多少落ちるというデメリットはあるが、それでも圧倒的な強さを誇る。」


その説明を聞きながら、トーマはうなずいた。


「つまり、バニングはあの状態からさらに強くなるというわけだな。」


アルターは頷く。


「ああ…さすが最強の男…だな。」


テーブルの空気がどんよりとした空気となった。実際手の内を明かしていないトーマはではあったが、向こうのほうが隠し手札が多い。さらに【??】という謎のスキル存在、バニングに勝てる要素が見当たらなかった。


テーブルの空気が一気に重くなる中、フィーナが明るい声で言った。「で、でも、トーマは頭がいいからきっと何とかできるよ!魔法も前より使えるし!」


その言葉にリアナも続ける。


「そうそう!トーマもアルターもしけた顔してる場合じゃないわよ!」


二人の元気な声に、トーマとアルターは思わず「ぷっ」と吹き出した。重い雰囲気が一気に和らぐ。


「ま、まだ何も決まってないうちにあれこれ悩むのは無駄だな。飯食って切り替えよう!」


アルターが笑顔でそう言うと、トーマも


「そうだな」


と返事をして料理に手を伸ばした。


食事をしながら、心の中でトーマは自分に言い聞かせる。


(フィーナの言う通りだ。まだ魔法も試していないし、あの技も温存している。次は必ず勝つための準備をするだけだ。)


こうして、トーマたちは食事を楽しみながら次の戦いへの思いを胸に刻むのだった。




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