43.コロッセウム
ロンドから馬車で2日後、トーマたちはついに目的地であるロレアルに到着した。リアナは二日酔いから完全に復活していたが、トーマは相変わらず乗り物酔いでグロッキーだった。
「ホントだらしないわね」
とリアナが肩を貸しながら皮肉を言う。
「…うるさい」
とトーマが弱々しく返す。
「そのやり取り、前にも見たな…」
アルターが苦笑いしながら言い、フィーナもニコニコしながら頷いていた。
「さて…ここがロレアルだ。」
アルターが改まって告げる。目の前には、共和国の首都にふさわしい巨大な都市が広がっていた。建物は洗練され、通りには人々の活気が溢れている。
「大きいな…イニツィオ何個分だよ…」
まだ本調子ではないトーマがつぶやくと、アルターが応える。
「ざっと10個分ぐらいはあるだろうな。俺も前にここで依頼を受けたことがあるが、その規模には毎回驚かされる。」
「ひゃー、迷子になりそう。」
とフィーナが目を輝かせると、
「大丈夫です!私がいます!」
とリアナが自信満々に宣言した。
「お前、来たことあるのか?」
とトーマが尋ねる。
「ない!」
と胸を張って答えるリアナに、
「なんでそんな自信満々なんだよ…」
と呆れるトーマ。
「それはさておき、早速闘技場を見に行こうぜ!」
とアルターが提案し、リアナとフィーナは
「おー!」
と元気よく賛同する。トーマも疲れた体を引きずりながら
「おー…」
とついて行くことにした。
一行は通りを歩きながら街の雰囲気を堪能する。イニツィオやロンドとは全く異なる、高級感漂う街並みだ。
「露店はないんだな。」
とトーマが言うと、アルターが説明する。
「ここは首都だけあって、格式張った街だ。高級店から安価なマーケットまで揃ってるが、他の街と違うのは治安の良さだな。」
「なんで治安が良いんだ?」
トーマが聞くとアルターが答える。
「自治隊が街を守っているからな。試験を通ったエリートたちで構成されているんだ。」
自治隊の制服を着た人々を見ながら、
(まるで警察みたいだな)
とトーマは思っていた。
やがて、遠目からでも分かる巨大な建物が見えてきた。
「あれが闘技場『コロッセウム』だ。」
アルターが指差しながら言う。その壮大さにトーマは思わず
「すげぇ…」
と呟いた。
コロッセウムは歴史的な威厳と豪華さを兼ね備えた建物で、一つの街ほどの規模に見えた。
「これがこの共和国が誇る最大にして最高の場所だ。俺もここで戦いたかった…」
アルターが自慢げに言うが、その表情には少し哀愁も漂っていた。
「アルターは闘技大会に出場したことはあるのか?」とトーマが尋ねる。「
いや、参加しようと思ったが…その前にアイツが戦っているのを見てやめた。」
「アイツ?」
「まあ見ればわかるさ。」
コロッセウムの入場口で銀貨1枚を払い、中へと進むと、内部の広さに驚かされる。露店が並び、賑やかな雰囲気が広がっていた。
「こう見ると本当に一つの街だな。」
トーマが感心すると、
「ここは非日常の空間だ。祭りみたいなもんさ。」
とアルターが答える。
リアナは露店を見て目を輝かせ、フィーナもワクワクしていた。
そしてその先にある階段を登った先には「「「うぉぉぉぉぉ!!!」」」という大歓声と共に会場の熱気が襲った。エキシビジョンマッチではあるが闘っている戦士、会場の観客の熱意が会場中に広がっていた。
「すごいだろ?」
アルターが自分のことのように自慢する。実際トーマは会場の雰囲気に圧倒されていた。
(これが…コロッセウムか!)
トーマはその圧に徐々に慣れていくと同時にワクワクが止まらなかった。
一行が観客席に着くと、ちょうど次の試合の準備が進められていた。
「すごい熱気だな。」
トーマが感嘆する中、次の試合の選手が紹介される。その瞬間、大歓声がコロッセウムを包んだ。
「お待たせしました!本日エキシビジョンマッチ最終試合…我らが絶対王者の登場です!!」
現れたのは、一人の男。その瞬間トーマは感じた。あのシリウスから感じたような強烈な強者の力を。
「いきなりアイツを見れるとは…ラッキーだな。」
とアルターが言う。
「トーマ、あれがバニング・ライオンハートだ。」
アルターの言葉にトーマは頷き、そしてバニングのステータスを【鑑定】で見る。そこには驚愕の数字が並んでいた。
バニング・ライオンハート
Lv:300
ATK:SSS
DEF:SSS
INT:S
RES:SS
AGI:SSS
スキル:【剛力】Lv9、【不屈】Lv8、【獣化】Lv8、【??】
(アルターと俺を足したようなステータスじゃないか…)その圧倒的な強さに息を呑むトーマ。
ステータスは高いことは分かっていたが、アルターだけが持っているとされていた【剛力】を高レベルで持ち、さらに【不屈】までも持っていた。
(たたかえばたたかうほど強くなる…か、戦士として最高だな…ただ【獣化】と【??】はなんだ?)
トーマはそう思いながらバニングのエキシビジョンマッチを見ていた。
試合が始まると、相手がバニングに突っ込んでいったが、バニングは相手の攻撃をすべて捌き、一撃で脇腹を貫いた。その衝撃で相手は壁に叩きつけられ、観客は歓声と興奮に包まれる。
「バニング!バニング!バニング!」
トーマ達はその光景に圧倒されていた。
「バニング…強すぎじゃない?」
リアナが言うと、
「正直強くなって尚勝てる気がしないな…」
アルターが素直な感想を言う。フィーナも驚いて固まったいた。トーマはみんなの感想を聞きながらバニングを見る。すると、バニングが視線を向けニヤリと笑った。そして、トーマを指差しながら観客席に向かってこう叫ぶ。
「そこのお前!俺と戦おうぜ!」
会場中がトーマに注目し、そしてその反応を静かに待っていた。トーマ以外は慌てていたが、
(これは絶好の機会だな)
そう思ったトーマは静かに立ち上がり、観客席を降りていく。闘技場に立つトーマに、バニングが声をかけた。
「よう、よく降りてきたな。歓迎するぜ。」
「最強なんだってな。お手柔らかに頼むよ。」
観客の歓声がさらに大きくなる中、トーマとバニングの一戦が始まろうとしていた。




