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最弱スキル【反転】で無双する異世界冒険譚  作者: いわたん
第三章 強くなるために
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side:最強の男

その男は飢えていた。物心ついた頃から、彼の人生は闘いそのものだった。常に戦場に身を置き、勝ち続けた。体格に優れた相手、素早い相手、変則的な技を操る者、多勢に無勢の状況、さらには格上の敵までも、そのすべてに勝利してきた。


彼はやがてソドム共和国で最強と称され、軍部の頂点に立つ存在となった。しかし、それが彼の飢えをもたらした。栄光の頂点に立った彼にはもはや敵と呼べる存在がいなかった。闘いを欲しても、周囲の者は彼を恐れ、誰も戦おうとしない。いつしか彼は自らの欲求を満たせない空虚感に苛まれるようになった。


ただひとつ、彼の飢えをわずかに和らげる場所があった。それが、ソドム共和国の首都ロレアルにある唯一合法的に闘える場所、闘技場「コロッセウム」だった。ここで繰り広げられる激戦が、彼に一時的な満足感を与えていた。しかし、近年の参加者たちの力量は彼にとって到底物足りないものであり、飢えは解消されるどころかますます深まっていった。


そんな彼に転機が訪れた。それは、プロセリアンド法国の騎士団長シリウス・エーデルハイトとの邂逅だった。共和国軍と法国騎士団の合同訓練で初めて対峙したその瞬間、彼は期待していなかった。なぜなら、自分についてこれる者などいるはずがないと確信していたからだ。


模擬戦が開始されると、彼は猛然と攻めた。圧倒的な力と速度で仕掛ける連撃は、今まで誰もまともに対応できなかったものだ。だが、シリウスはそれらすべてを正確に見切り、寸分違わぬタイミングで捌いてみせた。


「ほう…!」


彼は思わず笑みを浮かべた。攻撃の速度を上げ、さらにフェイントを混ぜた打撃を放つ。だがシリウスはそれすらも読み、寸前で紙一重の回避を続けていく。彼の鋭い動きの軌道を追いかける彼の目は、まるで次の一手をすでに知っているかのようだった。


(この動き…!?)


次第に彼の興奮は高まり、戦いの速度は極限に達した。模擬戦場はまるで雷光が交差するような激しい剣戟の音で満ち、周囲の者たちは息を呑んで見守るしかなかった。


そして、一瞬の隙を見つけたシリウスが反撃に転じた。その剣が彼の目前で止まると、二人の間には静寂が訪れた。


「…やるじゃないか。」


彼は言葉を搾り出すように呟き、深く息を吐いた。この短時間の模擬戦で、自分のすべてを見抜かれたと悟った。


「お前…名前は?」


彼が尋ねると、シリウスはその目を細めて微笑んだ。


「シリウス・エーデルハイトさ。君との闘いはとても刺激的だったよ!」


シリウスは手を差し出し、彼はそれに応じて握手を交わした。その瞬間、彼は確信した。この男は、飢えを満たすに値する唯一無二の存在だと。


「また君に会える気がするよ…」


不敵な笑みを浮かべながら、シリウスは去っていった。彼はその背中を見送りながら、胸が高鳴るのを感じていた。こんなにも自分を満たしてくれる相手がまだ存在していたのだ。


(こんな奴が…こんな奴がいたのか!!)


彼は歓喜した。これまで強さを求めて魔大陸に渡ろうかと考えるほど、飢えに追い詰められていた彼にとって、シリウスとの出会いはまさに運命だった。短時間の模擬戦闘にもかかわらず、シリウスは彼の期待以上の強者だった。


彼はその背中を見送りながら胸を高鳴らせた。この世にはまだ自分と対等以上に戦える相手が存在していた。彼はさらに高みを目指すべく鍛錬を重ね、さらなる強さを追い求めた。


そして現在、彼は予感する。この次の闘技大会に、自分の飢えを満たす真の強者が現れると。


「この感覚…久しぶりだ。」


ラームガルド大陸の三本指に数えられるS級冒険者、ソドム共和国最強の男、バニング・ライオンハートは、その予感を胸に静かに待ち続けていた。



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