42.ロンドにて(2)
アルターとリアナは酒場で酒を酌み交わしていた。
「どうして…どうしてフィーナ様は私を選ばないのよおおお!!」
と、リアナはヤケ酒を煽りながら嘆く。
「まあ、フィーナは空気が読めるからな。トーマのことを気にかけてるのは仕方ないだろ」
とアルターが言うと、リアナは
「付き合いは私の方が長いのに!なのにどうしてトーマばかり!」
とさらにエールを注文し、飲み干す。
(こりゃ、明日出発できるかわからんな…)
とアルターは内心で呆れつつも、自分も酒を口に運んだ。
夜になり、トーマとフィーナは宿『ロンバルディア』へ戻った。そこは今までの宿とは比べ物にならない豪華な建物で、広々としたロビーや絨毯の敷かれた床が目を引く。
(イニツィオの宿に慣れすぎたかもしれないが…これは流石に驚くな)
とトーマは思いながら、案内された部屋に入るとさらに驚いた。部屋にはセミダブルサイズのベッドが四つ並び、それでも余裕のある広さだった。
フィーナは「すごい!」と喜びながらベッドにダイブする。トーマもそのままベッドに倒れ込み、ようやく心身を休めた。しばらくすると、アルターが泥酔したリアナを連れて部屋に戻ってきた。
「ふにゃ〜フィーナ様が三人に見える〜」
と呂律の回らない声でリアナは騒ぎ、アルターは彼女をベッドに投げるように横たえた。そのまま空いてるベッドに座り、
「この街はどうだった?面白かったか?」
とアルターがトーマに聞く。
「…そんな余裕があったと思うか?」
とトーマが返す。
「まあ、フィーナのおかげで少しは癒されたんじゃないか?」
とアルターがニヤつきながら言う。
「別に…」
とトーマはそっけなく返事をし、体を反対側に向けた。
アルターは遠い目をしながら、
「こんな当たり前の時間が、実は一番大事だったりするんだよな」
と呟いた。そして、トーマに向き直り真剣な表情で言う。
「トーマ、これから俺は必ず修羅の道を進む。でも、忘れないでほしい。グラス…アルターはここにいた、と」
「覚えておくも何も、忘れるわけがない。お前だけじゃなく、フィーナもリアナもな」
その言葉にアルターは「ありがとう」と呟き、そのままベッドに横たわった。トーマはアルターの言葉を考え、そしてアルターなりの覚悟として受け取りながら眠りにつく。こうしてロンドの一夜は更けていった。
翌朝、馬車に乗った一行は再びロレアルを目指す。しかし、二日酔いでグロッキー状態のリアナは窓に顔を出して吐き気と戦っていた。
「昨日はあんなに偉そうにしてたのに、このザマか」
とトーマが嫌味たっぷりに言うと、
「うるさい…うぷっ」
とリアナは精一杯の反論をして窓の外を向いた。
その様子を見て笑っているアルターや介抱するフィーナ、そんな姿を見ながら、少しずつ心を開き始めている自分に気づいていた。
(信じても…いいんだよな?)
と思いながら、突如襲ってきた吐き気と闘い始め、リアナと一緒にフィーナに介抱されつつ、ロレアルへの道を進むのであった。




