38.再び中層へ
翌朝、トーマたちは収穫祭の名残がまだ漂うイニツィオの街をの中を歩きながらギルドへ向かった。街の活気は少し落ち着きを取り戻していたが、ギルド内はいつも通りの賑わいを見せていた。ギルドに着くと、昨日メンターに預けたモンスター素材の換金が完了しており、受付嬢から袋いっぱいの金貨を受け取る。
「まさかこれほどの金額になるとはな……」
アルターが感嘆の声を漏らす。
「任務こなさなくてもこんなに稼げるものなのね…。」
リアナも微笑みながら言う。
換金後トーマが
「ゲヘナの森に行こう。」
と改めて提案する。
「俺は構わないが。」
アルターが同意する。
「私も構わないけど…いつまでやるの?」
リアナがトーマに尋ねる。
「誰よりも強くなった、と確信が持てるまでだ。」
その言葉にリアナとフィーナは少し緊張した表情を見せた。
そこにアルターが捕捉する。
「このパーティは正直すでに最強のパーティと称されても過言じゃない。ただ…トーマにしろ俺にしろ個人で目的を果たせるほど強くなれていない、そういうことだろ?」
トーマが頷く。
「俺はこれ以上負けないために…奪われないために強くなりたい。」
そのトーマの言葉にアルターは頷き、リアナとフィーナも真剣な眼差しでトーマを見ていた。
そしてリアナが、
「…私も故郷を襲われ、フィーナ様や他の仲間を奪われた。あの時より強くなれたけど…もっと強くなれるなら強くなりたい。」
続いてフィーナも
「私はトーマに助けられた時にトーマのために生きてる。だからトーマの進む所と同じ所に行く。」
「だとよ?」
アルターがトーマに促す。
「わかった…中層に向かおう。」
一行はギルドを出て、再びゲヘナの森へと向かった。道中、アルターが昨日の収穫祭の話をしながら気を緩めないよう注意を促す。
「前回中層のモンスターをたくさん倒したが、まだ見たことのないモンスターもいるかもしれない。冷静に対処していこう。」
トーマはこういったアルターの要所要所の引き締めをさすがだと思っていた。
(やはり、実践経験もそうだけど…これがリーダーシップなんだろうな。)
そう思いながらアルターの指示通り警戒しながら進んで行った。
フィーナはトーマの隣を歩きながら、
「今回は風魔法だけじゃなくてもっと色々試してみるよ!」
と意気込んでいた。
中層に入ると、中層ではお馴染みのハウンドウルフやキラービーがお出迎えしてくれた。そんな敵をトーマたちはスムーズに連携を取って撃破していった。連携の精度が明らかに向上しているのを感じたトーマは、
(やはり【仲間】のスキルが関係している?)
と推測しながら戦っていった。
そして何連戦かした後さらに奥へ進むと、周囲の雰囲気が変わった。霧が立ち込め、木々もさらに鬱蒼としている。
「この雰囲気は…おそらくら今まで見たことのないモンスターだ!警戒を怠るなよ!」
アルターが大剣を構え直しながら言う。
突然、鋭い音を立てて森の奥から何かが飛び出してきた。巨大なクモのようなモンスター、"アラクネイド"だった。その鋭い脚と毒液を纏った牙は一行に警戒を抱かせた。
「奴のスピードと毒液は厄介だ。距離を取れ!」
アルターが指示を飛ばす。
フィーナが風魔法で霧を晴らしつつ、アラクネイドの動きを封じようとするが、クモの素早い動きは簡単には封じられない。リアナがその隙を突いてナイフを放つが、硬い外殻に弾かれてしまう。
「俺が行く!」
トーマが前へ出る。
【反転】を使い、アラクネイドの脚の動きを逆にして一瞬動きを鈍らせた。その隙を見逃さず、アルターが大剣を振り下ろし、脚の一本を切断する。
「よし、その調子だ!」
リアナが声を上げ、ナイフを放つ。
フィーナも追撃の風刃を放ち、アラクネイドの体力を徐々に削っていく。しかし、クモは毒液を撒き散らしながら猛反撃を開始した。そしてリアナに攻撃を仕掛ける。
「!?リアナ避けろ!」
アルターが叫ぶが、リアナがクモの脚に弾かれて倒れてしまう。
「リアナ!」
フィーナが叫ぶ。
「大丈夫だ、フィーナは魔法を錬成しろ!」
トーマがそう言って追撃を受けそうなリアナをアラクネイドから【反転】で方向を間一髪で変え、リアナを抱えながらフィーナの位置まで後退する。
フィーナはリアナを安全な場所に移動したことを確認し錬成した魔法を唱えた。
「サイクロン!」
風魔法の中でも上位の範囲魔法を発動した。
渦状の風がアラクネイドを切り刻み始め、動きを完全に止めた。
そしてその隙にアルターは必殺技を放つ。
「斬鉄剣!」
アルターの最大の技であり、渾身の力でアラクネイドを真っ二つにした。
真っ二つになったアラクネイドが完全に沈黙し、一行はようやく息をつく。
「全員無事か?」
トーマが確認する。
「何とかね。」
リアナが痛む腕を押さえながら答える。
「まさかここまで苦戦するとはな…まだまだ修行が必要だな。」
アルターが苦笑する。
「でも…倒せた。俺たちは強くなれる」
トーマが静かに言う。その言葉に、全員が頷いた。
彼らは再び準備を整え、更に深いゲヘナの森の中へと足を踏み入れるのだった。




