side:敗戦後
【剣聖】ユウトと【聖女】ミサキは、大剣のグラスに敗北し、ドゥースと王国兵と共にナラハ王国へ戻ってきた。彼らは国王陛下にグラスとの戦いの経緯を報告すると、国王は深いため息をつきながら、ユウトとミサキに対して
「経験が足りないのではないか」
と苦言を呈した。
その言葉に、ユウトとミサキは
「すみません…」
とただ頭を下げることしかできなかった。彼らの表情には深い落胆が漂い、国王の言葉が二人の胸に重くのしかかっていた。
そんな中、王の間に一人の人物が入ってきた。その人物こそ、この国で頂点の実力を誇る男、王国騎士団長アイン・フォースガルドであった。アインは堂々とした態度で国王に報告を行った。
「帝国の諜報兵がナラハ王国内に侵入していたため、ナラハ王国の村にて取り調べを行い、詳細を聞き出した後、処刑いたしました。」
王様は
「よくやった」
と彼を称賛し、
「で、何を聞き出したのか?」
と問いかけた。
アインは一礼しながら答えた。
「プロセリアンド法国と協力し、ナラハ王国の隣接地域で軍配備を行いながら武装し、王国に圧力をかけていく予定とのことです。」
それを聞いた王様は納得したように頷き、
「聖女が我が国にいることが気に入らない法国が帝国と手を組んだか…忌々しい」
と吐き捨てるように言った。
アインは続けて提案を持ち出した。
「それでしたら、私の方で帝国に圧力をかけに行きましょう。ちょうど【剣聖】もいますし、彼にとっても良い修行になるでしょう。」
国王はその提案に目を輝かせ、
「それは妙案だ!」
と賛同した。その王の言葉に周りも賛同していく。
しかし、ユウトは眉をひそめ、口を開いた。
「必要な戦いであれば、私は積極的に戦う覚悟ですが…今回の話は帝国の街を襲撃し、圧力をかけるというもの。これは…」
だが、アインは冷笑を浮かべ、ユウトを見下すように言った。
「グラス程度に負けた君に発言権があると思っているのか?」
その言葉にユウトは黙り込んでしまった。ミサキがユウトを庇おうとしたが、ユウトは
「いいんだ、ミサキ」
と静かに言った。
「確かに僕たちは敗北した。敗者に発言権はない、そういうことだ。」
価値のあるものしか発言権どころか生存権がない、ナラハ王国はそういう国だとユウトは理解していた。
アインはその様子を見て満足げに微笑んだ。
「君が僕についてくれば、もっと強くなれるはずだよ。」
ユウトは驚きで顔を上げ、
「本当に強くなれるんですか?」
と真剣な眼差しで尋ねた。
アインは笑顔で頷き、
「ああ、本当さ。だから、私に協力してくれないか?」
と促した。
ユウトはしばらく考えた後、決意したように頷いた。
「わかりました…強くなるためなら、なんでもします。」
ミサキもユウトの決断に従うように、
「ユウトがやるなら、私もやります!」
と力強く言った。
アインは微笑を浮かべ、彼らに告げた。
「君たちの気持ちはよくわかった。ぜひ手伝ってくれ。」
そしてユウトへ手を差しだす。その手にユウトは手を出し、握手をする。
「宜しく頼むよ!じゃあ王様、私はこの辺で…」
そう言ってアインは王の間を後にする。
誰も気づいていなかったが、王の間を出る際のアインの表情がとても邪悪な笑みを浮かべているのであった。
こうして、ユウトとミサキはアインの部隊に協力することとなった。彼らはただ強くなるために、王国の、アインの駒になることを自分たちの道を選んだのだった。その選択がどのような運命をもたらすのか、今の彼らには知る由もなかった。




