29.方針
アルターの冒険者登録と新たな方針
アルターに変わったグラスと一緒にトーマたちはアルミラ洞窟を後にし、イニツィオの冒険者ギルドへと向かった。冒険者ギルドへ到着すると、アルターは緊張した様子で立ち止まった。トーマがそんな彼を見て
「大丈夫だ。ただの不審者にしか見えないから」
と冗談を言い、アルターの緊張をほぐした。
アルターは軽く笑って肩の力を抜き、ギルドへ入った。彼らがギルドに入ると、一瞬ギルド内が静まり返ったが、すぐにいつもの喧騒が戻り、誰も彼らを気に留める様子はなかった。そのままトーマたちは受付に進み、トーマが
「こいつの冒険者登録を頼む」
と受付嬢に告げた。
受付嬢はにこやかに受理し、アルターに魔水晶に手を置くように促した。アルターが魔水晶に手を置くと、受付嬢はそのステータスを読み上げていく。そのステータスは『道化の首飾り』によって改変されたアルターのものであり、グラスとしてのものではなかった。
「アルターさん、Eランクからのスタートですね!」
受付嬢は元気よくそう告げる。アルターはそれを聞くと、トーマに向かって
「よろしくな、先輩」
と言い、拳を突き出してきた。またそれか、とトーマは一瞬思ったが、結局乗ることにした。
「よろしくな、後輩。」
二人は拳を軽くぶつけ合った。その後、登録が終わったところで、ギルドの奥からメンターが姿を現し、アルターの前に立った。
「新人か…せいぜい命は大事にするんだな。」
メンターは一言そう言うと、そのまま背を向けて去っていった。
(ありがとな…師匠)
こうして無事にアルターが冒険者となったところで、トーマたちは宿屋に移動し、今後の方針を話し合うことにした。
「さて…これからどうする?」
彼らの目的はある程度一致しているが、まずそのために何をすべきかを確認する必要があった。
「アインへの復讐を遂げたいという強い意思を持っていたが…現状の力でそれは難しい」
アルターはトーマと出会った時はかなり感情的になっていたが、冷静になった今の現状では騎士団長のアインに太刀打ち出来ないと踏んでいた。
「だからこそ強力なモンスターの討伐依頼をこなして実力をつけることを提案したかったんだが…A級は一人もいないんだよな」
アルターがため息をつく。アルターの言う通り現在のメンバーで討伐依頼を受けるには、受けることは困難だった。
パーティの冒険者ランクで1番高いのはC級のリアナであり、高ランクの討伐を受けようにも受けられない状態だ。
そんな中、神妙な顔をしていたトーマだったが、ある事を思いつき、提案した。
「ゲヘナの森の中層に行かないか?」
彼の提案は全員によって予想外だった。ゲヘナの森は外層こそ無難なモンスターが徘徊するような場所ではあるが、中層から格段に危険なモンスターが徘徊する地帯である。
リアナは少し驚いた様子で問いかけた。
「本気で言ってるの? ゲヘナの森…しかも中層は危険すぎるわ。」
アルターが心配して言う。
「確かに強力なモンスターが多く存在しているが、討伐難易度が跳ね上がるぞ?外層ですら油断したら危険なのに中層は俺ですら命をかける場所だ」
トーマは真剣な表情で頷いた。
「俺たちが目指すもののためには、ここで足踏みしている暇はない。実力を上げるには、あそこが一番手っ取り早い。」
(少なくとも俺はそんな危険な場所で過ごしたから知っているしな)
アルターも考え込んだ末に口を開いた。
「確かに…俺も力が足りないのはわかってる。このままでは目標にたどり着けない。ゲヘナの森で力を試してみるのも悪くないかもしれない。」
それを聞いたリアナは2人に反発する。
「このメンバーにはフィーナ様がいるのよ?そんな危険な目に合わせられないわ!」
「ならここでお別れだな」
トーマはリアナに冷たく言い放つ。
リアナも引かない姿勢を取ろうとしたが、フィーナが口を開く。
「私はトーマと行く。トーマの助けになりたいから」
それを聞いたリアナは愕然とし、
「これから行く所は熟練の冒険者ですら命をかける場所ですよ!?」
と言うがフィーナは
「それでも…行く!」
と強い決意をリアナに宣言した。
そこでリアナは折れたのか、
「…わかったわよ!ついていくわ!」
と降参していた。
こうして、トーマたちはゲヘナの森へ向かうこととなった。様々な想いを背負って…強くなるために。




