25.グラスとメンター
トーマ、リアナ、フィーナ、そしてグラスの四人は改めてお互いの能力を確認することにした。新たな同盟を組んだ今、どのように力を合わせていくか、そのためにはまずお互いの能力を把握することが必要だった。
「まずは俺の能力を話す」
トーマは自分の能力である【反転】について説明した。攻撃方向を反転させることができるだけでなく、傷を治すことができるということを新たに伝えた。リアナとフィーナは驚きつつも、その能力がいかにとてつもなく強力であるかを改めて感じ取った。
そしてトーマはリアナとフィーナに言う。
「この能力をあえて伝えなかったのはお前たちを信用してないこともあったが、何より自分にとって最大の切り札でもあったからだ…だからすまない」
トーマはリアナとフィーナに謝罪する。
「トーマ…私もごめんなさい…」
そう言ってフィーナも自分の能力について語った。彼女の能力は人の感情を色で判断することができるというものだ。感情が黒く染まると、相手が悪意を持っていることがわかる。そのため、相手が嘘をついているかどうかもある程度は感覚で見抜くことができる。
トーマは(嘘つきかどうかも感覚で判断できるパッシブスキルか…)とフィーナの能力について考え込んだ。ただ、これはかなり利点であるとも考えられる。初見で信じられるかどうかの指針に出来る。
トーマの中でフィーナの重要性がかなり上がった。
リアナは前回と同様に自分の能力について説明した。
そして、
「最後は俺の番だな。」
グラスが自分の能力について語り始めた。トーマはグラスが【大剣】と言われているため、その能力が何かしらの大剣に関連しているのかと思っていたが、実際には違っていた。
「俺の能力は【剛力】だ。攻撃力、防御力、そしてスピードを3倍にまで跳ね上げることができる。」
グラスはその能力について説明し、少し照れ臭そうに続けた。
「【剣聖】の坊主にはガードと攻撃で一度使ったんだが、連続で使って勝負になったのはお前が初めてだよ、トーマ。」
「あ、そう…で【剛力】は何かウィークポイントは無いのか?」
トーマはその賛辞を軽く無視して、グラスに【剛力】の弱点について尋ねた。グラスは少し言いづらそうにしていたが、結局こう答えた。
「まあ…少し疲れるくらいだな。特に反動はないが、強いて言うなら不意打ちには弱いんだろうな。」
グラスがそう言って遠い目をする。
トーマはその答えを聞いて、内心で純粋に羨ましいと感じた。そして同時に、自分の能力との差を感じざるを得なかった。スキルにもランクがあるのだろうか…【剣聖】や【聖女】がSSランクだとすれば、【剛力】はSランクといったところだろう。トーマの【反転】はつまるところFランクであり隠れSランクといったところだろうと納得する。
能力の確認が終わり、これからどう動くかの話をすることになった。その中でグラスが申し訳なさそうに切り出した。
「こんなこと、お前さん達に頼むのは気が引けるが…メンターに会わせてほしいんだ。」
「メンター?なぜだ?」
トーマが不思議そうに尋ねると、グラスはしばらく沈黙した後、静かに答えた。
「メンターは…俺の冒険者としての師匠だ。あの人に会って、話をしたい。」
その言葉に一同驚いた。
なぜならS級に1番近いとされる男の師匠がまさかB級であるギルド長であったからだ。
トーマは少し思案したが、
「分かった。それなら一度会ってみよう。」
とグラスの提案に同意した。
(グラスを活かすのにメンターに協力を得られるのであればあるに越したことはないからな…)
そうして一旦グラスをアルミラ洞窟に残し、トーマ達はメンターのいるイニツィオの街へと向かうのだった。




