23.vs【大剣】
「あいつは…俺の獲物だ!」
トーマがグラスへと攻撃を仕掛ける。グラスは大剣を盾代わりに構えつつ、カウンター気味に剣を振りかぶり、攻撃の機会をうかがっていた。一方のトーマは持ち前の身体能力を活かし、軽々とグラスの剣を避けながら、素早い格闘で応戦していた。
二人の間で、激しい攻防が続いた。トーマは接近戦を得意とし、グラスに対して拳や蹴りで果敢に挑んでいったが、グラスの大剣を盾にしつつ、隙を見て切り付ける攻撃もまた圧倒的な威力でトーマを狙っていた。しばらくの打ち合いが続いた後、グラスは急に笑い出した。
「こんなに戦いがいのある奴は久しぶりだ!」
グラスは楽しそうにそう言った。その賛辞にトーマは肩をすくめながら返した。
「どーも。でも、お前…【剣聖】や【聖女】とも戦ったんだろ?」
その質問に一瞬キョトンとしたグラスだったが、すぐに冷たい笑みを浮かべて答えた。
「あいつらか?あいつらは暇つぶし程度の相手だった。五年後なら知らんが、今のままじゃ相手にもならん。」
その言葉にトーマは少し表情を曇らせ、短く「そうか…」とだけ呟いた。そしてすぐに自分の戦闘モードへとギアを上げる決意を固めた。
「なら…行くぞ!」
トーマに呼応するかのように、グラスも大剣を肩に担ぎ上げた。そして、ユウトとの戦いで使用した純粋な薙ぎ払いを放つ。この技は広範囲を薙ぎ払い、その威力は凄まじく、ほとんどの相手はこの一撃で無力化される。
グラスが大剣を振るうと、その薙ぎ払いは階層に広がっていく。トーマを最初避けようとした素振りを見せた次の瞬間、直撃した。衝撃波と共にトーマの体が大きく揺れ、ボロボロになりながらも立ち続けた。グラスはその姿に驚きを隠せなかった。
「お前さん…避けられたんじゃないのか?」
グラスは問いかけた。トーマと打ち合っていたからこそ分かっているが、完全にでは無いにせよダメージを最小限に抑えられると踏んでいたからだ。
ただすぐ理由に気づく、なぜなら後ろに控えていたリアナやフィーナが無傷で立っており、その周りが異常なまでに吹き飛ばされていたことに、グラスはすでに気づいていた。そして、トーマの能力が攻撃の方向を変えるものだと察した。
(この身体能力にこの能力か…厄介だな。)
ボロボロになったとはいえトーマはこちらの攻撃の向きを変えることが出来る、つまり攻撃が当たらなければカウンターを喰らってしまう。
(そうなれば現時点での優位性はあってないようなものだな…)
グラスはさらに警戒度を増し、本気で戦う意思を固めた。その様子を見て、トーマは心の中でやれやれと苦笑した。
(俺の心の弱さには嫌気がさす…アイツらなら、自分の身くらい自分で守れただろうに…。なのに、つい【反転】を使っちまった。そして…バレちまったか。)
トーマはそう心の中で嘆きながらも、次の行動に出ることを決意した。
(なら…正面突破あるのみだ!)
トーマはギアをさらに上げ、グラスに向かって突進していった。グラスは近づかせるのは得策ではないと判断し、再度大剣を振りかざし、薙ぎ払いを放った。しかし、トーマはそのまま攻撃を受け、ボロボロになりながらも突っ込んできた。
「ぐぉっ…!」
トーマの渾身の拳がグラスの腹部にクリーンヒットし、グラスはよろけながらも倒れなかった。そして、距離を取りつつ再度大剣を振りかざし薙ぎ払いを放つ。トーマはその攻撃も受け、もう一度渾身の拳を打ち込む。そのたびにグラスはよろけながらも距離を取り、再び薙ぎ払った。
「こいつ…ゾンビか!?
グラスは思わずそう叫んだ。過去に戦ったゾンビモンスターのことを思い出した。手を刎ねられようが、足を切り飛ばされようが、向かってきたあの執念深いモンスターのように、トーマもまた、何度倒れても立ち上がって迫ってくる。
さらに驚いたことに、トーマの体には傷一つなかった。それがグラスに恐怖を抱かせた。次の瞬間、グラスは自身の最強の技を繰り出す決意をした。
「すまない…」
グラスは大剣を高く掲げ、必殺の技「斬鉄剣」を放とうとした。斬鉄剣は一撃必殺の技であり、その威力は絶大で、ゲヘナの森の中層のモンスターさえも一刀両断にする威力を持っていた。
グラスは大剣を振り下ろし、斬鉄剣を放った。しかし…
「【反転】」
「なっ!?」
グラスはトーマのいる場所とは真逆の場所を切っていた。
「これで終わりだ。」
トーマはグラスの真後ろに立ち、拳を振りかざした。グラスは驚愕しながらも回避しようと動いたが、その動きも【反転】で阻まれ、逆にトーマの拳の方向に動いてしまった。
「ぐぉっ!」
トーマの拳がグラスにクリーンヒットし、グラスはついに地面に崩れ落ちた。完全に意識が飛んでいる様子だった。
「この…規格外の化け物が…」
そう呟いたトーマは、力尽きて倒れた。グラスの薙ぎ払いの技は広範囲にダメージを与え、その持続的なダメージを抑えるために【反転】を使い続けたことで、トーマの気力も限界に達していた。
(まったく…アイツといいコイツといい…やんなるくらいの強さだぜ…)
トーマはそう呟きながら、ついに意識を失った。




