22.ゴブリン退治
トーマ、リアナ、フィーナの三人は、冒険者ギルドへ向かっていた。ギルドに到着すると、ギルド内は少し騒然としていた。トーマたちは受付に向かう途中、周囲から聞こえてくる声に耳を傾けた。
「大剣のグラスが王国兵士を殺害したらしいぜ?」
「マジか?あのA級の中でもSクラスに1番近いと言われてただろ?とんでもないことやらかしちまったな」
「ああ、しかもそのまま逃げてゲヘナの森に潜伏中らしいぜ?」
トーマたちはそんな噂話が飛び交う中、受付へと向かう。
受付に到着したトーマたちは、ギルド長メンターに呼び止められた。メンターは三人に向かって、深刻な表情で告げた。
「トーマ、リアナ、フィーナ…君たちに伝えたいことがある。噂の通り大剣のグラスがナラハ王国の兵士を殺害し、ゲヘナの森に潜伏中とのことだ。そして、そのグラスによって王国にいる【剣聖】と【聖女】がやられたらしい。」
(ユウトとミサキが…?)
トーマは驚きを隠せなかった。彼の心の中で何かが揺れた。ユウトやミサキがこの世界で命を落としたかもしれない。それはトーマにとって衝撃だったが、この世界の厳しい現実を考えれば、それも仕方のないことだと納得するしかなかった。
「ゲヘナの森に行くことはないと思うが、気をつけてくれ」
「…そうか、分かった。忠告ありがとう」
トーマは静かに頷き、気持ちを切り替えた。今は自分のやるべきことをやるため、冒険者ギルドを出た。
その後、トーマたちはアルミラ洞窟へ向かった。洞窟に入ると当初の予定通り、戦闘スタイルの共有をするためにゴブリン退治を開始した。
早速現れたゴブリン3体に対し、リアナはC級冒険者としての実力を発揮し、素早い動きでゴブリンたちを翻弄していた。彼女のアサシンスタイルの戦い方は、相手の注意を引き、隙を突くものであり、その身のこなしはまるで風のようだった。
「ヘイスト!」
フィーナはリアナの戦いを見守りながら、自分の役割を果たすべく補助魔法を使った。彼女はリアナのスピードを増強する魔法を唱えた。
リアナのスピードがぐんと上がり、ゴブリン達を絶命させていく。
新たなゴブリン達がどんどんリアナとフィーナに向かって現れてくるが、リアナとフィーナは冷静に対処する。
「ウィンド!」
風の範囲魔法を用いてゴブリンたちの動きを無効化し、その隙をリアナが突いてトドメを刺していく。
「これなら最低限、問題なさそうだな…」
トーマはリアナの実力を理解していたが、フィーナがここまで有能な魔法使いだということに驚いていた。彼女はサポートに徹していたが、その力は確かなものだった。
(お荷物になると思っていたが…わからないもんだな)
そう思いながらゴブリンの一体に裏拳を食らわせてゴブリンの体を消し飛ばした。トーマのその姿にリアナはドン引き、フィーナは目をキラキラとさせていた。
安定した戦いを続けながら、三人は洞窟の奥へと進んでいった。途中、以前フィーナが売られそうになっていた場所を横切った。フィーナはその場所を見ても、特に何も言わなかったが、トーマは彼女の顔色が少し悪くなっていることに気づいた。
「大丈夫か?」
トーマがそう声をかけると、フィーナは小さく頷いた。
「大丈夫だけど…嫌な雰囲気の場所」
「無理するなよ?まだ先は長いからな」
トーマがそう言うとフィーナはこくんと頷いて歩き出す。
そしてゴブリン退治を続け、さらに奥へ進んでいくと、ゴブリンの気配が全く感じられなくなった。
「もう倒し尽くしたか?」
トーマがそう言うとリアナが言う。
「こんな程度の数じゃいなくならないと思うけど…」
リアナのその言葉にトーマも以前入った時よりゴブリンの数が少ないように感じた。
(何かがおこってる…?)
そうトーマが考えていると突然、強烈な圧力が三人を襲った。その圧力はまるで空気が重くなるかのように感じられ、三人の動きを止めた。
「何?、この感じ…!?」
リアナが驚いた声を上げた。フィーナも思わず息を飲み、その場に立ちすくんだ。
しばらくして強烈な圧が収まったあと、そこに姿を現したのは……大剣のグラスだった。
「まさか見つかってしまうとはなぁ…おまえさん達、運が悪いな」
彼はそう言って、まるでその場に溶け込むように、自然な足取りで現れたが、その存在感は圧倒的だった。
(こいつは…あいつと同等だな)
現れたグラスにトーマはゲヘナの森で死闘を繰り広げたブラッドグリズリーを思い出す。
グラスは静かに三人を見下ろし、その眼差しには冷酷な光が宿っていた。彼の持つ大剣はグラスの身の丈ほどあり、より一層の威圧感を放っていた。
「まあ、おまえさん達は俺を見つけっちまったのが運の尽きだ…おまえさん方を無効化させてもらうぜ?」
そう言ってグラスは戦闘体制に入る。
その様子を見て、トーマはグラスを見据え、無言で身構えた。
「リアナ、フィーナ…おまえ達は下がってろ」
圧に圧倒され、未だ困惑しているリアナとフィーナにトーマはさらに続ける。
「あいつは…俺の獲物だ!」




