side:【剣聖】の挫折
サイドストーリー:ユウトとグラスの激闘
ユウトがグラスを倒したことで、ミサキとドゥース、そして兵士たちは歓喜した。
「うおおお!」
「やったぞ!」
「あのグラスを倒したんだ!」
兵士たちはグラスを倒したことに我を忘れ、歓声を上げていた。
「ユウト!やったね!」
「ユウト!よくやった!」
ミサキとドゥースがユウトに駆け寄ってくる。ユウトは自分の体で扱うにはまだ難しい大技を使ったため、立っているのがやっとだった。
「はぁ、はぁ、みんなを守れてよかった!」
駆け寄ったミサキはユウトにヒールをかけ、その疲労を和らげる。
「これで殺された兵士たちが報われる…ありがとう、ユウト」
ドゥースがユウトに感謝の気持ちを述べた。
「ドゥースさん、僕は当たり前のことをしたまでです。みんなを守れて良かった。」
「でも、ユウトは無茶をしすぎだよ…」
ミサキがユウトを心配する。先程のユウトの技がユウトにとって負担が大きいことを知っているからだ。
「心配させてごめんな…でもミサキやみんなのおかげで戦うことが出来たから…ありがとう」
こうして大剣のグラスとの闘いは終わった…かのように見えた。
「!?」
一瞬にして空気が変わった。
圧倒的な圧力がその場を制圧したからだ。王国兵士はもちろん、ユウト、ミサキ、ドゥースですら動くことが出来なくなった。
「茶番はここまでだ」
ユウトたちの目の前には、倒したと思われていたグラスが立っていた。
グラスは先程までとは全く雰囲気が違い、その体からは異様な気迫が溢れていた。彼は大剣を片手に軽々と持ち上げ、その場の全員を威圧した。
「まさか、俺にここまでダメージを与えるとは…だが、この程度なら所詮ここまでだな。」
そう言うとグラスは大剣を一振りした。その一振りは凄まじい衝撃波となり、その場にいた全員を吹き飛ばした。
「ぐああっ!」
ユウトたちは一瞬で吹き飛ばされ、ユウトは木に激突して地面に転がった。彼が最も近い位置に落ち、他のメンバーはさらに遠くに吹き飛ばされていた。
「まあ【剣聖】なんてこんなもんだろうな…やっぱブラッドグリズリーをやったやつじゃないと楽しめなさそうだな…」
そう言ってグラスはユウトたちの方向とは逆の西に歩き始める。
ユウトは天元連斬を放った疲労と、先程のダメージによって体を動かすことができなかった。必死に立ち上がろうとするが、足に力が入らない。
「ま…て…」
ユウトは震える声でグラスに向かって呼びかけた。しかし、その声はかすれ、彼の体は立つことすらできなかった。
グラスはそれを見て、軽く鼻で笑った。
「才能と根性だけは認めてやるよ…だが、お前は軽すぎる。」
グラスはユウトに冷たい視線を向けたまま、ゆっくりと森の西へ歩き出した。
「よく聞け、【剣聖】。世の中には真実と見えて偽物なものが多い。本当のことを見誤るなよ。」
そう言い残し、グラスは森の奥へと消えていった。
ユウトは地面に倒れ込んだまま、その背中を見つめていた。初めての完全な敗北。自分が力を尽くしてもまったく及ばなかったことに、ユウトの心には強烈な悔恨が押し寄せた。
「俺は…弱い…まだ、こんなにも…」
ユウトは拳を握りしめ、悔しさに震えた。彼の目には涙が滲み、地面に倒れ込んだまま、ただ自分の無力さを噛みしめていた。




