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2. 勇者の選別

国王の合図で、彼ら三人は「勇者」としての資質を確認することになった。玉座の前に、神秘的な光を放つ魔水晶が運ばれてきた。


「これは、我がナラハ王国に伝わる魔水晶だ。この水晶に触れることで、勇者たちが持つスキルを確認することができる。」


国王は厳かな声で説明を始めた。その横には、大臣たちが静かに並び、彼らもまた三人の若者に視線を注いでいた。


「勇者召喚により我が国に現れた君たちは、特別な力を持っているはずだ。我々はその力を確認し、それに応じた支援を行うつもりである。」


大臣の一人が続けて話をした。「我が王国は、長らく魔族との戦いに苦しんできた。君たちのスキルこそが、我々の未来を切り開く希望だ。どうか、君たちの力を示してほしい。」


その言葉に、東真は少しだけプレッシャーを感じたが、同時に何かが自分の中で奮い立つのを感じた。彼の横で勇人が前に出る準備を整え、美咲も神妙な顔つきで頷いていた。


「まずは俺が試してみるよ!」


勇人は一歩前に出た。


「これは魔水晶だ。この水晶に触れることで、君たちのスキルを確認できる。まずは天道勇人、前へ進み出よ。」


勇人は堂々とした態度で魔水晶に手を置いた。すると、水晶は眩いばかりの光を放ち、広間が一瞬にして明るくなった。


「スキルは…【剣聖】!全ての剣技を習得し、操ることができる者だ!」


その宣言に、広間は歓声に包まれた。騎士たちは興奮し、貴族たちは拍手を送り、国王は満足そうに頷いていた。


「次に、神楽美咲、前へ。」


勇人の後に続いて美咲が進み出る。彼女が魔水晶に触れると、今度は穏やかで優しい光が広間を照らした。


「スキルは…【聖女】!全ての聖なる力を操ることができる者だ!」


またしても広間は歓喜の声に包まれた。「聖女」の称号に人々は祝福と期待を込めて美咲に向けて拍手を送った。美咲は少し恥ずかしそうに微笑みながらも、その場の空気に応えるように小さくお辞儀をした。


「最後に、逆見東真、前へ。」


東真は緊張した面持ちで前に進んだ。広間の中で勇人と美咲が発揮したスキルの威光が今なお感じられ、その期待の波が東真にも押し寄せてくる。しかし、その重圧の中で心のどこかに不安の影が拭えなかった。


彼が魔水晶に触れると、今までのような眩しい光も、優しい光も現れず、代わりに微かな薄暗い光が揺らめいた。その光は不確かで、まるでその存在自体が否定されているかのようだった。東真の胸に冷たい感覚が広がり、嫌な予感が現実になっていくのを感じた。


広間は瞬間的に静まり返り、期待していた空気が不穏なざわめきに変わった。東真はその場に立つ自分がまるで世界から切り離されたような孤独を感じた。


「これはまさか…【反転】……?」


国王の声には戸惑いが混ざっていた。周囲も一瞬静まり返り、次第にざわめきが広がっていく。


「な、なんだそれは?最弱のスキルではないか……!」


誰かが嘲笑する声が聞こえた。東真の胸に冷たいものが広がる。次第に騎士たちや貴族たちの視線は冷たく、蔑むようなものに変わっていった。


「こんなスキルで何ができるというのだ?」


「役立たずの勇者だな……。」


嘲笑と罵声が浴びせられる中、東真は唇を噛み締めた。美咲が心配そうにこちらを見ているのが視界の片隅に映ったが、彼女に心配させたくはなかった。それでも、自分の無力さが突きつけられるようで、胸の中が苦しかった。


「これで三人のスキルは確認された。天道勇人、神楽美咲は勇者として迎え入れる。しかし、逆見東真……お前は……」


国王の言葉は冷たかった。東真は目を閉じ、深く息を吐いた。自分だけがここで求められていないという現実を、痛いほど理解していた。

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