第21話(累計 92話) 最終決戦1:侯爵家へ強襲するミア!
「悪いオジサン達! ボクが捕まえに来たよー!」
ミアは侯爵公館。
その一番奥まった場所にある侯爵私室のドアを、勢いよくドカンと蹴り破る。
生脚キックを喰らったドアはヒンジから千切れ飛び、室内に飛び込んだ。
「ど、どうしてぇ、王都にいる筈の小娘がここに!?」
「ほう。これは想定外の展開ですねぇ」
暗い室内、ガマガエルのような姿の中年貴族。
そして豪華な椅子に座る青年が共に驚きの顔で、廊下の魔法灯を背負うドヤ顔なミアを見る。
「あーあ。蹴り破る必要は無いのに、またやってしまったのか、ミアくんは。弁償は……。悪人相手では気にしなくてもいいか」
「お兄様。やってしまった事は、しょうがないですわ。これぞ、ミアちゃんですし。セバス、背後の敵は大丈夫ですわね。挟み撃ちは嫌ですの」
「御安心を、お嬢様がた。大半の敵は、フィン坊ちゃまの昏睡魔法で無力化済み。残る敵も、全てミアお嬢様が倒してしまいましたので、私の出番は拘束以外ございませんです」
ミアの背後からフィン、マリー。
そして後方警戒をしている老執事が現れた。
「宮中伯! どうしてオマエまでココにいる!? そんな情報は一切聞いていないぞ? それよりも、勝手に我が屋敷に押し入るとは不届き千番。オマエ如き小娘には、侯爵に対し罰する権利は無いだろう!」
「あら、まだ悪あがきをなさるのかしら? グラニス侯爵エドモンド・デ・マルゴワール閣下ぁ。貴方には国家内乱罪の嫌疑ががかっております。そして、そこにいるお方。貴方が侯爵閣下を操る『結社』の現地代表者、『能天使』さんでしょうか?」
声を荒げる侯爵に対し、口元を鉄扇で隠しつつ冷たい目線を向けるマリー。
彼女は、各部が皮や金属で補強された真紅の戦闘用ドレスを身にまとい、二人に冷たいお言葉を投げかけた。
「そーなの! 証拠ならいーっぱい、せんせーが見つけてくれたよ。証言も扇動者のおにーさんとか、狙撃手のおじちゃんからボク沢山聞いたんだ。侯爵のおじちゃん、観念しなさい!」
そして侯爵にロッドを突き付けるミア。
彼女も完全装備。
頭部にはヘルメット代わりのサークレット。
標準装備の革製ジャケットに革製肩当てを追加。
手足も、いつもの肘当て、脛当ての他。
盾代わりの金属製の籠手、に脛当てまで装備。
手指は指抜き手袋、その手にはマリーから貰った真紅のロッドが光る。
更に、腰には父の愛刀も履く。
女の子らしくオシャレ部分としてマリーに編んでもらった三つ編みにはピンクのリボン。
フリル付きキュロットスカート姿から伸びる生脚が、しなやかに伸びていた。
「さて、侯爵閣下に世界を渉る死の商人。『天界の守護者』の幹部とやら。既にネタはバレている。ここは大人しく捕まってくれないかな? そうすれば、私直々に種明かしをしてあげよう」
フィンも、今日は重武装。
防御魔法が掛かっている防水マント。
皮の胸部装甲を持つローブに魔術師用の杖。
腰には多数の魔道具をぶら下げている。
「ぐぬぬ。生意気なガキどもめぇ。だが、たった四人で侵入するとは愚か者よ。者ども、出会え。であえー! 不法侵入を侵した狼藉者を殺すのだ!」
「ざーんねん、侯爵のオジサン。さっき、セバスさんが話していたのを聞いていなかったのぉ? せんせーが殆ど眠らせたし、起きてた人はぜーんぶ、ボク倒したよ。さー、観念してね」
エドモンドは、椅子から立ち上がり声を荒げて手勢を呼ぶのだが、誰も来る気配は無い。
ミアは得意げに全部倒しちゃったと言いながら、くるりと振り回したロッドをビシっと侯爵に突きつけた。
「ふははは! エドモンドよ、小娘の方が随分と格が上のようだな。では、汚名返上にお前直々に小娘どもを殺せ。さすれば、すべての失態を許そうぞ」
そんなミアを見て、まだほくそ笑むカレエル。
豪華な椅子に座ったまま、ミアとカレエルを交互に見るエドモンドへ戦闘命令を出した。
「カレエル様ぁ。無理を言わないでくださいませ。あのような足出し下品小娘は、あれでも随分手ごわく、我らの暗殺者どもを全て返り討ちにしています。私程度の腕では、時間稼ぎも無理です」
「なに、ワレも手を貸そうぞ。エドモンド、お前の身体には既に少々手を咥えさせてもらっておる。強化獣兵の実験第一号として戦うが良い!」
ミアを見て怯えるエドモンドに、カレエルは意味不明な事を囁き、彼の肩を軽く叩いた。
「カレエル様、一体何を……。ぐ。ぐぎゃぁぁ! か、身体が熱い! 一体何ががぁぁ!」
エドモンドは奇声を上げ、己の醜く太った身体を両腕で抑える。
彼の身体は徐々に内側から膨れ上がり、ビリビリと豪華な衣装が破れていった。
「第5異界。バイオテクノロジーが進んだ世界から導入した技術。別の生物と人体の融合による改造強化兵。科学を知らぬお前らには、この凄さは何もわかるまいて。ハハハ!」
「つまりは、ショッ〇ー怪人。結社とやらも特撮系の怪人とは案外と下世話だなぁ」
人から異形の怪物へと変貌していくエドモンド。
バイオテクノロジーの結晶だと人外の姿になっていくエドモンドを自慢げに称えるカレエルだが、フィンはちんけな特撮怪人として蔑む。
「えっとぉ、お兄様。緊張感が無いのは困りますわ。あんなバケモノを眼にして、そんな感想ですの?」
「せんせー。公爵様って、つまりはキメラさんなの?」
異常な様子にもかかわらず、カレエルをバカにするフィンの様子に、マリーもミアもぽかんとしている。
「特撮怪人だとぉぉ。馬鹿にするな! そこなハーフエルフよ。やはり、お前は異世界転生人だったのか?」
「その通り、死の商人よ。お前らの野望は今日潰えるのだ! ミアくん。怪人はほっておいて、先に悪のトップをやっておしまい!」
「あらさっさー、せんせー!」
尚も苦しみながら変化していくエドモンドを放置し、ミアはカレエルに突撃していった。




