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乙女な神官戦士と魔法学院教授の異世界法医学ファイル~ボク、スパダリでハーフエルフの先生と一緒に完全犯罪は見逃さないの!~  作者: GOM
第2部 第2章 フィンとミアはずっと一緒に。

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第20話(累計 91話) 強襲前日。

「クロエちゃん、無理言ってこんな遠くまで連れてきちゃってごめんね」


「気にしないでね、ミアちゃん。こんな機会でも無いと王都の外までなんてアタシは来れないから。それに何かあった時に騎士団のお兄さん達の怪我を治すのが、アタシの役目だもの。あ、この間ミアちゃんが再生治癒魔法(リジェネレート)が出来たって話だけど、アタシもこの間成功したよ」


「えー!! せっかく治癒魔法でもボクの方が先に行けたと思ったのにぃぃぃ。クロエちゃんのいけずぅぅ」


 侯爵領突入の数日前。

 ミアは、隣領で演習をしていた神聖騎士団と行動を共にしていた。

 まだ肌寒い春先、焚火の前で友人クロエと談笑している。

 お互い治癒魔法のレベル自慢をしあい、口では文句を言いながらも笑みを欠かさない。


「ミアくん。あまりクロエくんに無理を言わないようにな。一緒に行動するのも明日の朝まで。我々は騎士団とは別行動。隠密にて侯爵領に侵攻するのだから」


「まあまあ、お兄様。今日くらいは大目に見て、ミアちゃんもお友達と仲良くお話してもいいですわよ。それにクロエちゃんも一見地味ながら、いいモノをお持ち。実に可愛いわぁ」


 フィン、マリーの兄妹、老執事も騎士団の中に紛れて隠密行動中。

 ミアと共に明日以降の侯爵領内への強襲を行う予定だ。

 マリーはミアの横に座り込み、クロエの肢体を眺める。

 彼女は、ミア以上の「大きさ」を誇るクロエの胸部に視線を向けていた。


「マルグレット様。兄の処遇、ありがとうございました。おかげで兄の命は助かりました」


 クロエは、マリーの視線に気がつかないのか、あえて気にしないのか。

 本来であれば死罪もありえた兄、ファブリスを遠島送りという形で命を救ってもらった事に感謝の礼をした。


「本当は人治主義というのは良くないのですが、情状酌量ということだから、気にしないでね、クロエちゃん。今度の情報を流してくれていた狙撃手さんも同じような感じで、異世界追放。処払い予定だし」


 クロエの礼に対し、マリーは気にしないでと微笑み返す。

 そして情報を多数流してくれた狙撃手、『魔弾の射手(マークスマン)』について、この世界からの追放。

 つまり、元の世界へ帰れという粋な罰を与える予定と話した。


「でも、それって異世界へ渡る方法を確保できたらって話だよね、お姉さま」


「ま、そこは出たとこ勝負だよ、ミアくん。どっちにしろ、敵の首魁。『能天使(パワーズ)』さまとやらの身柄を確保しないと、今後の安全も無い訳だし」


 ミアが疑問を訴えるが、敵を捕まえての事だとフィンが説得する。


「ここにいたか。俺は別行動だが、無茶だけはするなよ。特にミア嬢ちゃん。オマエは突撃癖が治らない。どっしり構えて守り重視の方がいい場合もあるってのを覚えておきなさい。それとな……」


 ミアらが焚火を囲む中、騎士団長ニコルが布に包まれた何かを持って現れる。

 そして無茶をしがちなミアに苦言を呈しつち、手に持った物を彼女に渡した。


「おじちゃん! これって!!」


 ミアは手の中のずっしりと思い長い棒に目線をくれた後、驚きの顔でニコルを見返した。


「俺が陽動で一緒にいけない分、お父様。アレクサンドル殿がミア嬢ちゃんを守ってくれるだろうと思って、持ってきていたんだ」


「ありがとう、おじちゃん。お父様の宝剣だぁぁ」


 ミアは布を取り外し、見事な拵えの曲剣(シャムシール)を握る。

 そしてゆっくりと鯉口を切り、優美な刀身を鞘から引き抜いた。


「これがお父様の剣!」


「ああ、帝国に伝わりし宝剣。片手半剣の一種で、両手でも振るえる名品。俺も幾度も切り付けられたスゴイものだよ。ミア嬢ちゃん自身は、扇動者と戦ったときに見たよな」


「うん。怖いくらいに綺麗な剣だったのを覚えてる。使い手自身は大したことなかったから、戦いは怖くなかったけど」


 ミアは魅入られるように、実父の愛剣を眺める。

 その刀身はまるで濡れているかのようになめらかで、普通の曲剣より反りは浅い。


「ミアくん。剣を少し見せてくれないかな? ほう、刀身の造りが『日本刀』風になっている。切っ先の形状からも切りだけでなく、突きにも対応とは。大陸の剣とは大きく違う気がするが、実に良いものだね」


「そーなんだ。この間、扇動者のお兄さんが使ったけど、全然使いこなせていなかったんだ。おじちゃん、ありがとう。少し練習しても良いかな?」


「ああ、どうぞ。その剣は元からミア嬢ちゃんのもの。俺からの婚約祝いって事にしてくれや。俺はな、嬢ちゃんのお父様を殺した身。ありがとうって言われる権利は……」


 ミアが剣を振るう姿を見て、ニコルは涙をこぼす。

 己の手で殺した男の娘に、男の剣を渡す。

 その際に、ありがとうと言われれば、騎士団長であろうとも複雑な心境だろう。


「ニコルくん。ミアくんは実に良い娘に成長しましたね」


「ああ、そうだ。お前にはもったいないくらいの子だよ。俺はな、アレクサンドル殿の命を奪った分、ミア嬢ちゃんを守らないといけない。その役目、今回以降。フィン、お前に預ける。絶対に守り切って、お前も死ぬなよ。男同士の約束だ」


「ああ。絶対に約束を守って帰ってくるよ。あ、ミアくん。重心が先にあるから気を付けて。剣先に振られ過ぎないように使わなきゃ!」


 泣いているニコルに言葉を掛けるフィン。

 二人して泣き笑いながら剣の練習をするミアを眺める。

 そして男同士の約束。

 二人で生きて帰ってくる事を誓い合った。


「おいおい。剣を振るっているところに飛び込んだら危ないぞ。全くフィンくんと来たら、ミア嬢ちゃんに甘すぎる」


「いいではありませんか、騎士団長様。可愛いミアちゃんと堅物お兄様。実に良いカップルですの。イチャコラ具合が溜まりませんですわ、おほほ」


 マリーは背後の老執事から茶をもらいながら、ニコルと共にミアの危なっかしい様子を暖かく見守っていた。

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