第5話(累計 49話) 誰もいない村。怖がるミア。
ミア達、調査隊がティエレ村に到着したのは早朝。
本来であれば冬であろうとも村民が起きだしてくるはずの時間。
だが、村はひっそりとしていた。
「せんせー。これ、おかしいです。家々が除雪されてませんし、ドアを開いた後もありません!?」
ミアがいう通り、村の中にある家全てが雪に埋もれている。
また、玄関のドアの前にも深く雪が積もり、そのままではドアは開かない。
「どうやら村人は家から出てこれない状況、もしくは……」
「ニコルくん。後半の可能性が高いが、トラップや奇襲に気を付けて一軒ずつ確認していこう。囲まれてたり背後からの奇襲が怖いから、村の入り口に近い家から順番にチェックしないかな?」
調査隊はフィンの提案通り、村の入り口から順番に除雪をし、一軒ごと家の中を調査開始した。
「台所に保存されていました黒パンの乾燥状況から見ますに、どうやら半月以上、無人のようですね」
「保存食は大丈夫ですが、ミルクなどは乾燥しきってます。貯めた水も凍ったままですから、暖炉に火が入った形跡もないです」
村の中央部にある井戸付きの広場。
そこにフィン達はタープテントを張って臨時指揮所を作り、各員からの報告をまとめている。
一軒ごとに隅々まで調査を行っているので、かなり時間消費も多い。
既に正午も過ぎて太陽は昇り切るも、小雪が舞う冬の天候なので日が沈むのも早いと予想される。
「せんせー、怖いよぉ。ここ誰もいないし、生き物の気配も無いの」
「どさくさに紛れて抱きつかない! だが、明らかに異常。事前情報通りなら、村人も他の人達も……」
ミアは調査隊員からの報告を受けるたびにフィンに抱きつき怖がる。
フィンはミアを手荒に引き離しつつも、集まった情報から最悪の状況を考えた。
「こうなれば、残る村長の家と奥の貴族別荘を調査するしかないですね。ですが、時間が足りない。かといって、このまま村の中で夜になるのは危険過ぎます。ニコルくん。いえ、騎士団長様。ここは一時撤退すべきでは?」
「ああ。流石の俺でもここで夜を明かす度胸は無い。一旦、昨晩の野営地まで撤退して、明朝に残る二軒を調査しよう」
小さな家を全て調査をしたが、フィン達はそこで生きている人や動物を発見することは出来なかった。
そう、乾ききったネズミや犬猫の死体のみしか発見出来なかった。
牧場や畜舎にも牛や山羊などはおらず、カラカラと木製バケツが転がるだけ。
フィン達は一部の荷物や野営テントを残し、村を一時離れた。
◆ ◇ ◆ ◇
「ボク、せんせーと一緒じゃなきゃ嫌なのぉ! 一人じゃ怖いもん」
村の調査をした夜。
ひどく怖がったミアはフィンと同じテントでも我慢出来ず、フィンと同じ布団で眠る事を要求した。
「はぁ、ミア嬢ちゃん。フィンくんだから信用するが、普通は結婚前の乙女が男と同衾するって事は処女を失ったのと同意。世間的評判が完全に無くなってもおかしくない所業だぞ?」
「だってぇぇ、おじちゃん! ボク、怖くて一人で眠れないよぉ。身体のあるモンスターならゾンビでもグールでも怖くないけど、実体がないゴーストとか、見えない敵は怖いよぉ」
「姫騎士さまにも怖いものがあるんだな、ミアくん。ニコルくん。今日も私が辛抱するから許可を頼む。私が信用できないなら、後で巫女により処女確認をしてもらっても……。あ。痛い! ミアくん、顔を赤くして殴らなくても」
泣きながら駄々をこねるミアに飽きれ、フィンはミアの身元保証人でもあるニコルに同衾の許可を願う。
自らがミアを「汚さない」と後から証明してもというが、それをミアは恥ずかしがって今度はフィンをぽかぽかと叩いた。
「ボク、せんせーになら抱いて欲しいけど、今日はそんな気分じゃないから。それにせんせーは、ボクを無理やり犯すなんて絶対にしないもん!」
「はいはい、ということだからニコルくん。今日は私に任せておいてくれ。しかし、オーガロードすら一撃のミアくんがゴースト系が怖いとはね。神聖魔法の<解呪浄化>で倒せないのかい?」
誰もがお化けを怖がるミアを可愛いと微笑ましく思っていたが、次の発言で驚く。
「それは多分出来るけど、殴った方が早いし。ボク、ゾンビやリッチなら一発で浄化できるんだけど、ゴーストやワイトはスカスカで殴れないから嫌で怖いの!」
「はい!? 殴れないから怖い!???」
「はっははあ! 実にミア嬢ちゃんらしいなぁ。フィンくん、嬢ちゃんを頼むよ」
ミアの爆弾発言に、誰もがミアの貞操の危機を考えなくなった。
二人とも貴族に近い身分ではあるが、両家とも婚約は承認済み。
たとえ、ここで婚約者同士で婚前交渉があっても何の問題も無い。
更に無理やりミアを襲って犯すことなど、オーガですら不可能なのだから。
「せんせー。ボク、怖いよぉ。どうして誰もいなくなったのぉ」
「ミアくん、今日は無理を各方面にお願いして添い寝を許可してもらっているんだ。あまり私に近づき過ぎないように」
結局、その晩はフィンはミアに渾身の力で抱きしめられ、天国と地獄を存分に味わった。




