第1話(累計 45話) ミアの騎士爵(ナイト) 授与式。
小雪が舞う王都。
今日は王城にて、今年一年間で王国へ貢献した者達に対し勲章や称号などが授与される夜。
多くの者達が王城にて集う。
「……余は、其方に男爵位を授ける」
「ありがたき幸せ。これ以降も王と王国の為に励みます」
ミアの前には、昇進した貴族らが王の前へ格が上の者から順番に呼ばれ、勲章と称号をもらっている。
……ボク、ドキドキしてきちゃった。
ミアは、はしたないとは思うが側に居たフィンの手をぎゅっと握る。
フィンもミアの手を優しく握り返してくれた。
「ミア・フォンブリューヌ王都警察巡査。王の御前に。アコレ―ドを行う」
「は、はい」
……ボク、緊張しちゃうのぉ。ドレスの裾を踏まないようにしなきゃ。ヒールも慣れないし。
ミアは自分の名前が王の側近から呼ばれたので、足元まで隠すドレスの裾を少し持ち上る。
そして背筋を伸ばしながら、分厚い絨毯を踏みしめながら前に進んだ。
いつもはボーイッシュな恰好のミアも、今日はマリーに準備してもらった純白の肩出し夜会ドレスを身にまとう。
また、髪型もいつもの三つ編みでは無く、母が気合を入れて編み上げて後頭部に纏めている。
ミアの側には、同じく白系の正装を着たフィンが配偶者代理として立つ。
また近くには青いドレス姿のマリーも扇で口元を上品に隠し、微笑みながらミアを見守っていた。
「……ミアくん、おちついて」
ミアの耳に、心配そうなフィンの声が入る。
……ありがとー、せんせー。
小雪の中、白く輝く月の光が平面ガラスの窓から差す。
白き光に照らされたミアは、正真正銘の姫。
貴族らしき二分の薄い笑みを浮かべたまま、王の元へ進んだ。
多くの着飾った高貴な人々が集まる謁見室、天井にぶら下がる何個もの豪華なシャンデリアからの魔法灯りによって明るく照らされている。
壁は純白の文様付きの壁紙で飾られており、ところどころには歴代の王の肖像画が並ぶ。
これまた純白の大理石製の床には、深い毛足の真っ赤な絨毯が敷かれていた。
「ミア・フォンブリューヌ。表を上げ、余に顔を見せよ」
「はい、陛下」
ミアは玉座前、段差がある直前で止まる。
玉座に控えしは国王。
サルデニア王国 第十九代国王 アルベリク四世。
現在、四十代半ばで髭面のやせ型体形。
三人の妻、四人の王子を持つ『賢王』であり、『鉄壁王』。
その政治には「そつ」がなく、十三年前の帝国の侵略に対しても手堅い戦術と兵站を使い、巧みな防衛戦で国家と民を守り抜いた。
……王様。痩せてるけど迫力が凄いの。特に目力が怖いよぉ。
王は玉座から立ち、ミアの前に一歩進む。
そして側近からもらった羊皮紙巻物を広げ、読み上げた。
「其方は、先だっての旧帝国による動乱の阻止において、多大なる活躍をしたと聞く。また、それなるフィンエル・シンダール1級教授と共に王都にて数多くの難事件をこれまでも解決した。幼き娘の身でありながら、王国に対し偉大な貢献をした事に対し、余は其方、ミア・フォンブリューヌに騎士爵を授ける。余の前に跪け」
「はい」
女性、それも少女と呼ばれる年齢の娘に騎士爵が授与されるのは非常にまれ。
おそらく王国でも、前例がほぼ存在しない。
周囲の貴族たちの目線は、全てミアの元に集中した。
……ボク、あがっちゃうよぉぉ。せんせー、後ろにちゃんと居てねー!
さしものミアも、ちゃんと王の前ではカテーシ―をして頭を下げ、片足を床に付け跪いた。
そこに王は、同じく横に立つ親衛騎士団長から儀式用の剣をもらって抜き、刀身の峰でミアの両肩を軽くポンポンと叩いた。
「ありがとう存じます、陛下。わたくし、これからも王国と陛下の為に励みます」
ミアは国王から、直接に騎士爵の勲章を受け取った。
「ミアよ。これで其方はディムとなり、騎士団加入の権利を得た。馴染みの神聖騎士団か、それとも余の親衛騎士団に加入するか?」
「ボク、いえ、わたくしは願いが適いますなら、今のまま警察にて王都の民の平和を守りたいと思います」
ミアは顔を王の元へ上げ、騎士団ではなく警察で人々を守りたいと満面の笑みで宣言した。
「あい、分かった。では、これからも王都の平和を守ってくれ」
王は薄く笑いミアにそう告げて、一旦ミアから離れようとした。
「ああ、そうだ。ミアよ、其方とは少々個人的に話したいことがある。後日、宮中伯経由で連絡をするので、待っておれ」
だが王は、再び跪いていたミアの側まで近づき、腰を下ろしいたずらっぽい表情で耳元で要件がある事を呟いた。
「ひゃ、ひゃい!」
さしものミアも、王からの急な呼出しに驚いて変な声を出した。
◆ ◇ ◆ ◇
「陛下。これは如何なる宴なのでしょうか? わたくし、そしてわたくしの関係者のみしかおりませんが」
「なに。ミアという娘の本当の姿、そして本心を知りたいと思っただけの事。帝国の姫君ともなれば、余もそれなりに気を遣うぞ?」
授与式から数日後の夜。
ミアとフィン、マリーは、王の主催する個人的夕食会に呼ばれた。
「陛下。ミアちゃんは陛下や王国に牙をむく存在では決してありません。それは宮中伯たるアタクシが保証いたしますわよ、オホホ」
「普段であれば余も、其方の報告を信じよう。いつも余と国の為に働いておるからな。だがな、先日から余の元に送られてくるミアに関する報告書を読むと、流石に不信に思うぞ? 出会う前は、事細かにミアの身元調査情報を書いてあったが、最近では別の方向に事細かい。どこの王族がミアの肌が触り心地良いとか、胸がちょうど揉むのに良いサイズだとか、どこもかしこも良い匂いなどの情報を必要とするか。はっきり言って正気を疑ったぞ」
「マリー……。お前何処まで壊れたのか? 兄として恥ずかしい……」
「おねーさまぁ。恥ずかしいですぅぅ」
王城の奥、魔道具灯ではなく贅沢にも燭台の上の蝋燭にて照らされた極秘な会食室。
そこでは、乙女の悲鳴が大きく響いた。




