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ランプとかの魔人

作者: 清水進ノ介

ランプとかの魔人


 砂漠の地下に眠る迷宮。そこに一人の盗賊が侵入した。侵入者を排除するための、数々の罠を華麗に突破し、ついに盗賊は、迷宮の最奥に辿り着く。そこには金銀財宝が積み上げられていたが、盗賊が財宝を盗もうとしたその時「お待ちなさい」と、どこからか声が聞こえてきた。盗賊が驚いて手を止めると、続けて「わたくしはランプの魔人。財宝の山の上に、黄金のランプがあるでしょう。手でこすれば魔人が現れ、どんな願いでも叶えましょう」と声が聞こえてきた。


 盗賊は言われた通りにランプを持ち、手でこすると、中から紫色の煙が吹きあがり、盗賊の周囲を覆い尽くす。その煙の中に、黒い影が現れ、そこには小太りの男が立っていた。男は「どんな願いでも、三つだけ叶えましょう。その代わりといってはなんですが、最後の願いで、わたくしをランプから解放し、自由にしてもらいたい」と言った。盗賊がどうしようかと考えていると「いや、待ちたまえ」と、どこからか声が聞こえた。その声は、転がっていた壺の中から聞こえてきたようで、盗賊がその壺をこすると、煙が吹き出し、ひょろりとした小柄な老人が現れた。


「わしは壺の魔人じゃ。わしは五つ、お前さんの願いを叶えてやろう。その代わりに最後の願いで、わしを自由の身にしてもらいたい。どうじゃ、悪い話ではなかろう」

「いいえ、待ちなさい。あたしなら、七つの願いを叶えてあげられるわよ。あたしを自由にしてちょうだい」


 次は女の声が、フルートの中から聞こえてきた。盗賊がフルートをこすると、案の定フルートの魔人が現れた。その時さらに老婆の声で「お待ちよ、あたいなら九つの願いを叶えられるがね」とキセルの中から聞こえてきた。それに続いて子供の声で「ぼくならもっとだ、十一個の願いを叶えるよ」とラッパから聞こえ、さらに「おれ様は十三個も叶えられるぞ」とどこからか聞こえ、「いいや、十五個だ!」だの「まだまだ、だったら十七個だ!」だとか、気づけば盗賊は、何十人もの魔人に取り囲まれていた。


「おいお前達、こすられていないのに、勝手に出てきたな!ルール違反だぞ!」

「ケチくさいこと言うんじゃないよ!やっと回ってきたチャンスじゃないのさ!」

「ちょっと、誰かあたしの髪を引っ張ったわね!」

「おい押すな、狭いんだから整列しろ!」


 盗賊はしばらく魔人達の喧嘩を眺めていたが、足元に転がってきた、香水の瓶を拾うと、さっと迷宮から抜け出した。地上に出た盗賊が香水瓶をこすると、中から女の子が現れ、申し訳なさそうに「わたしは一個しか、願いを叶えてあげられないの」と言った。盗賊は「それなら、きみを自由にするよ」とさらりと言い、女の子は香水瓶から解放され、自由の身になった。


「あの魔人達を見ていて、強欲はみっともないなと、気づかされたよ。これからは心を入れ替えて、まっとうに生きていくさ」

「わたしは魔法で創られた、一番最初の魔人なの。自由になれたから、本当のことを教えてあげられるよ」

「本当のこと?」

「もしも『魔人を自由にする』以外の願いを、一つでも言っていたら、あなたも新しい魔人にされてしまっていたの。財宝を守るための、最後の罠が魔人なの。あそこにいた人達は、みんなそうやって、魔人にされて、閉じ込められていたの」


おわり

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