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6.ネリルのスキル

エンペラー(以下略)をどう対処するか……

(早水 勇雄視点)


ーニョロニョロニョロ……


「ふぇ~!?……もう触手がすぐそこまで~!」


「……触手は単色で6種類か……それぞれ、対応したスライムの特性を持ってる筈だ!」


触手はそれぞれ、緑、紫、黄色、白、茶色、そしてピンクの単色ずつで計6種類か……


多分、それぞれのもとになったスライムの特性を持ってやがるな……


「え~っと~、つまり~……」


「緑は酸、紫は猛毒、黄色は麻痺毒、白は一瞬で凍る液体、茶色は可燃性の油、そしてピンクは……媚薬(・・)を出して来る筈だ!」


「び、媚薬ですか~!?」


「ああ、媚薬だ!」


ピンクの体色が特徴的なエストラススライムは、生成した媚薬で対象を発情させ、その隙に補食するという習性を持つスライムだ。


当然、その要素を持ったピンクの触手も媚薬を出して来るだろう。


ータッタッタ!……ニョロニョロ……


「……ん~?……何か、思ったより遅いですね~?」


「多分、エネルギー不足だな。……基本的にスライムは雑食だから何でも食うが、ダンジョンに自生する苔で事足りる他のスライムと違って、奴があのサイズを維持しようと思ったら苔なんかで事足りる訳がないんだ!」


「え~?……なら、もしかして私達って……」


「間違いなく、餌として追われてるな……」


幸いにも、奴はエネルギー不足で動きが鈍い。


もっとも、触手じゃなくて本体に来られたら1発アウトなんだがな……


とまあ、そんな事を考えていると……


「も、もしかして~……既に誰か食べられてたりします~?」


「いや、それはないだろ。……少なくとも、昨日までの時点で誰か食われてりゃ騒ぎになってるし、今日は1階層のスライムを見る限り誰も入ってないっぽいしな……」


「ど、どうして誰も食べられてないと思うんですか~?」


「あのなぁ、今の時代は探検者が配信やってるの当たり前な時代だぞ?……誰かがスライムダンジョンでこんなのに襲われたら、騒ぎになるに決まってんだろ」


勿論、これは希望的観測だ。


だが、割と的を得てると自分では思ってる。


と、その時だった。


「……ヒト……トカス……トカシテ……タベル……」


「……い、勇雄さ~ん……な、何か喋りました~?」


「……クソがっ!……もう言葉を解する程に成長してやがったか!」


ダンジョンのモンスターは時折、成長すると人の言語を解する個体が現れる事がある。


まあ、言葉が通じたとて価値観が違い過ぎるので、それこそ【テイム】スキル持ちでもない限り共存なんて不可能なんだが。


「で、でも~!……そんなすぐに成長しますか~?」


「特異個体ならあり得ない話じゃない!……寧ろ、それが特異個体のヤバい所だ!」


「そ、そうなんですか~!?」


特異個体……それは1つのダンジョンで1体生み出されるかどうかという超激レア個体の事だ。


とはいえ、身も蓋もない言い方をすればダンジョンにとっての(ガン)であり、ダンジョンがモンスターを生成する段階で何かしらの不具合が生じると誕生する個体とも言える。


基本的に特異個体の強さはバラバラなのだが、共通点として完全体までの成長スピードがとんでもなく速いという事が挙げられる。


「……ってな訳だが、本当に知らなかったのか!?」


「そ、そういやそんな情報もあった様な~……」


「おい、いくらここが初心者向けダンジョンだからってそれはどうなんだ!」


ネリル、予想以上に初心者だな……


こんなんでもD級探検者になれる辺り、D級ってマジで最低限のラインなんだな……


「ふぇ~!……す、すみません~!」


「あ~もう!……って、触手はどうなった?」


「あれ~?……も、もう来てないみたいです~!」


な、何とか逃げ切ったか……


……って、階段塞がってんなら同じだろ!


「コメント欄!……ここからどうにかする方法は何かないか!?」


「まさかのコメント欄頼みですか~!?」


俺は藁にもすがる思いで、スマホからコメント欄を覗くが……


・無理……

・無理……

・無理……

・というか、まずそれぞれの能力は?


……まあ、それが優先して確認するべき情報だよな……


「……って訳で俺の能力だが、魔法は土の低級魔法を使えて、スキルは【完全防御】だ」


「わ、私の能力は~……魔法は火の低級魔法で~……スキルは【テイム】です~……」


「て、【テイム】か……」


……【テイム(・・・)()使用者に(・・・・)よって当たり(・・・・・・)にも(・・)外れにも(・・・・)なる(・・)()()()だ。


というのも、この世界における【テイム】は()()()()()()()()()()()()()()()()()()スキルであり、どうにかして相手のモンスターを自身の配下として屈服させる必要があるのだ。


そのため、強者なら当たりスキルとなるが、弱者だと『こんな雑魚に従うと思ったか?』という反応をされて交渉が決裂するという外れスキル……もとい宝の持ち腐れと化す。


そして、見るからにネリルや俺は弱者だ。


「な、何ですか~?……その顔……」


「いや、悪かった。……で、従魔は居るのか?」


「居ませんよ~!……だって、1体でも従魔にしちゃったら、モンスターを倒す相手として見れなくなっちゃうじゃないですか~!」


「そういうタイプか……」


マズいな、これ……


もし救助部隊がこの配信を見てたら、今入るのは危険と判断しかねない……


かと言って、この戦力で倒せたり撃退出来たりする相手でもない。


どうする……


「だから~、この"従魔収納石"も空っぽで~……」


「いや、今はもうその話終わってるから……」


ちなみに、"従魔収納石"とはその名の通り【テイム】した従魔を収納出来る宝石であり、ネリルは首飾りとして着用していた。


「……何なら、交渉してみます~?」


「いや、冗談は辞めてくれ」


「冗談じゃないですよ~!……もう、それしかありませんよ~!?」


「……じゃあ、次遭遇したらな?」


……まあ、もしまた遭遇したら挑戦するだけ挑戦してみるか……


どうせ、死ぬのは同じだろうし……


……とか思ったのが間違いだったか。


ーニョロニョロニョロ……


「……来ちゃいました~!」


「おい、早く【テイム】使え!」


「はい~!……【テイム】発動で~す!」


ーピタッ!


ネリルがエンペラー(以下略)に対して【テイム】を発動した瞬間、すぐそこまで迫っていた触手が動きを止めた。


その直後……


「……ヒト……ワタシニ……ナニヲシタ……」


「ふっふっふ!……お願いしますから、私の従魔になってくださぁぁぁぁぁぁぁ~い!」


何をしたと問いかけて来たエンペラー(以下略)に対し、ネリルは恥も外聞もない惨めな懇願を見せた。


「ジュウマ?……ソレデ……ヒトヲ……トカ」


「溶かせません!……寧ろ、人の味方になって貰います!」


「……ダメダナ……ヒトヲ……トカスノガ……ワタシノ……ホンノウ……」


「そこを何とかぁぁぁぁぁ~!」


人を溶かすのが本能……


これもまた、特異個体の特性だ。


……というか、現状確認されている特異個体は例外なく、人を重点的に襲っていた記録があるらしい。


ともかく、これは駄目かもしれない。


普通に価値観が違うし、俺達を溶かす気満々だし……


これは諦めて逃げに専念すべきかな……


そう思った瞬間だった。


「ダガ……オマエ……フシギダナ……」


「ふぇ?」


「ん?」


「……オマエノ……マワリ……アタタカソウダ……」


な、何を言ってるんだ?


暖かそうだって、何が……


……いや待て、念のためコメント欄も覗こう。


・いや、エンペラー(以下略)を従魔化は……ネリルちゃんなら出来ちゃいそうだな……

・元々ユニコーンだった俺でさえ、男とのコラボ配信を見ても素直に応援出来るのがネリルちゃんだぞ?

・説得力あり過ぎwww

・いやマジでそれなwww


……な、何でこの状況で呑気な会話してやがる……


こっちはピンチだってのに……


「……あ、あの~……念のため聞きますが、人ってもう溶かしちゃってます~?」


「イヤ……オマエタチガ……ハジメテ……ワタシノ……デアッタ……"ヒト"ダ……」


「よ、良かった~……もし溶かしちゃってたら、流石に従魔にするのは躊躇しちゃいましたよ~」


「ソウカ……フム……イイダロウ……ジュウマ……ナッテヤル……」


「へぇ~、従魔に~……って、ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ~!?」


「ま、マジか……」


いったい、何が決め手になったのか……


何かよく分からない内に、エンペラー(以下略)がネリルの従魔になる方向で話が纏まりつつあったのだった……

ご読了ありがとうございます。


ネリルは、何故か人や様々な生物から好かれます。


気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。


後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。

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