49.アゼトリーチェの過去
他の自作でアイデアが詰まったので、途中まで書いて放置してたこの話を完成させて更新しました。
(アゼトリーチェ視点)
……私の1番古い記憶は、自分が生まれたダンジョンを彷徨っていた時のものザマス。
「ハラ……ヘッタ……ザマス……」
この時の私はひたすら飢えを感じ、ダンジョン内で同族を共食いする事も少なくなかったザマス。
ただ、それから時間をかけた末にダンジョンを脱出した私は、ダンジョンの場所が荒波に囲まれた離れ小島だった事に絶望しつつも、一念発起して陸地まで泳いだザマス……
「ゴボッ!……コノカラダ……アラナミデハ……オヨギニクイ……ザマス……」
ぶっちゃけ、途中で何度溺れかけた事か……
それでも何とか砂浜へ辿り着いた私は、浜辺で魚を串焼きにして焼いていた3人の漁師と出くわしたザマス。
「おい、ありゃ蛸女じゃねぇか!」
「狩るか?」
「……いや、魔域から出て来る妖魔は大きく分けて2種類。……妖魔雪崩を構成する妖魔か主より強いって噂の業魔かのどちらかだ」
そういえば当時の人間達、スキュラを蛸女、ダンジョンを魔域、モンスターを妖魔、大暴走を妖魔雪崩、ダンジョンボスを主、特異個体を業魔と呼んでいたザマス。
おっと、それはともかく……
「つ、つまりどういうこった?」
「あれが妖魔雪崩の先鋒だろうが業魔だろうが、俺達に勝ち目はねぇ。……奴がこっち来る前にさっさと村に戻って皆を避難させるぞ!」
「「お、おう!」」
ータッタッタッ!
……漁師達はダンジョンの外を彷徨う私を警戒した末、戦わず逃げて行ったザマス。
勿論、私はさっさと逃げ出した漁師達を追いかけようとしたザマスが……
ーぐぅ~
「ハ……ハラ……ヘッタ……ザマス……」
ードサッ!
……飢えによる空腹感に襲われ、私はその場に倒れてしまったんザマス。
「モウ……ウゴケナイ……ザマス……ン?……コノ……サカナ……ウマソウ……ザマス……」
飢えによって危機に陥った私の目の前には、漁師達が残していった魚の串焼きがあったザマス。
……当然、私はそれに手を伸ばし……
「アムッ……もぐもぐ……う、美味いザマス!」
この時、私の知能は一瞬で人並みのものになり、記憶もここからはっきりし始めたザマス。
しかし、良い事ばかりでもなかったザマス。
というのも、それからしばらく後……
「こないだの蛸女、あれから未だに見つかってないんだって?」
「物騒ね~?」
ーざわざわ……
「うぅ……あの魚、とても美味かったザマス……焼いただけとは思えないザマスし、いったいどんな秘密が……」
料理の味に魅了されてしまった私は、愚かにも森の中から人間の集落を呑気に観察し始めてしまったんザマス。
やがて、そうこうしている内に私は人間に愛着を持ち始め、料理の何たるかも分かって来た頃……
「おい、本当に見つけたんだな!?」
「ああ、蛸女が森の中に!」
「絶対に見つけろ!……村に入られたら何人死ぬか分かったもんじゃないぞ!」
「ハァ……ハァ……失敗したザマス!」
「あ、居たぞ~!」
「ひぃぃぃぃぃ!」
「「「「「待てぇぇぇぇぇ!」」」」」
……当然ながら森の中から観察しているのがバレた私は無様にも逃亡を選択し、より深く山の中へと入って行ったザマス。
そして……
「何とか……振り切ったザマス……でも……腹減ったザマス……」
ードサッ!
私は何とか人間達から逃げ切りつつも、空腹で再び倒れる事になったザマス。
この時は周囲に栄養価の高い食べ物もなく、その辺の草花で満たせる程の飢えでもなかったザマス。
まさに絶体絶命、死すら覚悟したザマス。
と、そんな時だったザマス。
「あァ?……何でこんな山奥に行き倒れの蛸女が居るんだァ?」
「荊鬼、その蛸女というのはこの国ならではの呼び名であって、このモンスターの本当の種族名はスキュラですよ」
「スキュラ?……ま、オレからすりゃ蛸女は蛸女でしかねぇなァ!」
「ハァ……もうそれで良いですよ……」
偶然そこを通りかかった当時の荊鬼とミランダが、倒れていた私に気付いたんザマス。
「腹……減ったザマス……美味い料理……食べたいザマス……」
「ふ~ん、海辺で暮らす蛸女が料理となァ……」
「荊鬼、何か変な事を考えていませんか?」
「なァ、こいつ拾っても……」
「またそんな事を言って……以前貴女がそう言って拾った堕骨丸というスケルトン、いつも何処かを彷徨っては強者と決闘をしていると人間共の間で噂になっていますよ?」
「良いじゃねぇかァ……つ~か、それを言ったらミランダが拾ったフライウルとかいう狼男こそ、いっつも壁に向かって淡々と何か喋ってんだがァ?」
「うぐっ!?……か、返す言葉もありませんね」
この時点で、荊鬼とミランダは堕骨丸とフライウルを仲間に引き入れていたザマス。
もっとも、後々の事を考えるとミランダがフライウルを拾ったのは失敗だったザマスが。
とはいえ、当時の私はそれどころではなく……
「お前達が……何者とか……どうでも……良いザマス……何か……食べさせて……欲しい……ザマス」
「……こいつ、相当限界みてぇだなァ」
「荊鬼、確か握り飯を持っていましたよね?」
「……も、持ってるがなァ……ハァ……こりゃ仕方がねぇかァ」
荊鬼が渋々といった感じで出した握り飯。
「あっ……あむっ!……もぐもぐ……」
私はそれに食らいつき、飢えを凌いだザマス。
「お~、良い食いっぷりじゃねぇかァ」
「よほど飢えていたのでしょうね」
荊鬼とミランダは優しい眼差しで私を見守り、私が握り飯を食べ終わるまで待ってくれたザマス。
「ごくん!……に、握り飯ありがとうザマス」
「良いって事だァ!……んな事より、オレ達と来ねぇかァ?」
「荊鬼、本気ですか?」
「本気も本気だァ!……オレ達は迷宮至上教っていうミランダが作った組織に所属してんだが、良かったら……」
荊鬼からもたらされた、迷宮至上教への勧誘。
それに対し、私は……
「待つザマス……その迷宮至上教っていうのは、いったい何をする組織ザマス?」
……冷静に組織の詳細を聞いたザマス。
「何って……そりゃ魔域に細工して妖魔雪崩を起こしたり、業魔を作り出したりだなァ」
「っ!?……だったら、私には無理ザマス。……私は人間に対して、愛着を持ち過ぎたザマス……」
当時の時点で、私は人間の営みに対して愛着を持ち過ぎていたザマス。
だから、勧誘も断った……筈だったザマス。
「う~ん、そうかァ……あ、だったら金庫番の仕事とかどうだァ?……最近はオレ達の暗躍に乗じて火事場泥棒してぇ奴と組む事もあるんだが、手間賃として貰った金銀財宝の類いを管理出来そうな奴がなかなか居なくてなァ~?」
「……………………ハァ?」
荊鬼から提案されたのは、組織の金庫番として所属するという道だったザマス。
「現実的な話をするが、妖魔は人間共の中で生きて行けねぇんだァ。……少なくとも、今はなァ」
「そ、それはそうザマスが……」
「だってのに、お前は人間を殺せねぇと来たァ」
「うぐっ!」
人間と敵対する身の上でありながら、人間を殺せない程の甘ったれ……
荊鬼にしてみれば、かなりの大馬鹿者だったザマショうね。
「……かといって、見捨てるのも何だかなァ……ってな訳だから金庫番で働け、これ決定事項なァ?」
「えぇ……」
こうして私は、荊鬼によって拾われる事が事実上決定したザマス。
「もう、荊鬼はこれだから……」
「何か文句あんのかァ?……ってか、こいつ名前どうすんだァ?」
「見た目の西洋的雰囲気からして、私が名付けるべきなのでしょうが……えっと、アズルトリーチェなんてどうです?」
「もうちっと短く出来ねぇかァ?」
「それならアゼトリーチェとか?」
「ん~、そんなとこかァ?」
アゼトリーチェという名前すら秒で決まり、私は迷宮至上教に拾われたザマス。
「あ、えっと、その……宜しく頼むザマス?」
「おう、ビシバシ頼むなァ?……それと、お前って妖魔としちゃあ何が出来るんだァ?」
「何が……そうザマスね……蛸女の業魔としての固有能力は蛸足を伸ばしたり、全身を巨大化したりって辺りなんザマスけど……」
「それで人間傷付けたくねぇとか、宝の持ち腐れでしかねぇなァ……」
「そんな方に金庫番という大仕事を任せる荊鬼も大概ですけどね?」
「大概で悪かったなァ」
「それ、絶対に悪いと思ってませんよね……」
とまあ、最終的に2人は私を放って話し合いを始めたザマス。
この時の2人は、口では言い合いをしながらも共にお互いを分かり切っている長年の相棒か何かの様な雰囲気を漂わせていていたザマス。
そうして私は荊鬼に流されるまま迷宮至上教に加入。
そのまま金庫番を200年以上も続ける事になったんザマスが……
……その結末がこれって、いくら何でも酷過ぎないザマスか?
そんな文句を言いたくなりながら、私は扉の前で拳を握りしめていたザマス……
ご読了ありがとうございます。
アゼトリーチェ、迷宮至上教に拾われなければ間違いなく死んでいたので、本人も恩義を感じて組織のやり方には賛同し切れずも所属し続けています。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




