35.ドラゴンダンジョン調査 開戦
今回は、他の話より少し長いです。
(早水 勇雄視点)
フレイムドラゴンとブリザードドラゴンをS級探検者2人が倒してから数分後……
「……何か、急にモンスターが出て来なくなったであるな?」
「ほんまやね~」
俺達はフレイムドラゴンとブリザードドラゴンが倒されて以降、全くモンスターと遭遇せずに居た。
『う~ん、そういえば確かにモンスターが少ない様な気がします~』
「だよな?……いったい、何がどうしたって……」
「本当っすね。……まさか、私達以外にダンジョンに侵入した何者かが……」
「だが、七天美ならモンスターを狩る必要はないだろ?……どうなってんだか……」
そんな疑問を抱きつつ、俺達は更に先へと進んだ。
そして数分後、2階層程度進んだ頃だった。
『ん~?……あれ~?』
「ん?……どうかしたか?」
『いえ~。……何か、どんどんスラミーロの分身体が殺られてて~……しかも~、その場所がどんどん近付いて……』
「……いや、それ以上は言わへんでええよ。……多分、目の前に居るんが下手人や……」
「まあ、そうであろうな……」
……ネリルから入った不穏な報せ。
だが、その下手人と思われる人物は既に俺達の前に居た。
「おい……1つ……小生に……聞かせろ……」
その男は、とても異様な雰囲気を纏っていた。
上半身裸で、頭からはボロ布を被り、そして肉体は痩せこけている……
そんな不気味な男だったからだ。
「何者や、あんたは……」
「小生は……迷宮至上教……七天美が1人……"救恤"の……フライウルだ……」
「「「「『っ!』」」」」
やはり、七天美か……
しかも、救恤って困ってる人間を助けるって意味だったよな?
……"謙譲"を冠していた荊鬼こと茨木童子がああだった事を考えると、こいつも正反対の本性なんだろうな。
そう推理していると……
「……で、そのフライウルはんはウチ等に何を聞きたいんや?」
「……ここより……先の階層に……1人の侵入者が……居る……そいつは……お前等の……仲間か?」
「ハァ?……何馬鹿な事を言うてんの?……ここに居るメンバーで全員やし、何より関係者以外は立ち入り禁止の筈や……って、まさか……」
「そう……小生達でも……お前達でもない……第3勢力が……紛れ込んでいる……だが……小生は……お前達を……優先した……何故か……分かるか?」
フライウルは、俺達とは別にダンジョンに入った奴が居るって言ってるが……それは本当なのか?
しかも、そいつを無視してまで俺達を優先したってのも分からないし……
……と、このタイミングで宝実さんは再度口を開き……
「……S級探検者を倒すのを優先したんやな?」
「そうだ……奴は……一撃で倒せたかも……しれない……だが……それでも……お前達の方が……危険だ……」
「慎重やな~。……で、ウチ等と戦うん?」
「当然だ……ダンジョンによる救いを……万人に……そのための……生け贄となれ!」
ーパサッ……
「「「「『っ!?』」」」」
フライウルはボロ布を脱ぎ捨て、改めて俺達と向かい合った。
その直後だった。
「グルルルルル……ワオォォォォォン!」
ーフサフサフサ……ギロリ……
「は、灰色の毛に尻尾……それに顔も狼っぽい形になってるのである!」
「……鬼の次は狼男かいな……」
……そう。
変貌を遂げたフライウルの姿は、何処からどう見ても狼男としか言えないものだった。
「今日は……満月じゃないグルが……それでも……小生は問題ないグルァ!」
ーフッ……
「危ないで!」
ーカァァァァン!
狼男に変貌を遂げたフライウルが一瞬だけ見えなくなったかと思えば、次の瞬間には宝実さんの下駄とフライウルの爪が衝突していた。
「ほう……これを……防ぐとはな……」
「うっ……目視や監視カメラに補足されん速度での高速移動かいな……それで監視の目を掻い潜ったっちゅう訳やな?」
「そうだ……だからこそ……驚いているグル……」
「S級探検者、舐めんといて欲しいわ」
ぶっちゃけ、俺は何も見えなかった。
……これが、七天美の実力だとでも言うのか……
そう現実逃避していると……
「……まあ良い……ここでお前等を倒し……奴の力でダンジョンによる救いを……万人に……」
「奴?……まさか、もうドラゴンダンジョンの特異個体を生み出したんか!?」
「勿論……1ヶ月以上も……あればな……」
「1ヶ月以上……そんな前からかいな……」
これは非常にマズい。
1ヶ月以上かけて作られた特異個体が、この先の階層に居る……
つまり、対応が完全に後手に回っているのだ。
「だから……大人しく……ダンジョンによる救いを……享受しろグルァ!」
ーシュ!シュ!シュ!シュ!シュ!シュ!
「やらせへんで!」
ーカン!カン!カン!カン!カン!カン!
フライウルが見えない速度の攻撃を出すのと同時に、宝実さんは足を高速で動かしてフライウルの攻撃を受け止めていた。
そして……
「くっ……小癪な……」
「生憎やけど、先に送らせて貰うで!」
「……である!」
ーブンッ!……スカッ……
フライウルが宝実さんとの攻防に集中している場面で、マッドフラワーがフライウルに横槍を入れた。
フライウルは回避するも、宝実さんとマッドフラワーの目的はその"隙"だった。
「小生は……この程度で……負ける程……」
「じゃ、先に行かせて貰うのである!」
「行かせて貰うっす!」
『行かせて貰います~!』
ータッタッタ!
「むっ!?」
ーフッ
「あんたの相手はウチや!」
ーカァァァァン!
「チッ!」
一瞬の"隙"でマッドフラワー、火毘輝、そしてネリルが操作するスラミーロの分身体……いや、分裂体だったか?……まあ、その3人?が無事に通り抜けた。
フライウルはすぐに追い付こうとするも、宝実さんに防がれた。
「……って、勇雄はんは何で残ってるん!?」
「いや、合図も何もなかったから……」
「マジかいな……」
……どうも、俺もマッドフラワーと一緒に行くべきだったらしい。
これ、俺はちゃんと無事に生還出来るのか?
そんな事を考えながら、俺は宝実さんとフライウルの勝負に巻き込まれない様に最大限の警戒を始めるのだった……
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(数分後、大豪寺 泥花視点)
「ハァ……ハァ……この階層の終わりは何処にあるのであるか!?」
『こ、この先です~!……でも、次の階層から何か変な気配をスラミーロが感じてます~!』
「……まだ最下層じゃない筈である!……となると……」
「特異個体っすね!」
勇雄と宝実を置いて3人……3人?でここまで進んだであるが、まさか次の階層に特異個体であるか……
「……ああ、階段が見えて来たのである!」
「わぁ……ドラゴンでも上がって来れそうな階段っすね……」
余計な事を言わないで欲しいのである!
……とまあ、そんな会話もしつつ階段を下りると……
「む?……侵入者か?」
「「『っ!?』」」
階段を下りた先の通路に、巨大なドラゴンが鎮座していたのである。
そのドラゴンは全身が輝く程に真っ白であり、背中の翼は蝙蝠のタイプではなく天使を思わせる真っ白な鳥の様なもので、更に頭の上には天使の輪を思わせる光輪が浮遊していたのである。
「我が名はホーリーゴッドドラゴン……この迷宮で生まれし特異個体なる存在にして、地上の新たな神となる者だ。……貴様等の様な雑魚、我の眼前に立つのも烏滸がましいな……」
そう呟くホーリーゴッドドラゴンなるモンスターは、とてつもなく尊大で傲慢だったのである。
「……こいつを倒せば、少なくとも奴の野望は潰えるのである!」
「なら、倒す1択っすね!」
『頑張ります~!』
そうして吾輩達は、このホーリーゴッドドラゴンに立ち向かったのである。
だが、こいつが過去最高の難敵だとは……この時の吾輩は知らなかったのである……
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(金村 風斗視点)
「……おや、ここは最下層じゃないですか。……どうも、ボクの運は悪かったらしいですね……」
このダンジョンは入り組んでいる上、次の階層に行く階段も1つの階層に複数あります。
なので、何処かで入れ違いになったのでしょう。
それはさておき……
「ガハハハハ!……シンニュウシャ……タオス!」
「……あなた、本当にダークカイザードラゴンですか?……それにしては、やけに神々しい様な……」
聞いた話では、ダークカイザードラゴンは王冠の様な角と首回りに襟巻きを持つ紫色の巨大なドラゴンだった筈です。
しかし、ダンジョンボスとして鎮座しているその竜は、寧ろ全身が真っ白で……
「ダークカイザードラゴン、チガウ!……ホーリーゴッドドラゴンサマニ、チカラ、イタダイタ!」
「あれま、厄介な強化を受けたんですか……」
となると、無視も出来ませんね……
「イマノヨ、ホーリーカイザードラゴン!……ホーリーゴッドドラゴンサマノタメ、ニンゲンハコロスカゲボクニスル!」
「……厄介な使命感まで芽生えてますね……」
もはや、こいつは王ではありませんね。
「カクゴシロ、シンニュウシャ!」
「覚悟してください、下僕に成り果てた王!」
こうして、ボクとダークカイザードラゴン改めホーリーカイザードラゴンの勝負が幕を開けたのでした。
それにしても……面倒そうな相手ですね……
ご読了ありがとうございます。
フライウル、ホーリーゴッドドラゴン、ホーリーカイザードラゴン、それぞれを相手に各々はどう戦うか。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。
 




