30.帰路の雑談
流石に1話ごとに他の作品ってのは効率が悪いので、キリの良い所までこの作品を更新する事にします。
……まあ、更新頻度は不定期ですが。
(早水 勇雄視点)
「じゃ、バイバイっしょ!」
「さよならですわ」
「お疲れ~」
「あ、ああ……」
「皆、また今度なのである!」
食事会を終え、店の前で解散した俺達5人は、それぞれの帰路についた。
「……何か、我の強い人達だったな……」
「まあ、吾輩の幼馴染みであるからな!」
……俺はその言葉に納得しちまった。
いやまあ、我の強い奴の幼馴染みが必ずしも我が強い性格って訳じゃないだろうが……
「それじゃあ、俺は帰らせて……」
「あ、吾輩も勇雄の家に同行するのである!」
「いや何でだよ」
「駄目であるか?」
いくら付き合ってるからって……
でも、無下にするのもなぁ……
「……分かった。……一緒に帰ろう」
「それで良いのである!」
ハァ……
つくづく俺は恋人に弱いなぁ……
「……にしても、結局俺はあの人達の目にはどう写ったんだろうなぁ……」
「普通に好感触だったと思うのである!」
「なら良いんだが……それとマッドフラワーが最初にした3人の紹介もどうかと思うぞ?……特に炎麗さんは復讐鬼って割には理性的だったし……」
「あんな態度、幼馴染みの食事会でしか見れないのである。……普段は狂った様に、自身の兄を殺した仇を探しているのである!」
え、そうなのか……
そうは見えなかったが……
「い、意外だな……」
「……炎麗なりの気遣いであるよ。……殺された炎麗の兄も、生前は毎年食事会に出席してたであるし……」
なるほどなぁ……
殺された兄が毎年楽しんでいた食事会だけでも、心から楽しもうとしてたって訳か……
「……そういや、その仇って何なんだ?……ダンジョンのモンスターか?……それとも人間の犯罪者だったりする感じか?」
ダンジョン外は勿論だが、ダンジョン内でも人間に殺される事はある。
そして、そういった事件はよく迷宮入りしがちだ。
何せ、ダンジョンで殺された存在はダンジョンに接した状態で一定時間以上回収されないと、ダンジョンに吸収されちまうからだ。
遺体は勿論、証拠品すら残らない。
遺体が見つからず事件化しない事もよくある。
……と、ここまで考えたところでマッドフラワーが口を開いて……
「……最近まで、状況証拠では前者、炎麗の証言通りでらば後者だと思われていたのである……」
「ハァ?……どういう意味だ?」
状況証拠ではモンスターで、炎麗さんの証言通りなら人間の犯罪者?
い、意味が分からないんだが?
「……炎麗が言うには、炎麗の兄……つまり炎優を殺した相手は人間だったらしいのである。……ただ、炎麗が何とか持ち帰った炎優の遺体にあった傷からは悪魔種モンスターの魔力だけが見つかったらしいのである……」
「ん?……矛盾してないか?」
人間が何かを魔法で殺した場合、殺された側の傷から殺した側の魔力が検出される。
魔力は指紋やDNA等と同じく、個人個人で微妙なバラつきがあるため、こういった犯罪で指紋やDNAと同じく犯人を探るのに大きく役立つ。
だが、その魔力が悪魔種モンスターを示した場合、犯人は悪魔種モンスター以外にはあり得なくなる。
「一応、誰かが悪魔種モンスターを使役していた可能性も考えられたであるが……その場合も使役していた人間の魔力が混ざるであるし……」
「わざわざ魔力検査が用いられたって事は、刃物や鈍器を用いた犯罪じゃなかった訳だろ?……なら、この事件は悪魔種モンスター以外に犯人は……」
「ただ、この2つが矛盾しない仮説……いや、もう殆んど事実が、最近明らかになったのである」
「どういう事だ?」
人間と悪魔種モンスターは全くの別物だぞ?
それを矛盾せずに両立させるなんて……
「……炎麗が、犯人を人間と似た見た目をした個体が多い悪魔種モンスターではなく、人間だと判断したのには2つの根拠があったらしいのである」
「2つの根拠?」
「1つは、言葉が流暢だった上に会話が成立していた事。……並の悪魔種モンスターなら、喋っても会話として通じない戯言だけである!」
「だとしても、特異個体ならその限りではないだろ?……あいつ等、成長したら普通に会話を……」
「それで2つ目の根拠であるが……犯人は、とある組織の名前を出して自身がそこの幹部であると言っていたのである」
「組織?……って、まさか……」
確かに、それなら悪魔種モンスターの魔力しか検出されなかった事も、炎麗さんが犯人を人間だと思った事も辻褄が合う。
少し前まで、特異個体のモンスターが組織に所属するなんて考えられなかっただろうしなぁ……
そして、答え合わせとばかりにマッドフラワーが告げたのは……
「……迷宮至上教、それが犯人の出した組織の名前である……」
「……やっぱりか……」
やはり、犯人は迷宮至上教の一員だった。
しかも、特異個体のモンスターとなると……
「多分、犯人は七天美の内の誰かであるな。……とはいえ、当人が悪魔種なのか、悪魔種のモンスターに殺らせたのかは未だに分かっていないであるが……」
ん?
悪魔種のモンスターじゃないのか?
「……どうして七天美が悪魔種のモンスターで確定じゃないんだ?」
「それは……その事件が起きたのが、長崎にあるデビルダンジョンだからである。……そこで炎麗と炎優は、悪魔種モンスターの特異個体を引き連れた何者かと出くわしたのである」
「……確かに、よく考えれば悪魔種モンスターから付けられた傷が受け入れられてる時点で、ダンジョンは悪魔種モンスターが出るデビルダンジョンか……」
それにしても、長崎のデビルダンジョンって少なく見積もってもA級ダンジョンだったよな?
……そこの特異個体とか、考えたくもないな……
「……結局、炎優が正体不明の人物を、炎麗が悪魔種モンスターの特異個体……炎麗曰くメフィストフェレスと名乗っていたそれを担当する事になったのであるが……結局、両者1人ずつ死んで痛み分けという結果になったのである……」
「そうか……」
メフィストフェレス……
結構ビッグネームの気がするんだが……
この世界じゃその限りじゃないのか?
とか思っていると……
「……あ、その顔はメフィストフェレスってビッグネームが日本のデビルダンジョンで生まれた事を疑問に思っている顔であるな?……基本、悪魔種モンスターは死んでも、数百年後に別のダンジョンから同一名称の個体が誕生するのである。……もっとも、そのレベルの悪魔が誕生する事は滅多にないであるが……」
「そ、そうなのか……」
「まあ、一般人は知らない事であるから、知らなくても恥ずかしくないであるよ?」
「……そんな情報を俺が聞いても良いのか?」
……とにかく、それでメフィストフェレスか……
「話を戻すであるが、そういう訳で炎麗は兄の仇を求めて探しているって訳である!」
「ちなみに、他に手がかりはないのか?」
「う~ん……さっきの組織名も、炎麗がメフィストフェレスと戦っている間に聞こえて来た炎優と犯人の会話を断片的に聞いただけであるし……名前は炎麗も聞き取れてないらしいんであるよ……」
「それは残念だったな……」
名前が分かれば、そいつが今も七天美に居るのか分かったんだがなぁ……
「でも、手がかりがない訳ではないのである!」
「……というと?」
「そいつの見た目が、かなり特徴的だったらしいのである。……というのも、そいつはシスターみたいな服装をした女性だったらしいのである!」
「シスターかぁ……」
特徴的と言えなくもないが、もうちょっと何かないのか……
いや、あったらとっくに見つけてるか……
「……吾輩としても、炎麗の復讐は手伝ってやりたいんであるが……炎麗自身が1人でやるって言って聞かないんであるよ……」
「……復讐系の物語の登場人物もそんな感じだが、そういう奴等の末路って大抵悲惨だろ?」
「だから、心配なんであるよ……」
「……そうか……」
そんな会話をしながら、俺達は俺の家に向かっていたのだった。
しかし、俺としては……炎麗さんが復讐を成し遂げられる事を祈るばかりだった。
ご読了ありがとうございます。
炎麗の話は、次の章でやります。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




