29.幼馴染み達の食事会 閉幕
ほんと、何で無期限休止表明した途端にアイデア湧くんでしょうね……
(早水 勇雄視点)
「じゃ、とりまこっからは雑談タイムっしょ!」
俺が泥花と付き合う事に対する話が終わったと同時に、翔悟さんが雑談タイムの開始を宣言した。
「何の話をするつもりですの?」
「ぼかぁ話のネタがないですね~……」
「翔悟が勇雄と交流を深めたいと思うのは分かるであるが……」
「あ、俺との交流が目的だったのか……」
まあ、確かに妹分の彼氏とは交流を深めときたいよなぁ……
とか考えていると……
「……突然でごめんだけど、勇雄チャンのスキルってジャストガードした攻撃を無効化するって認識でOK?」
「いや、本当に突然だな……まあ、一応その認識で合ってはいるが……」
「ふ~ん……それでオーガの特異個体を倒せたって凄くね?」
「銃を覚える前だったから通用しただけだ。……とはいえ、一応ゴブリン程度の動きまでなら対応可能だな」
オーガがゴブリンより鈍かったから対応出来ただけなんだよな……
「ま、素早い敵には対応出来ないって考えたらそこまでぶっ壊れスキルじゃなさそうっしょ」
「そうですわね……ただ、タンク役としては充分な逸材ですわ」
「協会が欲したのも分かるってものですね~」
……俺としては、あまり危険なダンジョンに潜りたくないんだが……
まあ、こんなスキル持ってる奴が居たら危険なダンジョンに放り込むのも分からんでもないんだよな……
そんな事を考えていると……
「……なら、次は俺チャン達のスキルを教える番っしょ!」
「え、教えて貰えるのか?」
「いやいや、普通なら俺チャン達の配信を見たら分かる話な訳よ?……一応、泥花チャンから事情は聞いてるけど……」
「そ、それもそうか……」
あくまでも俺が見ていないだけで、知ろうと思えば知れるもんな……
「じゃ、まずは俺チャンから言うっしょ。……俺チャンのスキルは【素手死合】って名前で、まあ自分と相手に殴り合いを強制させるスキルな訳よ!」
「……え、それだけ?」
それ、要は相手に殴る以外の選択肢を与えないって事なんだろうが……自分も対象って外れじゃないか?
「あ~……勇雄、これでも翔悟は殴り合いでモンスターと互角……いや、普通に圧倒して勝てる程の実力があるのである……」
「な、なるほど……」
うん、この件はこれ以上詮索しない方が良さそうだ。
じゃないと、俺の常識が壊される。
「では、次は私ですわね。……私のスキルは【業火の騎士】といって、攻撃に強力な炎を付与する事が出来る上、その炎は感情が昂れば昂る程強くなるんですのよ」
「お、おぉ……王道に強力なスキルだな……」
翔悟さんのスキルとは反対に、炎麗さんのスキルは王道に強そうなスキルだった。
しかし、その考えも次の瞬間には吹き飛んだ。
「……そうは言いましても、今となっては怨嗟の炎を撒き散らすだけのスキルと化していますわ……」
「……え?」
怨嗟の炎?
あ、そういや最初に復讐鬼とか言ってたな……
「私のスキルは、昂る感情によって炎の燃え方も変わるんですの。……そして、怨嗟で燃え盛る私の炎は、周囲を無差別に燃やすだけの炎と化して……」
「そ、それ以上は言わなくて良い……」
詳しい話は知らないが、俺が深入りすべき事でないのは分かる。
「……ふむ……さて、最後は宗則ですわよね?」
「あ~……うん。……ぼかぁ、【未来予測】ってスキルを持ってるんですが~……まあ、簡単に言えば未来を予測出来るスキルですね~」
「未来を予測……って、滅茶苦茶当たりスキルなんじゃ……」
未来を予測出来るスキルとなると、相当ヤバいだろうな……
……あれ?
でも宗則さんはB級探検者の筈じゃ……
それに、配信で使ってる場面なんて知らないし……
「……あくまでも予測ですから、不確定要素が入ると一気に予測が外れる欠点がありましてね~。……それを抜きにしても、予測が出来たからって悪い未来を必ずしも回避出来る訳でもないんですよ~。……というか、予測した悪い未来を回避するにしても何をどうすれば回避出来るか分かりませんしね~」
「た、確かに……」
そういや、よく見かけるタイムリープ系の小説や漫画も、主人公視点じゃ何がどうなってそうなったかよく分かってない場面が多いしな……
予測可能=回避可能って訳じゃないって事か。
「ちなみに余計なトラブルも起こしそうなので、基本的にぼかぁスキルは公表してないんですよ~」
「それで配信じゃスキルを使ってないのか……」
「ま、そんな感じですね~」
「……何かはぐらかされた気もするな……」
とにかく、これで3人全員のスキルを聞き終えた訳だが……
これ以上は下手に聞かない方が良さそうだな。
と、そうこうしていると……
「皆さん、お待たせしましたアル~!」
「お、前もって注文してた料理が来たっしょ!」
チャイナドレスを着た女性店員が、小籠包や回鍋肉、フカヒレやツバメの巣といった中華料理を運んで来たのだ。
……見るからに高そうだが、本当に俺は支払わなくて良いのだろうか……
「勇雄、余計な事は考えずに食べるのである!」
「そ、そうだな……」
……とまあ、そんなこんなで俺達は中華料理を食べ始めた。
なお、食事中は全員黙々と料理を食べていて会話がなかった上、俺は俺で高級料理に緊張して味がよく分からなかったのだった……
そして十数分後……
「ぷは~っ……ご馳走さまっしょ!」
「美味でしたわ」
「また皆で来たいですね~」
「そうであるな!」
「……うっぷ……」
た、食べ過ぎた……
滅多に食えないからって、あんまり無茶するんじゃなかった……
「だ、大丈夫な訳?」
「大丈夫であるか?」
「な、何とか……」
翔悟さんと泥花に心配かけちまった……
……ん?
何か炎麗さんが寂しそうな表情を浮かべてるな……
「……ここにお兄様も居れば、どれだけ良かった事か……残念ですわ……」
「炎麗チャン……でも、炎優チャンが居ればってのは同感っしょ」
炎優さん……会話の流れから考えて、炎麗さんの兄ってところか……
……宗則さんの配信にあったコメントが本当なら、もう死んでるんだよな……
「……炎麗、復讐にしか興味がないお前がこのメンバーでの食事会に毎回出席するのは……炎優と関係があるのであるか?」
「……そこまで深い意味はありませんわ。……ただ、お兄様なら出席した……それだけですわ……」
「「「「……………」」」」
炎優さんがどんな最期を迎えたのかは分からない。
それでも……その人の存在がこの4人の中で重要な存在であるのは、紛れもない事実なのだと確信出来た。
「……さ、支払いして帰るっしょ……」
「そうですわね……」
「4人で割り勘ですね~」
「そうであるな!」
「……いや、やっぱり気になるんで俺も支払わせてください……」
結局、奢られる事に耐えられなかった俺も金を出す事にしつつ、この食事会は幕を閉じたのだった……
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(俯瞰視点)
「……今日をもって、この世界線についての充分な知識は得られました。……これでボクも本格的に動けますね……」
そう呟いたのは、白と黒のツートーンカラーが特徴的なボーイッシュヘアーの女性だった。
年齢が20歳前後に見える彼女は、白いローブを羽織り静かに路地裏を歩いていた。
「かつて父上と母上も相対した存在……ラビリンスの兄弟機がこの世界にも居る事は確認済みですが……最も怪しいのは迷宮至上教とかいうカルト教団が崇める迷宮神でしょうか……」
女性はそんな事をブツブツと呟きながら歩いていたが、やがてゆっくりと足を止めた。
「……まあ、敵が何であれボクは屈しません。……この金村 風斗の人生に、"敗北"の2文字はあり得ないのですから……」
自身に言い聞かせる様にそう呟いた女性こと金村 風斗は、再び何処かへと歩みを進めたのだった……
ご読了ありがとうございます。
作者の別なろう連載作品とのクロスオーバー要素も入れました。
気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。
後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




