28.幼馴染み達の食事会 開幕
最近はもう、アイデアは湧くものではなく降ってくるものだと思う様になりました。
(早水 勇雄視点)
あの配信巡りの数日後……
「勇雄、今夜って予定は空いてるであるか?」
「え?……いきなりどうした?」
あの配信を見た日以降、なかなかマッドフラワーと会えていなかったんだが……まさか、会った瞬間に予定を聞かれるとは思わなかった。
ちなみに、今は俺の家の玄関で話してたりする。
「……実は今夜、幼馴染みとの食事会が開かれるんであるが……」
「ああ。……そういや、あの佐屋木原チャンネルの投稿者もそんな事言ってたな……」
「っ!?……勇雄、もしかして宗則の配信を見てるんであるか!?」
「あ、宗則って名前なんだな……」
別にそこまで気になってた訳ではないとはいえ、思わぬタイミングで名前を知る事になったな……
「そうであるな。……フルネームは佐屋木原 宗則で、自由気ままな遊び人である……」
「へ、へぇ……って、そういやマッドフラワーと対等に話してくれる男って俺と翔悟さんだけって言ってなかったか?」
以前聞いた話だと、マッドフラワーと対等に話してくれる男は俺とあの翔悟ってハーレム野郎だけだった筈だ。
少なくとも、佐屋木原 宗則とかいう名前は完全に初耳だったりする。
「あ~……どうも宗則との間には心の壁を感じるんであるよ。……というか、そもそも炎麗と宗則は翔悟の友達って感覚であって……分かりやすく言えば、"友達の友達"って感じであるな!」
「なるほどなぁ……」
マッドフラワーにしてみれば、宗則って人と炎麗って人は交流が薄いらしい。
ただ、炎麗……さんはS級探検者らしいし、宗則……さんよりは交流があると思いたいなぁ……
「とにかく話を戻すであるが……今夜の食事会、同席してくれないであるか?」
「別に良いが……あ、確か宗則さんは翔悟さんの結婚祝いもするとか言ってたな……そっちの奥さんも来る感じか?」
「いや、葵さん含め翔悟の嫁は誰も来ないであるな!……どうも、葵さんは仕事が入っちゃったらしいのである!」
「そ、そうか……」
つまり、幼馴染み4人組に俺1人で混じる事になるのか……
気まずいってもんじゃねぇぞ……
「じゃ、夕方6時になったら迎えに来るのである!」
「分かった。……ところで、その幼馴染みってどんな奴等なんだ?」
流石に何も聞かずに行くのは厳しいからな……
だが、マッドフラワーから返って来た言葉は……
「う~ん……性格の良いチャラ男と、復讐鬼な令嬢と、自由気ままな遊び人……であるな……」
「も、もっと詳しく教えてくれないか?」
「そうは言うであるが……基本的に、翔悟と宗則はこれ以上知っておく情報はないであるし……炎麗の事はプライバシー的にあんまり口外しない方が良いであるし……」
「……なら無理に言わなくても良い。……とはいえ、食事会本番で俺が失言しそうになったらフォロー頼む」
「勿論であるぞ!」
こうして俺は何も分からぬまま、マッドフラワーとその幼馴染みが開く食事会へと行く羽目になったのだった……
そして夕方の6時、迎えに来たマッドフラワーに連れられて訪れた店は……
「け、結構高級そうな中華料理屋だな……」
「まあ、S級探検者って金だけは有り余ってるであるからな……」
……とある繁華街に建てられていた、高級店と思われる中華料理屋だった。
「えっと、これ俺も料金払った方が良いか?」
「いやいや、勇雄は客人であるから、料金については考えなくて良いであるよ」
「……彼女とその幼馴染みに奢られる彼氏って何なんだろうな……」
ぶっちゃけ、俺の所持金じゃこんな高級店の支払いは厳しいだろう。
それこそ、冗談抜きに銀行の通帳から0が幾つか消える。
と、そんなしょうもない事を考えながら店に入った俺は、そのままマッドフラワーの後を追ってとある個室に辿り着いた。
「……勇雄、着いたであるぞ!」
「ん?……あ、もうか……」
考え事をしていると、時間が思っているよりも早く過ぎちまうんだよな~。
そんな事を呑気に考え……もとい現実逃避しながら、俺達は個室の扉を開けた。
そして、そこに居たのは……
「……ふ~ん、君が泥花チャンの彼氏な訳?」
「……何度見ても凡庸ですわね……」
「……でもでも、ぼかぁ好感が持てますね~」
1人は細マッチョな金髪チャラ男。
1人は真紅の長髪とつり目が特徴的な女性。
そして最後の1人は茶色の短髪に黒のヘッドホンを乗せ、目を黒のサングラスで隠した男性。
……まあ、何とも濃い面子だった。
「えっと、それじゃあ俺チャンから……俺チャンは金山 翔悟っしょ!」
「私は火神 炎麗ですわ……」
「ぼかぁ佐屋木原 宗則っていいます~」
金髪チャラ男が金山 翔悟、女性が火神 炎麗、そしてヘッドホンとサングラスの男性が佐屋木原 宗則って事か……
「そ、そうですか……あ、俺は早水 勇雄って名前で世界ダンジョン管理協か……」
「ストップっしょ!……その肩書きはここに居る全員が知ってるッしょ!」
「……要は、閑職という訳ですわよね?」
「ほんと、嫌な役回りを押し付けられたって感じですね~」
「ははは……そ、そうですね……」
何というか……
この中じゃ、翔悟……いや、翔悟さんが1番話しやすそうだな……
炎麗さんはずっと目付きと声色が怖いし、逆に宗則さんは掴み所がない……
マッドフラワー、こんな状況で俺はどうすりゃ良いんだ!?
と、その直後……
「とりま、勇雄チャンはそんなに畏まらなくて良いっしょ!」
「あ、ああ……分かった……」
「……で、炎麗チャンはあんまり勇雄チャンを怖がらせない様にするっしょ!」
「……分かりましたわ……」
「宗則チャンは……好きにするっしょ……」
「……諦めないでくださいよ~……」
どうも、翔悟さんはこの中じゃリーダー的ポジションに居るらしい。
いやまあ、25人の嫁が居るんならそういうポジションに納まる器があってもおかしくはないが……
……っと、あんまり考え事に集中し過ぎるのもよくねぇな。
「……じゃ、楽しく歓談でもするっしょ!」
「するのである!」
「……生憎、私は話のネタがありませんわ……」
「そ~いや、最近オイルトードの油が高値で取引されてるってぼかぁ聞きましたね~」
「へぇ~……でも、トード系は殴り加減が難しいからあんまり狩らないっしょ……」
「吾輩、モンスターは両断しちゃうであるから……」
「……同じくですわ……」
「……へ?……S級探検者ってこんなのしか居ないんですか~?」
……中身が有るのか無いのか分からない会話を聞きながら、俺は話を切り出すタイミングを探し続けた。
そして、4人の会話が途切れたタイミングで……
「あのっ!……今回、俺はマッドフラワー……泥花とお付き合いを始めさせていただいた訳ですが……お三方は、特に反対とかしないんですか?……特に翔悟さんと宗則さんにとって、泥花は子供の頃からの付き合いだった女性な訳ですし……」
畏まらなくて良いと言われた筈なのに、俺は畏まった言い方でそう告げていた。
……もし、翔悟さんと宗則さんがマッドフラワーこと泥花に好意を持っていたら……俺は邪魔者でしかないだろう。
しかし、当の2人は気にする素振りを見せず……
「俺チャンから見たら、泥花チャンも炎麗チャンも妹みたいな相手っしょ。……だから勇雄チャンが泥花チャンと付き合っても、横取り野郎だなんて思わないっしょ!」
「ぼかぁ昔ながらのお淑やかで品のある女性の方が好みでしてね~。……その点で言わせて貰うと、泥花ちゃんも炎麗ちゃんもタイプじゃないですね~」
「……どうして2人とも、私を含めたんですの?……まあ、私から言える事は何もありませんが……」
「……そ、そうか……」
結局、翔悟さんも宗則さんも泥花を狙っていた訳ではなかったらしい。
……俺の考え過ぎだったか。
とか何とか思っていると……
「……ま、それはそれとして妹の彼氏に相応しいかはこの先の活躍を見て判断させて貰うっしょ!」
「あ、面倒な兄的ポジションみたいな事は言うんだな……」
「当然っしょ!」
「……なら、どうにかして認めさせるだけだな……」
こうして俺は、今後の活躍を翔悟さんに逐一確認される事になった。
さて、食事会はまだ始まったばかり。
この先、どんな事を聞かれるのか……
それは目の前の3人……いや、泥花も入れて4人だけが知っているのだろう……
ご読了ありがとうございます。
次の更新は……いつになるやら。
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