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26.商人の回想と死者の行く末

今話の後半では、あのキャラが再登場です!

(銭羽 宝実視点)


ウチは、産まれた時から商人になる事を運命付けられとった。


「おぉ、宝実か……じいじはお前が銭羽商会の会長になる日が待ち遠しいぞ……」


何せ、ウチが物心ついた時から祖父の口癖はこれやったからなぁ。


ちなみに、この時祖父は既にウチの父に会長職を譲って隠居しとった。


「ウチは……ううん、何でもない……」


ウチの将来が決まっとる事に対して、思う事は確かにあった。


せやけど、それを口に出す程愚かでもなかった。


それにウチには商人としての才能があった。


「……これは売れる、こっちはもう少し先やなぁ……あ、これは急いだ方が良さそうや!」


物が売れるタイミングや、どういった商品に需要があるか……それを、ウチは直感で当てまくったんや。


すると当然の如く、ウチを未来の商会長にしようとする動きが各所で活発になって行ったわ……



それでも何だかんだ何事もなく年月は過ぎて、ウチが大学を卒業した日……


「宝実、お前に会長職を譲る事にする」


「ハァ!?……ちょい待ち!……普通、そういうんってある程度下積みを経験させた上で……」


「これは決定事項だ。……私だって、父の様に悠々自適な隠居生活を過ごしたいんだ!……それに、お前の能力なら会長職だってこなせるだろ」


「堪忍してぇな……」


そうして、ウチが銭羽商会の会長になるのが決定してもうた。


この決定はウチ自身、その判断を覆せる否定材料を見つけれんかったのが敗因やろな~。


「……あ、そうそう。……最後に1つだけアドバイスだ。……結婚相手は、商売関係なく自分が良いと思った相手とするんだぞ?」


「ん?……寧ろ、商人なら利益重視の政略結婚上等とちゃうん?」


「普通の商人ならな。……だが、銭羽家直系の人間は、個人の商売で莫大な財産を生み出せる。……わざわざ政略結婚などしなくともな」


「な、なるほどなぁ……」


そうやとしても、それが自由恋愛OKになる理由って何なんや?


「……だが、だからこそ……生涯の伴侶は自身が心から愛する者でなければ……やっていけなくなるのだ」


「どういう意味や?」


「……この商売は他者を疑い続ける必要がある。……そんな中で、私生活まで気を張らせ続けたらどうなるか分からぬ程、馬鹿ではあるまい」


「……やっと言いたい事が分かったわ」


要は、家庭の中でくらい気を張らんでええ相手を見つけろって事かいな。


……言い方が回りくどいわ!


「……それと前々から宝実に聞きたかったんだが……そのエセ関西弁はどうにかならんか?……いくら私の美しい妻……つまり宝実の母が関西の人間で関西弁を喋っているとはいえ、私の言葉遣いと混ざってエセ関西弁となったその言い回しは最早胡散臭さしか……」


「別にええやろ!」


……寧ろ、この胡散臭さをものともせんかった人の方が信用出来るわ!


「そ、そうか……では、私と妻は早速熱海の別荘に居を移すとしよう!」


「好きにしてぇな……」


そうして、父と母は熱海の別荘に引っ越して、ウチが商会長の座を引き継ぐ事になったんやった……



「……なんて事もあったなぁ……」


ーカランコロンカランコロン……


ウチは勇雄はん達の特訓に付き合った帰り道、過去の事を振り返っとった。


理由は単純。


「……勇雄はん、やっぱりおもろいわ~。……ウチより弱いってちゃんと自覚した上で折れへんってのが特に気に入ったわ~」


かつて父から言われた、好きになった相手を生涯の伴侶にしろっちゅう言葉……


今なら、その意味が分かるかもしれへん。


「ま、そうは言うてもまだ気に入っただけやけどな」


ウチはあの2人程、甘くはないで?


せやけど……落とせるもんなら落としてみぃ!


……この場に居ない勇雄はんに対する宣戦布告を内心でついとるウチって、やっぱ痛いかな?


「……そもそも、勇雄はんがウチに惚れるかどうかすら分かっとらんのに……いや、確かにウチは胡散臭いけど、死後地獄行きになる様な事はしてへんし大丈夫やろ!……まあ、あの世があったらの話やけど……」


そんな事を呟きながら、ウチは銭羽商会本店への帰路についたんやった。


……にしても今残っとる仕事、今日中に片付けなあかんのは分かっとるけど……やるん考えたら憂鬱過ぎるわ~……



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(??視点)


……ハァ……


今日も今日で嫌になるなァ……


「おい、さっさと前に進むでガンス!」


「あいあい……あァ、あれが噂に聞く三途の川かァ」


オレは今、俗に言う死後の裁判ってのを受けてる最中だった。


いやァ、まさかあの世が存在したとはなァ!


しかも知性を有するモンスターすら対象で!


……って、オレは誰に語ってんだろうなァ。


「ハァ……にしても、また知性を有するモンスターでガンスか……最近多いでガンスが、お前はその中でも特に強そうでガンスな~!」


「ま、伊達に千年以上生きてないからなァ!……かつて京の都で暴れたオーガ、茨木童子(・・・・)ってのはオレの事よォ!」


オレとはまた違った感じのオーガらしき奴にオレの素性を明かしつつ、そいつの案内に従って先へと進む。


「茨木童子って……ああ、あの問題児が生前妻にしてたって奴でガンスか……」


「っ!?……おまっ、まさか酒呑童子様を知ってんのかァ!?」


「へ!?……ああ……そいつならここ千年、地獄で暴れまくってるでガンスよ。……最近はもうそいつの近くに他の罪人霊を配置して暴走に巻き込むって刑罰が実施され始めたぐらいでガンスし……」


「……酒呑童子様は相変わらずとして、地獄側も積極的に利用する辺り狂ってんなァ……」


酒呑童子様なら地獄でも元気にしてるって思ってたが、まさか地獄側もそれを刑罰に利用するとか狂ってんだろォ……


「……さて、49日かけてあの世の裁判を受ける訳でガンスが……お前、第1裁判所の判決は地獄行きだったらしいでガンスね」


「……当然だろうなァ。……寧ろ、こっから地獄行きを宣告され続けると思ったら憂鬱だぜ……おい、さっさと地獄に落とせねぇのかァ?」


「無理でガンス!……いくら形式的なものだとしても、こればっかりはどうにもならないでガンス!」


あァ、これだからお役所仕事ってのはァ……


似た様な見た目でも、片や犯罪者、片や公務員って構図かァ……


「……でもまァ、死後の世界があるって分かっただけでも充分だァ……これなら、あいつ等が死んでも終わりって訳じゃねぇしなァ」


フライウルは……あいつは駄目だろうなァ。


悪の組織において、自分を善だと思い込んでる悪は切り捨てられるだけだァ。


ミランダは……また一緒に馬鹿な事してぇなァ。


何だかんだ1番付き合い(なげ)ぇしなァ。


堕骨丸は……あいつもあいつで早く来そうだなァ。


強い相手と正々堂々戦って満足死する、オレと同じタイプだしなァ。


ゼバッティは……あんまり話が合わねぇから苦手なんだよなァ。


ま、あいつは来るかどうか五分五分だがなァ。


レマとアゼトリーチェは……死んで欲しくねぇなァ。


レマは善悪の区別もあんまりついてねぇ子供だし、アゼトリーチェは他の奴等より人間を好意的に見てた。


……あの2人だけでも、生存して欲しいもんだ。


「……現世に置いてきた家族か友人でも思い出してたんでガンスか?」


「あァ?……ま、そんなところだ」


「ハァ……絶対こいつ地獄に落としてもケロッとしてるでガンスよ……」


「オレもそう思うなァ」


地獄ってのが、どれだけオレを苦しめられるのか……楽しみにして待ってるぜ!


「じゃ、もうさっさと次の裁判のためにも……この先に居る奪衣婆に今着てる死装束を脱いで渡して欲しいでガンス!……その服の重さ次第で、川の渡る場所が変わるでガンスから……」


「うげっ!?……マジでそれすんのかよォ……あ、六文銭がありゃ……」


「茨木童子程のビッグネームだとその手法も無理でガンスな!……ってな訳で、チャレンジでガンス!」


「とほほ……マジかァ……」


拝啓、現世に居る皆。


オレは元気に脱衣してるが、お前等はいったいどう過ごしてんだろうなァ……

ご読了ありがとうございます。


この世界におけるあの世では、人間と同等のコミュニケーションを取れるレベルの知性持ちモンスターも死後の裁判の対象に入ります。


気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。


後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。

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