11.秘密結社総帥、マッドフラワー
新キャラ?登場です。
(早水 勇雄視点)
ーキキィ~ッ!
「よし……新人君、京都に到着したぞ!」
「zzz……ん?……あぁ、もう着きましたか……」
俺、いつの間にか寝ちまってたのか……
……にしても、京都か……
「今回の目的地付近は、割と昔ながらの建物と今風の建物が混在している地域だ。……もし新人君が古都としての京都を楽しみにしていたなら申し訳ないのだが……」
「まあ、京都がそんな感じなのは田舎者の俺でも知ってますから。……あ、理穂さんも行きます?」
「……いや、私は遠慮しよう。……先日の迷宮至上教の件で少し野暮用があってな」
「わ、分かりました……」
どうも、理穂さんは同行しないらしい。
まあ、ここまで連れて来てくれただけで充分か。
「では新人君、健闘を祈る!」
「……あれ?……そういやS級探検者は……」
「あ~……取り敢えず、調査先のダンジョンが後程メールで来ると思うから、そこで待ち合わせると良い」
「は、はい……」
結局、護衛に付いてくれる人がどんな人なのかは分からなかった。
……とはいえ、調べるのもなぁ……
といった感じに、色々ともやもやする事はありつつも、俺は京都の町に繰り出したのだった……
そして数分後……
ーぐぅ~……
「……そういや、腹が減ったな……」
キャンピングカーで揺られて数時間、俺は朝食以降何も食べていなかったので、とにかく腹が減っていた。
と、その時……
「わ~っはっはっは!……お前、こないだネリルチャンネルでコラボしてた勇雄って奴であるか?」
「ん?……いったい、誰なん……ハァ?」
背後から俺に話しかけて来た相手を見た俺は、すぐに絶句した。
その相手は、ネリルと同世代らしき……多分、高卒から20代前半辺りか?
とにかく、その辺の年齢らしき女性だったのだが、格好が異質だった。
何せ、コスプレらしき帽子付きの黒い軍服を着用し、右目に黒い眼帯を付けた装いだったからだ。
更に異質な特徴として、軍旗で使われる様なサイズの大きな黒い旗を持っていたのも驚いた。
旗には花の様な模様が書かれていたが、それ以上の事は分からなかった。
「わ~っはっはっは!……吾輩の装いを見て驚いているであるな?」
「そりゃ、まあな……」
「吾輩の名はマッドフラワー!……秘密結社グランドノワールの総帥であるぞ!」
「っ!?……そ、それって本当なのか?」
見た目だけで言えば、コスプレのロールプレイである可能性が高い。
だが、少し前に迷宮至上教というカルト宗教らしき組織に出会っている身としては、只のコスプレと切って捨てる事が出来なかった。
「疑っているのであるな?……ならば、吾輩と行動を共にするが良いのである!」
「ハァ!?……ま、まさか犯罪の片棒を担がせるつもりじゃないよな?」
「お前は阿呆であるか?……こんなクソ目立つ格好をしておいて、犯罪をする訳がないのである!」
「……格好が目立つって自覚はあったのか……」
こいつ、本当に何なんだ?
コスプレイヤーにしては言ってる事が滅茶苦茶だし、かといって本当に秘密結社の総帥なら目立ち過ぎている。
「まあ、共に来るのである!」
「わ、分かった……」
何から何まで不可解だが、俺には一緒に行く以外の選択肢は残されていなかった……
そして更に数分後……
「どうであるか?……ここは吾輩が常連として通っている大衆食堂であるぞ!」
「……え?」
俺が連れて来られたのは、まさかの大衆食堂だった。
しかも、普通に子供連れが多い何処にでもありそうな普通の大衆食堂。
え、秘密結社の総帥なんだよな?
「おばちゃん、ざるそば定食を2人前で頼むのである!」
「はいよ。……泥花ちゃん、今日も元気だね~」
「わ、吾輩はマッドフラワーであるぞ!?」
「はいはい。……さ、席に座って待っといてね」
で、泥花でマッドフラワーって……
安直にも程があるだろ……
「あ~……泥花、だったか?」
「マッドフラワーである!」
「……マッドフラワーは、この辺の出身なのか?」
「この辺に住んではいるが、出身は関東である!」
なるほど、出身は関東か……
でも、この辺に住んでいるのか……
「どうしてここに住んでるんだ?」
「……元々、親父と関東のとある地域に住んでたんであるが……10年前に起きたオークダンジョンの大暴走で親父を喪ってから、親父の弟……つまり叔父貴が住んでた京都に引っ越して来たのである……」
「10年前、オークダンジョンの大暴走か……」
「……本当に、凄惨な事件だったのである……」
その事件は、俺もよく覚えている。
連日ニュースで報道されてたからな。
何せ、比較的安全な中規模ダンジョンになっていたオークダンジョンで突如として特異個体が誕生。
同時にオークが少なく見積もっても500体は誕生し、特異個体のオークエンペラーがそいつ等を率いて地上侵攻を企てたという事件だった。
「……だが、その事件における死者は、その日偶然にも初心者講習の講師としてオークダンジョンに潜っていたA級探検者1人だけじゃなかったか?……その人がダンジョンの入り口ギリギリでオークの群れを足止めし、他の戦力が来るまで粘ってたとかで……」
「ああ。……そのA級探検者が吾輩の親父である。……親父は立ったままオークエンペラーと相討ちしていたらしく、周りには何体ものオークの死体が転がっていたとか……」
「……結果、死者はそのA級探検者1人のみで、まさしく奇跡と言われてたっけか……」
「吾輩にとっても憧れで、自慢の親父である」
1人のA級探検者の懸命な足止めと犠牲により、大惨事は避ける事が出来た。
そんなニュースが連日報道され、そのA級探検者は英雄として未来永劫にわたって名を語り継がれる事となった。
確か、その名前は……
「……大豪寺 信之助、だったよな?」
「そうである。……いつか、吾輩も親父を越える探検者になるのが夢なのである!」
……こいつ、熱い夢を持ってるんだな……
それにしても、父親が大豪寺って名字なら……
「お前の本名は、大豪寺 泥花っていうのか?」
「そ、そうである!……だが、今の吾輩はマッドフラワーと呼んで欲しいのである!」
本当に何というか……
何で秘密結社なんてやってるんだ?
「そういや、秘密結社って言うからには構成員が何人も居るのか?」
「……だけである……」
「ん?」
「構成員は吾輩だけである!」
……うん。
駄目じゃん……
「……よくそれで秘密結社を名乗ったな……」
「そ、そんなの吾輩の勝手である!……き、きっと吾輩がいつか誰もが幸せになれる世界を作り出してやるから、楽しみに待ってると良いのである!」
「……どうにも傲慢で甘い考え方だな……」
そんな個人の考えが罷り通る程、世の中は甘くない。
人の上に立つってのは、そんな簡単な話じゃないんだからな。
「わ、悪かったのであるな!……でも、吾輩はいつか成し遂げるのである!……吾輩は弱者を守るためなら世界だって敵に……」
「ストップ!……何というか、正義の心はあるんだろうが……根本的に傲慢な面が目立つな……」
誰もが幸せになれる世界を作るだの弱者を守るだの、言ってる事は理想的なんだが……それを1人で成し遂げると言っている辺り、傲慢な理想論としか言えないんだよな……
と、その時……
「はい、ざるそば定食2人前だよ!」
「おばちゃん、ありがとうなのである!」
「あ、ありがとうございます……」
その後、俺達はざるそば定食を完食し、そのまま店を後にした。
ちなみに、ざるそば定食は滅茶苦茶美味かった。
「じゃあ、次は何処へ行くであるかな~」
「まだ一緒に来るのかよ……」
……この時の俺は知らなかった。
泥花の正体と、この先にて待ち受ける災難など……
ご読了ありがとうございます。
マッドフラワーの正体、皆さんは分かりますよね?
気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。
後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。
 




