プロローグ:3
視界が開けるのと、意識が覚醒するのはほぼ同時だった。
「……あれ?」
気が付くと、ボクは地面に頬つけて倒れていた。
ヒンヤリとした地面の感覚がさらに意識をハッキリとさせてくれる。
「ん……」
体を起こす。
固くなった体を伸びで解すと、ようやくになって周りを見渡す事ができた。
「……、ここ……どこ?」
辺りは森だった。
夜のせいか光という光がなく、月光のみが上からふりそそいでいた。
「くそ……。ボクはどうしてこんなとこに」
いる、と言いかけて目眩で倒れそうになる。
「ああ、もう」
続けてこみ上げてくる吐き気を必死にこらえながら、ボクは歩き出す。
どこに行こうとか、そんなことはまったく考えていない。
ただ、なんとなくここに居ては駄目な気がしておぼつかない足を引きずっていく。
「……」
進むたびに肩を木にぶつけ、倒れ、立ち上がり。
痛みに耐えながら朦朧とした意識の中前へ、前へと進んでいった。
「……っ、?」
そうして。
ようやく開けた場所にたどり着いた。
「湖……?」
そこは湖だった。
底まで見える透き通った水が広がり中心に岩が一つ。
空にある満月を映した水面は波紋もなく、岩さえ無ければ満月が二つ存在しているような錯覚に陥っただろう。
まるで酔ったかなような足取りでボクは進んでいく。
――行かなければならない。
それは、この幻想的な景色に魅せられたのではなく、ただ、中央の岩へ。
――行くな。行けば戻れなくなる。
甘い誘惑を、理性が邪魔をする。
頭の中では警鐘が鳴っているが止まらない。止まれない。
水が足に浸かる頃にはもう、抑制の声などとうに頭の中から消え去っていた。
「――」
湖の水は冷たいとも、暖かいとも感じない。“温度”というものを排斥したそれは今となっては水かどうかすら分からない。
そうして
満月が湖を照らす中
ボクはそこに辿り着いた。




