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知力担当

 転がるように階段を駆け下りた。

 正直、怖かった。何だったのだ、アレは???

 まぁ、仮面を着けた程度の男にこんなに取り乱すなんて、『悪役令嬢』失格なのかもしれないけれど、完全に油断したのだ。

 だってだって、あんなに雰囲気のある状態の人が、狐のお面ってなに?!下手すればモノノ怪じゃん!いや、生前流行っていた鬼退治モノのあの少年とかなら感動かもだけど!!

 やっと1階までたどり着き、ゼーハーと肩で息をしながら、前屈みになり、右手で顔を隠して目をつぶって考えた。考えてはいるけど、特に何も思いつく訳でもない混乱した私は、とにかく気を取り直して、次の図書館へと向かうことにした。本日何度目の取り直しだ、というツッコミは受け付けない。受け付けないぞ!



 学習棟の中央から小さな庭園を抜けた先にそれはあった。見るも立派な図書館だ。うちの領地には、図書館どころか本屋すらなかったのに、この世にはこんなにも本があったのか、とビックリした。

 建物や蔵書数で言えば、前世での市立図書館や県立図書館の比ではない。さすがは『王立』だ。子供のための図書館とは、到底思えない。まず、建物の大きさや豪華さが違う。次に、本棚の高さ大きさも違う。あんな高い場所の本はどうやって取るのだろう。そして多分、本の管理方法も違うのだろう。建物の外と中では、気温も湿度も、なんなら空気の流れまで違う気がする。劣化を防ぐための工夫が施されているのだろう。うっすらと防御系の魔法の気配を感じる。

 それにしても図書館なんて、受験期の一時、家の生活音から逃れるために通った位の記憶しかないけど、ここでは勉強スペースは、区切られたあそこにある一室の小さな部屋だけだ。それも、閲読などに使用するための場所だろう。もっとも、閲覧するだけならばそこかしこに高そうなソファが置かれており、腰掛けて読むのには最適なのかもしれない。けど、深く腰かけて本を読むって腰に悪そう……。とか余計なことを考えてしまう。

 誰もいない図書館に、私の足音だけをコツコツと響かせながら広い広い図書館を見て回る。

 ぼやっとしながら、本棚の一冊に人差し指でそっと触れてみる。

 手触りからも、分かる高級な作りと、本の歴史。多分そこから推測される、本の中身の重さ。間違いなく、庶民の娯楽的恋愛モノとかではないだろう。

 本といえば、冬の期間に一緒に勉強をしたルルを思い出す。女の子と見間違えそうな青髪の美少年だったルルは、最初、簡単な絵本のようなものを見せてくれた。それからは、毎日毎日違う本を持参して、一緒に読み、内容に笑い、泣き、考察し、それを語り合い、時に書き出し、真似をし、内容をまとめ、暗記しあった。「ふふっ」と思い出し笑いをしながらさっきの本を手にとり、ペラペラとページをめくる。

 ん?この内容、理解出来るぞ???

 明らかに難しーーーい内容だろうに、何故か理解できる。そもそも、スラスラ読める。え、私そんな天才だったっけ?

 おかしいな、と思いながら次、次とどんどん本をかえて読んでみてもやっぱり分かる。なんで読めるの?内容理解出来るの!?コワッ!っと手に取った本を落としてしまった。その時


「そこに、誰かいるのですか?」


 男性にしては少し高めの凛とした声がした。


「は、はい!ごめんなさい!」

「謝らないで下さい。怒ってませんから」


 何故謝るのか、脊髄反射って怖い。声と同じく優しい言葉をはいたその声の主が本と本の隙間から見えた。

 見えたけど、今度はたぬき!!???ば、化かされる!!!????


「し、し、失礼しましたー!!!」


 言うまでもなく、私はバタバタと図書館を後にしたのだった。

 図書館は静かに利用しましょうの張り紙に見送られながら。





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