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遠足11

 -鍵魔法-

 それは、物体をソコに閉じ込め魔法を発動主(解除主含む)以外の取り出しを不能とするもの。



 振りかぶった一撃を、またもマックが弾いて私を守ってくれた。た、助かった。ありがとうマック!

 マックも私も護衛の皆さんも、騒然としながら緊張を保っている。怒り狂っていたグレートウルフは、バスケットの中の赤ちゃんウフルをみて、絶望し発狂した。怒りの中に、強い悲しみを感じたのは、バスケットの中の赤ちゃんの母親だからだろう。その姿は、人間の母親と何も変わらなく見えた。そう思うと、先程までの恐怖心は、スッと消えた。


 魔物はバスケットを持っていた男に狙いを定め、威嚇しはじめた。赤ちゃんの仇と言わんばかりに。


「ひ、ひいぃ!」


 睨まれた男は情けない声を上げると、腰を抜かした。

 それにしても、何故あの3年生は魔獣の赤ちゃんをこっそり持ち帰ろうとしたのだろう。それもマックに報告も無しに。こんなことになるのは分かりきってるだろうに。自業自得としか言いようがない。気性が荒くなる母親から子を奪って死なせたのだ。巻き込まれた方はたまったものではないが、ここにいる全員皆殺しにされて当然だ。いやそもそも、結界の中に魔獣が居るのがおかしいんだ。誰かが誰かに何かを言っているけど、耳に入ってこない。叫びたいのは私も同じだ。緊急事態すぎて、頭がぐるぐるする。考えがまとまらない。落ち着け、落ち着くんだ私!

 そうこうしている間に、グレートウルフは顔を大きく歪ませなから威嚇し、徐々に距離を詰めていく。赤ん坊をさらったのならこちらに非がある。重症が出たとはいえ、生きていれば完治させられるし保証もある。

 だけど、彼女が人を殺してしまった場合、駆除対象になるだろう。


「お、俺はグッタリしたソレを拾っただけだ!俺は何も悪くない!」

「静かにしろ。動くな!」

「ひいいいぃ!」

「バカ!そっちに行ったらもう守れない」


 恐怖に耐えられなくなった男は逃げ出した。その瞬間を見逃さなかった魔物は大きく跳んだ。


 彼女に、人間を殺させたくない。

 気がついた時には飛び出していた。そして、ままよとばかりにめいっぱいの魔力を込めて魔法を発動した。鍵魔法を。空中に大きな魔法陣が幾つも描かれ、それが重なり光とともに発動する。そして魔獣を包み込んだ。

 四角い見えない壁が魔獣の攻撃を無効化している。どんだけ暴れようともビクともしない。どうやら、鍵魔法という空間に、魔獣を閉じ込めることに成功したようだ。


「サラ、これは…?」

「か、鍵魔法…?」

「そうか。鍵魔法にこんな使い方があるとは思いもよらなかった。凄いな、サラは」

「実は、私も……。上手くいってよかった」


 慌てて駆け寄ったマックと2人で、見えない檻に入れられた魔物を見上げながら呆気ない幕開けを実感し、ホッと肩を撫で下ろした。そして、障壁に手をかけて心から『ごめんなさい』を念じた。私たちの仲間が、赤ん坊を誘拐さえしなければ、こんなことにはならなかっただろう。せめて赤ん坊と一緒に結界の外に出してあげたい。私に出来る償いなんてそんなものしかないから。

 改めてバスケットを確認すると、グッタリとして動かない子犬のような赤ん坊が居た。悲しい気持ちで手を合わせ、そっと抱き抱えるとほんのりと温かさを感じた。


「マック!まだ温かい!生きてる!!やれること、やってみる!マックは状況確認とみんなをお願い!」

「わかった」


 それからは無我夢中で回復に専念した。

 人間の仲間も2人重症なのに、そっちを放置して魔獣を助けるなんてサイコパスなのか?とか言われるかもしれないけれど、許して欲しい。怪我なら直せるけど、1度消えた命の灯火は二度と戻せない。私は知識にあるありとあらゆることをした。それこそ、魔力の受け渡しまで、この小さな身体に、魂を手放さないでと願いながら。


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