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遠足10

「サラ!!」


 マックに驚いて油断した私に、鋭い爪が襲いかかった。マックはバリトンボイスでもう一度私の名前を叫び、私を庇って魔物の一撃を剣ではじいた。


「何故ここへ!」

「手助けよ!それより、そちらこそ何事!?」

「急襲を受けた。よって防衛中だ!」


 いつの間にか私は背中に守られていた。その背中がたくましくてカッコイイ。とか、思う余裕すらなかった。間近でみる魔物の迫力は凄まじく恐ろしい。これに平然と立ち向かえるとか本当に凄い。

 だけど、上空から見たら一目瞭然な理由が襲われていた本人達はわかっていないのだ。だから防戦一方で対処の仕様が無かったのだろう。

 マックは私の護衛たちが怪我人回収組と、防衛参加組に別れて行動しているのを確認すると、防衛参加組に指示を出し始めた。彼らは「マルス様!」と呼んで畏まると、しっかりと指示に従った。いや、やっぱりマックよね?と確認する。彼がマックなら、何故今まで声をかけてくれなかったのかと段々腹が立ってきたが、それも後!


「私、襲われてる理由が分かると思うの」

「教えてくれ!」

「多分、ランチBOXを狙ってるんだと思う」

「なんだって?」

「空腹なんじゃないかな?」

「そんなまさか…」

「明らかに彼を狙ってるでしょ!?ほら、あの彼!」


 気が抜けたような顔をするマックをよそに、彼らのランチボックスを持つ1人の護衛を指さした。彼はいかにも大事そうにソレを抱えている。マックの他の護衛と比べて、明らかに…その、少し貧弱に見える彼は青ざめて、逃げ腰だ。魔物はその彼だけを狙っているから私とマックには目もくれない。


「確かに、そう見えなくもないが…」

「でしょ!隙を見てあのボックスを渡してしまおう」

「ああ。そうしよう。よく気がついたな、サラ!」


 マックは振り返って私を見ると、「フッ」と笑った。その視線が真っ直ぐすぎて、なんだか照れた。慌てて視線を外して気がついた。マックは剣を鞘のままグレートウルフと対峙していた。それを聞くと「できれば無益な殺生は避けたい」って言うから嬉しくなった。

 そうだ、そうだよね。私も同意見だ。

 こんな結界の中に入ってきてしまった魔物は、本来だったら討伐するしかない。マックにとっては、倒してしまった方が楽なはずだ(多分)。でもその必要は無いと判断したのは、遠くにいる群れが、大人しくこちらを見守っているからだろう。彼らには敵意が無いのだ。それなら、彼らに結界の外に出てもらった方がいい。恨まれたくない。

 その時、救護組から「サラさん!こちらOKです!」と声がかかった。それを合図に私とマックは顔を見合わせて頷き、ランチボックスを持つ彼の元へと走り出し、奪い取った。いや、だって抵抗されるなんて思わかなったし。そして、それをそっとグレートウルフの前に置いて、3歩ほど下がった。


「お腹空いてたんだよね?ゆっくり食べるといいよ」


 私の声が届いたのかは分からないけど、魔物ピタリと動きを止め、「クゥーン」と鳴くと、箱の匂いを嗅いだり、舐めたりした。


「箱、開けようか?」


 辺りに緊張が走る。みんなが固唾を呑んで見守っているのが分かる。マックも「それなら自分が」と言ったけど、さっきまで戦っていたマックは警戒されるだろう。なのでやっぱり私が適任だ。そーっと近寄りランチボックスの蓋をパチンと開けた。


「え?」


 そこには、黒い子犬がいた。それもぐったりとして動かない、生まれたての子犬…いや、グレートウルフの赤ちゃんだ!

 そうか、そういうことか。

 魔物は、生まれたばかりの赤ん坊を奪われて怒っていたんだ。私はランチボックスを持っていた男をキッと睨んだ。男は、「おれは、たまたま見つけただけだ!持って帰ったら死体でも高く売れるじゃないか!」って叫んだ。

 次の瞬間、グレートウルフが鳴いた。それと同時に、真っ黒い瘴気を再び吹き出し、狂ったように襲いかかってきた。

 どうしよう。こんな怒りはもう抑えようがない。

 グレートウルフの前足の鋭い爪が降り掛かって来るのがスローモーションのように見える。遠くから、マックが私を呼ぶのも聞こえた。

 走馬燈だ。

 なにか打てる手を考えるんだ。

 学年トップとか、えばったのは自分でしょ、サラ!

 体術?魔法?私が得意なことは何?

 得意なこと。


 私の最も得意な魔法は…。鍵魔法だ!ってバカー!!

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