クリスマス 後編
薄暗い締め切っていたはずの室内は、荒れていた。
恥ずかしさのあまりに空気ごと凍らせた青髪のシャルルはまだ机にうつ伏せたままであった。
短髪赤髪マルクは、自分の待てる筋力の全てを内側にこもらせようと、自分の周りに炎で渦任せたが、はち切れんばかりに興奮し、スーパーサ○ヤ人のようになにかを噴出しつづけた。
長い銀髪の美青年は、天に昇る天使になってしまったようだ。
そして、金髪碧眼の王太子・アクセルは、目玉が落ちるのではないかと言うほど目を見開くと、奥歯で食いしばり、吐血したかと思えば、机を全力で叩いた。
「「「はっ!」」」
「皆、落ち着いたか?」
「は、はい」
「お、俺は何を…」
「ありがとう、アクセル。危ないところだったよ」
4人は慌てて椅子に座り直すと、裏返っていたカップを直し、手を叩いてメイドを呼んだ。ようやくカップがその使命を果たせる時がきた。
4人はカップを高らかに掲げるとそれぞれめを合わせた。
「恨みっこなしだ」
「ええ。先にサラと宿り木を見つけた人に権利がある」
「ふふ。絵の題材として普段から学校の隅々まで知っているボクが有利かな」
「……」
「では」
「「「「 乾杯! 」」」」
と同時に熱々の紅茶を飲み干し、いち早く部屋からシャルルが飛び出した。
「すみません、体力の少ない僕にはこのくらいのハンデがあってもいいかと!」
「氷魔法か!」
「ぼ、ボクも…アチッ」
「ふっ。やるなシャルル。たがこの戦いには運要素もある。雌雄はまだ決まっていないぞ…!!」
「そうですね!まずはその熱々の紅茶と格闘なさっていてください」
だんだん小さくなるシャルルの声は、熱いバトルを繰り広げられている秘密の密談部屋からどんどんと遠く離れていった。
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「それで、プレゼントは上手く渡せたの?」
「うん!ぺぺも手伝ってくれたし、飛行魔法と鍵魔法を極めた成果かな。ちゃんと真夜中に枕元に置いてこられたよ」
「枕元に、ねぇ……」
ここは学園の平民の女子寮の一室、サラとジュリーの部屋だ。
ぶっとい三つ編みを器用に編みながら、ジュリーはサラを鏡越しに見た。サラはイソイソとサンタコスを脱いでいた。
「しかし、毎度面白いことを思いつくよね。クリスマスにクリスマスプレゼントにサンタクロースゴッコ?」
「ゴッコじゃないんだってば。そういうお祝いをする国があったの」
「へぇ〜。世界広しと言えども、このジュリーさんの知らない習慣がねぇ」
ジュリーはくるりと振り向くと、脱ぎたてのサンタ衣装を持ち上げてヒラヒラさせた。
「本当だってば!サンタさんは、親しい人にプレゼントをあげるの!あれ?親しい人?子供…?」
「そんなこと言って!好きな人に、だったりしてぇ」
「うっ……」
「あー、ほら。そんな赤い顔しちゃって。はい可愛いー」
「もう、ジュリーってば!意地悪するならジュリーにはプレゼントあげないよ?」
普段着に着替え終わったサラは、頬を膨らませながらジュリーを可愛く睨んだ。
「おやおやサラ君。君は『1番好きな』私とやらへのプレゼントをやめるのかね?」
「やめない!あげる!!」
「ほら、じゃあプレゼントを選びに行こう!」
「もー。プレゼントを自分で選びたいとか言うかな」
「いいじゃん!お互い自分が欲しいものを選び合えるし。街をブラブラするのも楽しいでしょ」
「うん!クリスマスデートだね」
クスクスと笑いながら、2人は自室のドアをパタンと閉め、街へと遊びに出掛けた。国中の中を攻略対象の4人が駆けずり回って『宿り木とサラ』を探しているなんて想像もしていなかった。
翌日、凄い速さで走り回る4人の噂話で持ちきりになることは言うまでもない。
「なにを笑ってるの、サラ。思い出し笑いなんてスケベめ」
「ふふ。みんな喜んでくれてるといいなって」
「(そりゃ、好きな女の子からのプレゼントなんて、喜ばない男子は居ないよ)」
「ん?なに?」
「なんでもなーい」
「ジュリー」
「ん?」
「メリークリスマス!私と友達になってくれてありがとう!」
素敵イラストをいただいて、即興で書き上げました。
ぽん太さん、本当にありがとうございます!
この作品を読んでくださったあなたにも素敵なクリスマスが訪れていますように.*・゜ .゜・*.
\ ᴍᴇʀʀʏ ᴄʜʀɪsᴛᴍᴀs /




