遠足1
5月になった。
花壇は、春らしい色とりどりの花々から見事な新緑へとうつり、生命力を表現しているかのよう。深呼吸するだけで、大地から力強さを貰える。(気がする)
学校の授業もそれまでの復習やテストで一区切りとなり、座学、実技、ともに本格的な授業になった。
とはいえ、座学は前世での小学生レベル〜大学レベルが入り交じる。小学生レベルの足し算引き算掛け算とか、印章や、ただひたすらに暗記の家紋学、それからレベルが上がって貴族としてのマナーやルール、一気に難しくなって、心理学、領地などの経営学経済税、さらにはそもそも前世では有り得なかった魔法魔術、魔法歴学、などなどを3年かけて学習するようだ。
座学で特に面白いと感じたのは地理。その領地を持つ他学年の先輩などが自ら資料を作成、発表をしてくれる。自らの領地を、国が認める未来の貴族達に自慢できるのだ。発表する本人達も力の入れようが違う。自分の領地や特産物を誇らしげに語る姿は見ていて微笑ましくすらある。
私たちは他領地への見識を広げ、発表者本人は自治領を改めて知り誇りを持ち、双方の縁を広げる一石三鳥な良い授業だと感じた。これならお茶会やパーティーなど、どこで出会っても『あの領地の人だ!』と思い出せて挨拶に困らないのはありがたい。
ほら、今発表を終えた先輩に、何人かの同級生が挨拶に向かった。あの子の領地は陶芸が盛んだから、良い土を排出するあの先輩の領地にお世話になっているのかも。
こうやって縦横の繋がりをつくれるのかと関心した。
ほかにも選択で選べる剣術武術や魔法学、馬術などなどガッツリだ。
それと魔法学。魔法を使えるのも貴族の特徴のようだけど、いやー、なんで前世では魔法がなかったんだろうってくらい楽だし面白いよ、魔法。
生活密着から領地を守るための攻撃特化まで幅広行く学べるけど、私とって1番助かったのは『鍵』魔法だった。
借り物のドレスと宝飾品が未だに私の部屋のクローゼットにあるからだ。学園の生徒たちはみんな良い人とはいえ、あんな高価なものが手に届く所にあれば、誰だって魔が差す。いつ盗まれるとも分からない不安から解放してくれたこの魔法は、私の許可なくその空間からものを取り出せないというものだ。ありがたやー。
いや、本当は攻撃魔法も覚えるべきなのはわかっているのよ?なにせ私の父親が1代限りの男爵になったのはその武力による功績からだ。賜った領地だってそれほど広くないし、もし広げていきたいのなら、魔物を討伐しながら領地を自分で切り開くのだ。私が強くなれば、そのお手伝いが出来るのだもの、学んで身につけるべきだろう。
……卒業までに……。
いやー、うん、あれなのですよ。
魔物とはいえ生き物のね、命を狩るという行為がどうしても……。ぬるい前世を歩んできたで、どうしても抵抗がアルノデス。
それにね、人間に有効か有害かで魔獣かどうかを分けるのも、何となく納得がいかなくて。有効の例である羽の生えた馬、ペガサスはこんなに可愛いし。有害とされる魔獣だって、もしかしたら……。
こんなことを思っている私ですが、ちゃんとお肉も魚も大好きで美味しく頂いているのだから、偽善者もいいところだ。
さすがは悪役令嬢の私。
さてさて、5月末にはお楽しみの遠足があるぞ!遠足にはなんと、ペガサスに乗って行くので楽しみです!
遠足から帰ったら、またお手紙書きますね。母様も父様も、どうぞお元気でお過ごしください。
2人の愛娘、サラより。
なんて内容の手紙を読み返し、苦笑いをして、手紙に封をした。
目をつぶれば、両親の笑顔が瞼に浮かぶ。心配性の母は、(ただの現状報告っぽい内容だけど)きっと喜んでくれるだろう。




