密談4‐1
豪華なアフタヌーンティーの用意されたこれまた豪奢な……
と言いたいところなのだが、今回用意されたお茶とお菓子はとてもとても質素なものだ。
具体的には、平民が日常的に口にするお茶とほんのり甘いお菓子である。
毎回手も出さない口もつけないお茶とお菓子なのだから、毎回用意しなくても……。と言いたいところなのだが、これだけ高位の王侯子息の集まりなのだ、そういうわけにもいかない。準備するほうの苦労もしれるが、今回用意されたお菓子が質素なのは、倹約のためではない。単純に、平民にフリマに参加することによって、平民と接触することで、彼らのくらしに興味が湧いた彼らが、食べてみたい、飲んでみたいと指定したのだ。
それではと、お茶やお菓子を平民街まで買い求めに向かい、素材は質素でも極上の淹れ方を研究し、毒見を行い、茶器だけでも豪華なものを…!というメイドや執事たちの涙ぐましい努力の元につくられた今回の密会のアフタヌーンティーなのである。
集まった4人の男子は、見たこともない質素でシンプルな見た目に興味をしめした。そして茶をのみ、菓子を食らい、「甘くなくて食べやすい」だの「香りはあまりない」だの「不思議な色合いだ」だの、口々に感想を述べあって和気あいあいだ。
隠れているメイドたちは、普段用意する豪華なスイーツやお茶には手をつけてもらえないことを考えると、とても複雑な心境と表情をしていた。が、逆にこういった経験を経て、執事やメイドとして、主の願いを兼ねたときの満足感を得ていくようになるのだろう。
「それにしても今回のは楽しかったね!平民の女の子たちは飾らなくて可愛いし。彼女たちもサラと仲良くしてくれるといいな」
いたずらっぽく笑う長い銀髪の男子は髪を揺らしながら、踊る仕草をした。
「エミールの描いた看板、毎度ながら美しく味わいのあるものであったな。よくぞこの短期間であれだけのものを作り上げたものだ」
溢れ出るカリスマを抑えようともしない金髪の王太子は、腕を組みながら歓心していた。
「ふふ。楽しくてついつい力が入ってしまったからね~。けどサラがボクに与えるイメージはこんなものではないんだよ。ふっ。ボクのアミューズから湧き出る」
「あ、そのあたりで」
自分の世界に入ると長話になるエミールの話を、青髪のシャルルは容赦なく制止した。
それをうけて慌てて王太子がオレンジがかった赤髪の立派な体躯の青年に話を振る。
「マルクも見事だった。あの人込みの中での一本背負いは恐れ入った」
「幼子を狙うような卑劣な輩を許せなかっただけです。自分より、殿下のスピーチに感動しました。あそこまで国民すべてのことを考えていらしたとは……」
「確かに、スピーチで述べた決意は本心だ。……だが、それこそ今回サラがフリマに参加しようとしなければ、考える機会もなかったかもしれない。サラが一周目で言っていたように、国民の大多数は平民なのだ。彼らに直に会い、目でみて触れて肌で感じれたよい機会であった。いろいろな意味で感謝しなければならないな」
うんうんと頷き、マルク、エミール、アクセル王太子の3人は、ニコニコしながら顔を見合わせると声を合わせて
「「「ありがとう、シャルル」」」
「今回もシャルルのおかげ…だ」
「ひとりでいい思いをすることもできたはずなのに。ボクたちに情報共有するだけじゃなく、それぞれ見せ場まで作ってくれて」
「……サラが困っていることすら気が付けなかったのだ。その上で解決策まで生み出してくれたことに感謝する」
と、思い思いにお礼を口にすると、青い髪の少年は、顔をほんのり赤くするのだった。




