部活決め12
映画俳優がレッドカーペットを歩いている。そんな感じだろうか。
馬車から噴水までの道、噴水の周りにも一定間隔で騎士たちが並び、厳重に警護されている。その中を、シャルルにエスコートされながら進むと、すっかりお姫様気分だ。
も、物凄く多い人に見られてるけど、これだけ皆が後押ししてくれたのだ。もう、目立ちたくないとか我儘は言えない。言わない。
だったら、この状況を楽しもう。人からの目線を浴びることは気持ちいいことだと思い込もう。それに私は悪役令嬢のはずだし!この程度の視線にへこたれてられないのだ。
ジャックとラミの横までたどり着くと、「ごめんね、なんだか大事になっちゃって」と小声で謝った。
それまで不安そうな顔をしていた2人だったけど、私を見るなり目をキラキラ輝かせ「かわいい」「きれい」「すごい!」「本当に貴族様だったんだ!」と興奮気味に褒めてくれた。
2人は、今日のダンスの受け付けと会計をしてくれる事になっている。もちろん有償だ。私に儲けが出ようがマイナスになろうが、必ず支払いをするのだ。つまり、今日利益が出なければ、借金の傘増し…。って思ったら一瞬悪寒が走った。いやいや、これだけ人が居るのだ。誰か数人が踊ってくれるだけでプラスになるはずだ。人寄せ頑張らなきゃ!と気持ちを建て直した。
2人のの横には、目立つ看板と当日使用した花仮面で作った押し花が額に入れて飾られていた。なるほど、これだけでもみる価値があるくらい素敵で楽しい。無理に買い物をしなくても楽しめる演出がされている。
いつのまに用意したんだろう。
その時、『わぁ!』という歓声があがった。
開催の挨拶を終えた王子が、私の前までやってきて立ち止まった。
溢れ出るカリスマが光となり、眩しすぎて顔がよく見えない!か、神様か仏様なのかな!?
そんな彼が内ポケットに手を入れると、スっとなにかを引き出した。3000ウェンだ!
そしてそれを兄妹に手渡した。それから私をちらりと見て、にっこりと微笑む(顔がよく見えないので恐らくだけど)と、なんと狐の仮面を被ったのだ!
ジュリーの予想は的中していた。狐の仮面のあなたは、王太子だったんかい!てか、なぜ王太子が狐の仮面を被るんだい!なんでなんだい!どっちなんだい!!と混乱した脳筋ノリのツッコミをした。もちろん私の表情も、再現した花の仮面の為はたから見たら分からないだろうから助かった。
だって、流石の王太子とペアのダンスはとても優雅だったから。その上優しくてどこか懐かしくて、踊りやすくて。緊張していたはずなのに、あっという間に噴水の周りを一周してしまった。
終わり際、お互い深々とお辞儀をし、慌てて花束を手渡した。いつの間にか出来ていた見物の人集りから、盛大な拍手を頂いた。
完全に見世物だが、もう諦めた。
見学している平民たちの視線は羨望の眼差しだった。
貧乏男爵の娘が王太子とダンスをしているのだ。前世で言うところのシンデレラみたいに見えるのかもしれない。
いやいやいや!私の役割はあくまでも悪役令嬢なのだと気がついた私は『ノットシンデレラ!イエス意地悪な姉!』慌ててジャックとラミの頭をヨシヨシと撫でた。今私が思いついた最大の意地悪だ。
それから、ふと気がつけば、ダンス待ちの列は長蛇になっていた。が、先頭の3人はそれぞれクマ、不死鳥、タヌキの仮面を着けた男子が並んでいた。もう騙されないぞ!君たち同級生なんでしょ!ってジトッとにらめば、タヌキの仮面の少年がチラッと顔を覗かせて舌を出した。ってシャルルじゃーーーん!!っと思わず笑ってしまって、私の緊張は完全に解けたのだった。




