部活決め9
「じゃあ、この見出しについては!?」
「あぁそれはね…」
ジュリーが目をキラキラさせながら食い気味に質問をしてメモをとっている。若干興奮気味なのは、私の勘違いじゃないだろう。そして、2人の会話についていけない私。
こっちの世界では平民と貴族の間には大きな確執があるため、知恵をただで貸してくれるシャルルのことを、訝しんだジュリー。あれほど貴族を嫌い、会うことを嫌がっていたのに、私の「借金王の汚名返上大作戦」の話を聞いて同席すると言って、放課後、わざわざ新聞部を休んで図書館についてきてくれたのだ。心配性だなって苦笑いしたけど、心配してくれること自体がありがたい。だったら大好きなシャルルをジュリーに紹介してしまおうと思ったのだ。
彼は、私にとっては幼なじみでよく知った仲。優しいし、賢いし、頼りになるのをよーく知っている。困ったときのシャルル様様!
そして、優れた観察眼を持つジュリーは速攻それを見抜き、打ち解け、結果彼を質問攻めにし、そこから話題が延々と広がっていったのだった。過去の新聞を引っ張ってきて、その背景やその他諸々を聞いたり、見出しの白黒の割合、大きさの黄金比がなんたら…etcetc.「幼いころの疑問がとけた!」って」ジュリーは大喜びだ。
ルルってば私たちと同い年なのに、賢いだけではなく博識!
そんなシャルルが苦笑いを浮かべた。
「あの、ジュリーさん?そろそろサラ様の話に戻りましょうか?ほら。サラ様がすっかり暇してる」
「あっ!!そっちのけで夢中になってた!!!」
「あはは……」
ジュリーは顔の前で両手を合わせると、ごめんっ!と頭を下げた。
ルルは苦笑いをした後、私と目が合うと、一瞬目を見開かせてから伏せ目になり、真っ赤になった。白熱しすぎて暑かったのかな?
「こほん。では、サラ様のフリーマーケット参加について3人で案を出しながら詰めていきましょう。締め切りは前日までですが、定員もあるため、なるべくはやく申し込みましょう」
「「はい!」」
「では、売り物と、売り子と、金額と。それから、値段表示方法と…。売るものによっては最低金額の設定も必要でしょうか?サラ様、なにか売りたいものはありますか?」
「あー、実は…サラ?」
「う、売れるような不用品を持ち合わせてない……のデス……」
悲しいやら恥ずかしいやらで、しょんぼりと項垂れた。こんな貧乏な私をシャルルはどう思うだろう。見捨てるだろうか?と、ちらっと上目遣いでシャルルを見た。
「うっ!」
自分の胸を鷲掴み、パタンと机にうつ伏せになり、頭から湯気をのぼらせるシャルル。え?何事?!
「シャルル様!どうしたのですか?しっかりなさって!」
と、肩に手をかけてわっしゃわっしゃと揺さぶる。
「……これが、この世の楽園……」
「え?今なんて?」
「……女の私から見ても反則技だわよ、サラ……」
「え?え?」
「はぁ。これだもの」
うつぶせたままなのに、両手で顔を隠し続けるシャルル。
そんな彼を心配する私をみて、ジュリーはヤレヤレとするのであった。
とりあえず決まったことは
売り子と商品づくりをあのこたち二人に頼み、お小遣いを少しでもあげようということ。
フリマ参加費用と申し込み手続きは、シャルルがしてくれることになった。ありがたい。
「ところでジュリーさん。あなたにも別枠でお願いをすることは可能でしょうか?」
話し合いを経てすっかり冷静になったシャルルは、にっこりと微笑みながらジュリーをみた。
和やかでいいムードである。
「私?手伝えることがあるならぜひ!とはいえ、前日も当日も新聞部の活動があるからあまりお手伝いできないかもだけど、それでもよければ」
「シャルル様、ジュリーになにをお願いするのです?」
「それはですね。当日の目立つ立て看板と、事前準備として新聞部の一部に今回のフリマの広告を載せていただけたらな、と」
「それナイスアイディアじゃないですか!シャルルさん!フリマも人気商売ですもんね!」
「はい。集客第一ですからね。ぜひとも目立つように、心惹かれるようなものをお願いしたく」
「ぜひ、ぜひやりたいわ!私!」
「ふふ。ジュリーさんならそう言ってくれると信じていました。やりがいがあると思いますよ?」
「ええ!ええ!本当に!」
「では、この後もう少しだけ時間をいただけますか?宣伝の内容について話を詰めてしまいましょう」
「あの、私は?」
「これは私に任せて!かっこいいのに仕上げるから、楽しみにしててよね!」
「サラ様は、例の子たちに当日の売り子のお願いと、明日から作品作りのためにここに来てくれるように頼みに行ってください。その前に、代理でフリマの申し込みを僕が行いますので委任状を、念のために二枚いただけますか?」
「は、はい!」
「ん、ではここにサインを。よし。ではあとはジュリーさんと話を詰めるだけなので、サラ様はまた明日」
目をキラキラ輝かせながら嬉しそうなジュリーと、少しだけ悪い顔をしたシャルル。一瞬寒気がしたのは気のせいだろう。先に帰れと促す二人に、なんとなく納得がいかないけど、しぶしぶと荷物をまとめて図書館の出口へと歩き出した。
「あ、そういえばシャルル様。結局何を売るんですか?」
「花を売ってもらおうかと。あなたと花を、ね?」
こちらを見て、嬉しそうに微笑むシャルル。
『花を売る』?
え?私、花なんて持ってな……。
まさか、隠語の花?? 私、貞操の危機???
う、うそでしょーー!!!




