部活決め4
あっという間に週末になった。
めぼしい部活をいくつかに絞り、体験入部をさせてもらった。大きな声を出すのは楽しかった。音程を合わせてみんなでハーモニーを紡ぐのも気持ちよかった。大きなキャンパスに、色とりどりの絵の具を散りばめるのも、作品が出来上がっていくのも感動した。表舞台の役者を裏から支えるのもやりがいがあった。楽器から、初めて音が出た時の感動ったらなかった。
私なりに真剣に文化部で体験をした。が、どの部活も素敵すぎて、良いところがありすぎて、選べなかった。うぅ……。優柔不断。
そのことをジュリーに相談したら「兼部も可能だよ」と「悩みすぎても疲れちゃうから気分転換したら?」と、遊びに誘ってくれた。ありがたい。
というわけで、土曜日の今日、気分転換にジュリーと平民街をぶらりと散歩することにした。
私がお小遣いを貰ってないことを知っているジュリーは、お金を使わない遊びを選んでくれてる。見てるだけ。歩いてるだけ。歩きながらお喋りしてるだけ。他愛のないお喋りが、こんなに楽しい。力が抜けていく。部活選ばなきゃっ!って、力みすぎていたのがよくわかる。気分転換大事って痛感。
「それにしてもさ、あんたはまじめすぎなのよ」
「そ、そうかな?」
急にお説教モードに入ったジュリーは、私に人差し指を立ててジロっと睨んだ。
そうなんだよね……。それは前世でも言われた気がする。これでも真面目に『悪役令嬢』に取り組んでるつもりなのですけど、何の成果も得られません。すみません。
「そーよ。貴族のおじょーさんだったら、もっと気楽に優雅に『部活なんてお遊び、ワタクシには関係ゴザイマセンワー』くらいでいいのに。なんでそんなに堅苦しく悩むの?」
「う、うーん」
ジェスチャーの大きいジュリーは、両手足で表現して、くるりと回りながら言った。
堅苦しく悩みすぎ。
そういうものなのだろうか。
前世では、部活に入部が必須って感じだったから、入部しないという選択肢があるとは思ってもみなかった。
それに……
「ジュリーだって頑張ってるし、私もなにか頑張りたいし。それに、友達、増やしたいもん」
って言ったら
「そっか。未だに、自分のクラスに友達できないんだっけね。あんた」
って苦笑いされた。
平民街の中心にある噴水広場までたどり着くと、歩き疲れたジュリーは噴水横のベンチに疲れたと言わんばかりにドサッと腰をおろした。私も苦笑いをしながら隣に座る。噴水から飛んでくる細かな水飛沫が気持ちいい。上を見上げれば、今日も青空は美しく、空から注ぐ光が、噴水の水飛沫をキラキラと輝かせていた。なんだか悩んでいたのが馬鹿らしくなってしまうくらい平和だ。
「しかし、あんたの体力どうなってるの?学園からここまで、かなり距離あるのに全然疲れて無さそう。てか、笑ってるし」
「?うん。疲れてないよ」
「この……。笑顔の体力オバケ……」
「オバ……、ちょっと酷い!」
なんて笑い合っていたから油断しちゃったのだろう。ベンチの横から、にゅっと小さい手が2本伸びてきて、私とジュリーのバックを掴んだのだ。
「ちょっと、急に怖い顔してどうしたの?」
「うん。気がついたら、掴んでた」
「え?」
冷や汗をかく私の目線の先をジュリーが覗き込んで、ギョッとしている。
それはそうだろう。私は両方の手で、二人の子供の腕をむん掴みしているのだ。え、何この構図。やばい、これってもしかしたら小さい子にセクハラしてる?!いや、もしかしなくても、傍から見たら、私誘拐犯みたい!!??
ご、誤魔化そう、誤魔化さなきゃ!!って焦った私の口からやっと出た言葉は
「えーと……私たちの鞄になにかようかな?」
だった。




