密談4-2
「あな…あなたが…あなた方は…!」
両手をぶらんとさせながら、ユラリと立ち上がった青髪の少年は、未だ全身をゆでたてのダコのように赤くし、湯気をあげている。見た目は美味しそうだが、はたから見たら妖怪のようだ。慌てて他3人の攻略対象達が諌めようと立ち上がる。
「シャルル?」
「落ち着くんだ、シャルル」
「わぁ!人間加湿器だね」
「コレが、落ち着い…て、られると……お思い…で、スカ?」
青髪のシャルルの顔を見れば、大きな瞳にウルウルとこれまた拵えられた大きな涙が今にも零れ落ちそうだ。
「今回の件は、シャルルにとってとんでもない被害を被るところだった。心中察する」
「あぁ、職員室側の説明を受けた時には肝が冷えた。我ら2人が参加表明したが故に、君がクラスメイトからそのような扱いを受けるとは想定外だった。すまない」
「ボクは見てみたかったよ?シャルルの女装。多分似合う」
先程から空気を読まない長い銀髪に、両脇の2人が鋭く突っ込みをいれた。
「あ、いや、報告を受けた直後に問題の子爵令息とその周りの人間を懲らしめようと即行動に移したのだが……」
「そうそう。アクセルなんか慌てちゃって、顔を真っ青にして走り出したっけ。ボクは貴族クラスの女子たちから情報収集しようとしたんけど」
「あぁ。俺はクラス男子どもをつるし上げていた。シャルルを女側に、なんて話事前に聞かされてないからな。何がクラスの男子全員の合意だ。嘘つきな卑劣漢は許せん」
「みんな……。ありがとうございます!」
4人は円陣を組むかのように肩を寄せあった。
「だが、結果としてシャルルの為になにも出来なかったことは不甲斐なく思っている」
「そうですね。あの子爵子息も、行方知れずのまま逃げ切られてしまいました」
「やりたかったよね〜。僕ら3人の立場にものを言わせたパワハラ。子爵令息を、囲ってさ。『俺らの仲間のシャルルに何してくれんねん』って」
「エミール様、言い方が少々……」
「事実でしょ。友情パワー発揮させたかったのに。その上いつの間にか王女ネー様が出張ってこられて円満解決。その上僕らが面と向かってダンスすることも出来なかったから、幼なじみがバレることもなし」
「「「それな〜」」」
ピッタリと息があい、全員で肩を落とす4人。ガッカリしているような、嬉しいような、助かった、のような、そんな複雑な表情だ。
「それでも、それぞれ良い思いはしてしまったな」
「はい。全くもって。こんなに早くサラと踊れるとは」
「はい……」
またも顔を赤くするシャルルに、意地悪そうな笑みを浮かべたエミールが顔を寄せた。
「ボクは知ってるよ、シャルル?キミ。サラに庇ってもらったんだって?」
エミールをバッと見るシャルル。
「な…、はい、そうです」
「サラは、震えながら半泣きで、それでもハッキリとキミを庇ったって聞いたよ」
「……はい、そうです。僕の為に彼女が頑張ってくれて…。そしてサラは、僕と目を合わせて、優しく微笑んで……。うっ」
シャルルはそこまで言うと、天使の矢に心臓を撃ち抜かれたかのように倒れた。
「俺も見ていました。気丈に振舞ってはいるものの青ざめ震えながら微笑むサラは、庇護欲を掻き立てられましたよ」
「なんということだ。ひとつイベントを逃した気分だ」
「ボクら、教室が違うからどうしてもね」
「目の合わなかった俺ですらそうなのですから、自分が匿われ、目が合って微笑まれたシャルルは……」
3人の視線がシャルルに向かう。
地べたに這いつくばっていたシャルルは、ゆでダコを超え、唐辛子かのように赤く、それを食したかのように滝のような汗を発し、握りこぶしで床を叩いた。
「もぅ、僕にはこの気持ちを押さえ込んで黙っているなんて無理です!! 僕は、僕は、動き出します!!」
そう宣言すると、アフタヌーンティーの用意されたテーブルに戻り、一気に飲み干したのだった。
密談4と後日談の順番、逆の方が良かったと今気が付きました。




