ダンスパーティー4
「謹慎!?」
驚きのあまり自分でも驚くくらいの大きな声が出てしまった。慌てて口を両手で抑えて周りを見渡すと、私とドミニク嬢とのやり取りを興味深そうに見ていた令嬢達は、眉根を寄せた。
「なんだ。君は見ていなかったのか?玄関ホール前の掲示板に大きく張り出されていただろう?」
周りの様子などまったく気にしないかのように、ドミニク嬢は話を続ける。た、たくましいな……。彼女をみらなって、私も平常心を取り戻そう。
「掲示板があるのですね、気が付きませんでしたわ」
「そうか。朝から結構な人だかりが出来ていたのだが目に入らなかったのか?」
「あぁ、そういえば」と返事をする私に、ドミニク嬢は不思議そうな顔をした。
「君は女子なのに噂話には興味無いのか?」
なんて質問だろう。色んな意味で一瞬言葉に詰まる。
でもまぁ高校1年生ならこんなもんかとぐっと堪えて考える。
聞かれているのは噂話に興味が有る無しだ。他人の噂話ならそりゃ気になりますとも。でも……。
「……まだ、噂話を興じれる程の仲の方がおりませんので……」
「ふむ」
自分で言ってて、悔しい。悲しい。寂しい……。
何が嬉しくて、『クラスでボッチです』なんて暴露しなくてはいけないのだろうか。
そもそも、自分で言わずと知れたことだし。
うっすらと涙をためた目で、ドミニク嬢の様子を覗き見る。彼女は腕を組み直し、ボブの紫髪をゆらしながらうーんと首をかしげ、何かを考えているようだが、もう威圧感はなくなって、ちょっぴり安心した。
「彼は子爵子息、君は男爵令嬢。2人の立場はそれほど変わらないのに一方は謹慎。一方は無罪放免。これは不公平だ」
まって!?同罪にされてる???
そもそも、私そんな大それたことしましたか!? ダラダラと大粒の汗が流れていく。ちょ、もうおうち帰りたい。
「だがしかし、君はクラスに話し相手が居ないくらいツテがないという。なら、君が処分を受けなかったのは、君に罪がなかったということだろう。」
「そ、その通りです!」
「なら、君を疑うような態度で話し掛けてしまってすまないな」
「あ、あの!」
何時の時代でもタイミングが悪いというものはあるようで。ドミニク嬢に話しかけようとした途端に始業を伝える音楽が流れ、担任の先生が教室に入ってきた。
そして先生の口からはいつも通り衝撃の言葉を口にしたのだ。
──────
「それで、アンタはどうする気なの?」
一日の授業を終え、自室で机に突っ伏す私に、同室のぶっとい三つ編みの少女が呆れながら机に手を置いた。
「どうするもなにもー」
「聞いたわよ。お小遣いなし、ドレス持ってきてない、友達居ないから借りれない、取りに戻るにも往復で1ヶ月かかる。挙句アクセサリーとかも一切なし!完全『詰み』じゃない」
「うっ、うっ。そうなのよ〜……」
先生があの後言った事。それは
・今年のダンスパーティーは異例中の異例である
・王族クラスの2名が加わる事に
・男女の人数差は王太子の姉君が参加することでなくなった
・姉君は卒業生の為、制服が着られない
・よって今回のダンスパーティーは、ドレス着用
・身分差が激しいので、ダンスパートナーの招待を不明にするために、仮面着用のこと
・また、ダンス中に無礼をはたらくことは絶対に禁止である
無礼をはたらくなんて、そんな恐ろしいこと、とてもとてもとてもできないよ!
という私の心のツッコミはさておき。
「ドレスはまぁ制服でもいいとして、仮面なんて持ってるの?」
「……ない」
「ダンスパーティーは明後日よ?」
「……うん」
「明後日までになんとかしないと、アンタ本当に『良い見世物』になるわよ?」
「うっ」
「私が手助けできるならしたいけど、貴族が着るようなドレスも仮面も持ってないし。今回は流石にどうしようもないわ」
「……気持ちだけでも十分嬉しいよ。ありがとうジュリー」
「うん。とにかくさ、今回はサラはお咎め無しだっただけでもめっけもんなんだから。元気だしてこ」
「ホントだね」
机の上からムクリと上半身をおこし、ジュリーと顔を見合わせて笑いあった。やっぱり話を聞いてくれる人が居るだけでありがたい。
とは言ったものの……。ドレスも仮面もアクセサリーも急遽手に入れるツテなんて思いつかない。
ど、ど、どうしよう。
この小説の更新日は2024/06/16なのですが、明日、私の誕生日だったりします。
明日も更新できたらいいなとおもいつつ、イイネやブクマ、☆評価などでお祝い応援していただけると励みになります。よろしくお願い致します。
さすがに今回は攻略対象からドレスが贈られてくるオチではありません。
【補足】
王立学園において、高位貴族の子女が通う学校では、先生の身分が生徒の教育の阻害になるとして、先生は王族に次ぐ身分とされている、という設定になっています。
したがって、先生の説明を遮って自分の話をした2人には、等しく罰があるべき。とクラスメイト達は考えていたようです。
高等部から編入したサラはまだ知りません。




