密談3-2
「「「?」」」
「僕が思うに、次のダンスパーティーでの着用があるのではないでしょうか」
「む。そこはボクの制服を使用して貰いたいところだけど。まぁ、何日も続く事だし、1回くらいはアクセルに譲ってもいいよ。君の方のが動きやすそうだし」
「そうですね。王族専用の制服は、街を闊歩していても歩きやすそうでしたよ」
「「「?」」」
「私が思うに、私の制服を着て紅茶などを嗜むサラは、王族の一員と見間違うほどの上品さを兼ね備えているのではないかと思うのだが」
「お茶会かい?いいね。ボクも君の制服を着たサラとお茶したい」
「そうですね!僕もです。……少し気後れしてしまいそうですが……」
「確かに。店員などはサラを完全に王族として敬っていましたね」
「「「!」」」
赤髪のマルクを除いた3人が顔を見合わせる。先程からマルクの言葉だけが何かおかしいと気がつき、身を乗り出して問い詰める。
「ねぇ?どういうこと?」
「マルク、まるで見てきたようですね?」
「あぁ、私もそう感じた。説明を求める」
「説明もなにも……。日曜日にサラが王太子の制服を着て、同室の女子と街をぶらりとしていたではありませんか」
「「「なんだって!!??」」」
アクセル王太子、シャルル、エミールの3人がガタッと立ち上がり、テーブルが揺れた。その衝撃でカップからソーサーへ、紅茶が零れる。
そんなことはお構い無しに、立ち上がった3人は、赤髪のマルクへと詰め寄る。
「聞いてない!」
「どういう事だ」
「とにかく詳しく話してください!」
と、それぞれが口早に話すものだから、普段から口重なマルクは、迫られ目を回しかけている。
「「「マルク!」」」
「はっ!」
「頼む、マルク。サラは私の制服をどうして着ていたのか教えて欲しい」
アクセル王太子が右手はマルクの肩を掴み、瞳はまっすぐに、でも少し悲しげにマルクを見つめた。
2人の間にはBL的空気が流れるが、そっちには進まないぞ。
「マルクから説明致します」
冷静になったマルクが制服を正しそう言うと「うむ」とアクセル王太子も返事をした。
「結論から申し上げますと、サラはジュリーと出掛けておりました」
「「「うん」」」
相槌の声が揃う。本当に仲良しである。
「我々は出会いイベを期待して各持ち場で待機していました」
「「「うん」」」
「我々の待ち時間は……無駄でした」
「「「……うん」」」
4人全員がガックリと肩を落とす。息がピッタリである。
このままでは埒が明かないと、青髪のシャルルが口を開いた。
「マルク、もしかして父君の部下である騎士が貴族街でサラとジュリーを見かけた、ということですか?」
「……そうだ!」
助け舟が来た、とマルクが嬉しそうに返事をする。
「という事は……。分かりました。サラは恐らくルームメイトで平民の女子を貴族街に連れていくために、自分の制服を貸し、袖を通していなかった『王族専用』の制服を使用した」
「あー、なるほどね。優しいサラらしいね」
「それなら得心が行く。サラが同性と仲良くするのは私も嬉しい」
「はい。とても仲良さそうで、サラも楽しんでいました」
うんうんと、嬉しそうに頷く中、青髪のシャルルだけがジト目でマルクを見ている。
「問題は、何故日曜日のうちに僕たちに教えてくれなかったのか、ですね」
「うっ」
「あー、教えてくれてればアクセルも制服姿を拝めたのに」
「……」
「それは……、報告を受けた後、影から護衛をするのに夢中になりまして……」
ダラダラと汗をかくマルク。どこか目も泳いでいる。
「……僕が察するに、街の衛兵から『王族専用デザインの制服を着た見知らぬ子女が街を歩いている』と報告を受けて慌ててマルクが現場に向かったのでは?」
「む?」
「そ、その通りだシャルル!」
「そしてそのままサラ達の後についていき、その都度衛兵や護衛に説明して回っていたのかと」
「見ていたのかシャルル!?その通りだ」
「うん、それは……マルクを責められないよ、アクセル」
「……その通りだが……。出来ることなら私もそのサラを見たかった……」
さらに低い位置に肩を落とすアクセル王太子を、3人が憐れみの目で見た。
「あ、でもさ。街の衛兵までどうして『王族専用』ってわかったのかな?」
「確かに。学園関係者でも居合わせたのでしょうか?」
「不思議だな」
「あぁ、それは王家のエンブレムを付けてあるからだ」
「「「なんだって!?」」」
「そ、それは禁止だと決めたではないですか!」
「そうだよ!あの制服はそれぞれの家紋を入れて完成するのに」
「俺も入れずに贈りましたよ。そもそも送り主が分からないようにする為の対策だったのではないですか!」
「そうなのだが……。王族専用デザインだけで制服を作ると、捏造になり、不敬罪でサラが捕まってしまうのだ。仕方なかろう」
「「「それは……仕方ない」」」
全員が、納得した素振りを見せる。がすぐに
「でも、せめて事前に一言教えて頂きたかったです」
「すまない……」
「と、すれば。抜けがけした罰ってことかな。アクセルが見られなかったのは」
「なるほど。それなら仕方ないですね。アクセル殿下。諦めてください」
「……手痛すぎる罰ではなかろうか……」
「まぁまぁ。1番手痛い罰が既に下っているようですので」
「「確かに」」
「抜けがけ、したのはどちらかと言うとマルクの方だと思うのだが……」
完全に脱力してしまったアクセル王太子は、机に突っ伏しながらか細く言った。
本日も口をつけて貰えなかったティーカップのひとつに花びらが1枚舞い落ち、小さな波紋を打つばかりであった。
次回より、日常編に入ります。




