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密談2-2

前話の続きです。

「でもさ!どうせなら被るお面に意味を持たせようってなったじゃない!」


 長い銀の髪を揺らしながら、芸術担当エミールはガタッと立ち上がった。


「それはそうだが」

「だからボクはね、『ボクの愛は永遠さ(フェニックス)』って、意味を込めて不死鳥にしたんだ。分かりやすいだろ?』

「「「それで不死鳥」」」


 エミールのウィンクを受け流しつつ、3人の男子が謎が解けた、と頷いた。


「不死鳥と言えば、気高く美しい鳥だ。仮面ひとつで表現しきれるわけが無い。そうなると、ボクの血が騒いじゃって羽根や尾も創作したんだ」

「「「なるほど」」」


 なにが『なるほど』なのか。なんて突っ込み不在のまま話は進む。


「君たちも、仮面に想いを込めたんだろ?」


 熱弁していたエミールは落ち着きを取り戻し、再び腰を下ろした。そして足を組み優雅に手を向け君たちの話を聞かせてくれよと促す。


「私は単純だ。『君を常に愛す(キツネ)』という思いを込めてだ」

「俺は『困ったら()いつでも助けに行く()』というメッセージを」


 金髪の王太子と赤髪の未来の騎士が、照れながら嬉しそうに語る。それをエミールはうんうんと頷きながら嬉しそうに聞いている。


「良いじゃないか!ボクたちはサラが大好きなのだから。これで、ボクたちみんなの気持ちがサラに伝わったと思うんだ」


 4人とも、幸せそうに頬を染め、うんうんと頷く。仲良しである。


「ところで、自己紹介の時のサラ、見ましたか?」

「(悶絶)」

「はっ!あの可憐なサラのドジっ子っぷりを見逃すワケがないよ」

「1周目で私とエミールはクラスが違うせいで見逃したからな。大満足の可愛さだった」

「ふふ、良かったです。噛んだ姿も可愛いし、照れて真っ赤になるサラも可愛いし。はぁ、初日っから幸せです」


 思い出し、赤面して両手で顔を隠す者。空中にスケッチし始めるもの。目を閉じ、ゆっくりと思い出し微笑むもの。反応は各自それぞれだが、またも全員がうんうんと頷く。本当仲良しである。


「でも、よく王族専用教室から抜けられましたね?」

「あぁ、私達に自己紹介は不要だろう?だから」

「ボクたち2人で先生に抗議して、その時間は貴族クラスに紛れ込んだのさ」

「私たちにも、貴族の顔ぶれを見ておくことは必要だろう?」

「俺はサラの自己紹介をお二方も見られて良かったと思います。とはいえ、お二方に気がついた時の先生の表情は気の毒な程でしたよ」

「それは……、許せ」

「先生の臨機応変な態度に感謝だね」


 ははは、と笑い合う和やかな空気が4人とも好きだった。

 サラという1人の少女を中心に家柄も趣味も思考も違う4人が力を合わせ、お互いに譲り合い、共有し合ってきた5年間は、4人の友情と団結を確固たるものにしてきたし、この空気を大切にしてきたのだ。



「コホン。最後になってしまったが、私の共有だ。王族専用教室で待っていた。サラの可愛い声が聞こえた。これだけだ。すまない」


 アクセル王太子は、照れながらも申し訳無さそうに続ける。


「皆のような芸術的表現も妄愛的視点もないが、目に見える現状のサラが私は好きだ」


 盛り上がっていた男子たちの間に一陣の風が吹いたかのように時を止めた。ここに居る男子の誰もがサラという少女に真剣に恋をし、求めている。その姿に、部屋に飾られた花々でさえ恥じらい枯れ落ちそうな程だ。


 なぜこんなにも彼らは1人の少女に恋をしているのか。それはあまりにも簡単な理由だった。

 彼らは全員、とある恋愛シミュレーションゲームの『攻略対象』なのだ。そして事もあろうか、彼らは全員『2周目』なのだ。

 もちろん、ここはゲームではない。彼らのリアルで現実で存在している世界だ。

 でも、彼らの中には、確かに「1周目」の記憶がある。それについてはまたの機会となる訳だが。




「さて、シャルル。君は先程、話を逸らしただろう?私たちの間で、隠し事は良くはない」

「殿下……」 


 誰もが笑顔で知性担当の華奢なシャルルを見つめていた。

 背の高い3人を尻目に、青髪のシャルルが細い首をゴクリとならした。


「僕は『他を抜く(タヌキ)』です。だって僕だけ、その、皆様と違って抜きん出るものがないですから……!」


 メラメラと闘志を燃やし、語気を強めて言う彼の顔には、男の表情が浮かんでいた。



「ふむ。シャルルの言うことは尤もだ。今まで同盟を組み、抜け駆けを禁じ、協力してきた我らだが」


 金髪のアクセル王太子が3人をもう一度見渡す。


「ではここからは公平に、それぞれがライバルだ。誰がサラとくっついても恨みっこなしで、必ずその家を全員で支える。これは絶対に破られない約束だ」


 4人は円陣を組むように中央で手を重ね合わせると

「「「「おう!」」」」

 と気合いの入った返事をした。


 もちろん、今日の紅茶もとっくに冷めていた。



 翌日。

 ジュリーの忠告を受け、自身の身の安全の為に選んだ贈り物の制服(防御力が高そうなの)を着用した事で、『マルクが1歩リード』という判定を皮切りに、彼らの友情と協定に少しずつ壊れて険悪になっていくのであった。

登場人物が多いと、地の文での表現、悩みます。読みづらくないですか?誰のセリフか伝わるでしょうか?

ご意見、ご感想いただけると嬉しいです。


4人の外見をそろそろちゃんと明確にしたく、イラストをつけるか悩みます。

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