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異世界ジオラマ  作者: 彁はるこ
五章 僕の見えない日常
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第2話 ある黒巫女の話

「おーいしーいっ!」


 わたしはお肉の串焼きを、浜辺のそばで食べています。

 波がキラキラひかってます。

 砂浜は白くて、いろんな人がいますが、わたしは人気のないちょっと離れたところにいます。


「美味しいものはいい景色と一緒だと最高だよね」


 って、邪神さまが言っていました。

 はい! そうだと思います!


「けどっ、じゃっ……むぐっ!」


 邪神さまがくれるごはんのほうがおいしいです。

 って、言いそうになっちゃったので、トカゲから聞こえるアリスの声は消えちゃいました。


「ぷはっ! ま、またやっちゃった……」


 アリスはついつい邪神さまのことを口にしちゃうのです。

 分かってるのに、喋っちゃうんです。

 これじゃあ、邪神さまの黒聖女として失格です。


「うううぅ……」

「え?」


 悲しい声を出したのは、アリスじゃありません。


「し、失敗、した……なんで、こんな、ところに、きちゃった、ん、だろう……」


 メソメソしてるのは、フラフラと海から出てきた人です。本当に、海から突然出てきたんです。

 なのに、濡れてません。


「オバケ?」


 ううん。足があります。

 黒ローブを着た人間です。フードを深く被ってて、顔はちゃんと見えません。


「せ、聖王めええぇ……ど、どうやって、わたしの、いる、無人島を、探した、んだよ……。でも、同盟の、話は、おいしい……ヒヒッ、わ、わたしの代わりに、仕事、してくれるなら、やった! ヒヒヒヒヒッ!」


 黒ローブの人はこわい笑い声を出します。


「なあなあ、おれちゃんもあれ食べたーい!」


 黒ローブの人の肩に乗ってる羽根の生えた猫っぽいなにかが、私の食べてるお肉を見て言いました。

 黒ローブの人が、わたしのほうを向きます。


「ひぃっ」


 黒ローブの人は紫の髪のお姉ちゃんでした。

 目が合うと、なぜか悲鳴をあげます。


「こ、子ども、は、苦手、なの! 無理、無理無理っ! どこで、売ってるのか、聞け、ない!」

「じゃ、おれちゃんが聞いてくる。ついでに待ち合わせの教会の場所も聞いてきてやるよ!」


 羽根の生えた猫ちゃんがこっちに向かってきました。

 わたしはハッとします。


「あげません!」

「んなぁー!」


 シュバッ! と、お肉に向かって飛び掛かってきた猫をわたしはシュババッと避けました!

 お肉狙いなのは分かってます。


「やるなぁ、ガキんちょ」

「ふっふっふっ。黒聖女を舐めないでいただきたい」

「あれ? お前……」

「あれ? あなたは……」


 わたしたちは見つめあいます。

 そして、力強く頷きあいました。

 ガシッと! わたしの拳と、猫の尻尾を合わせます。


「この気配! あなたも関係者ですね!」

「関係者どころか、おれちゃんはあいつに作られたからな!」

「つ、作られた⁉︎ す、すごいです……!」


 さすがは邪神さま!


「なになにっ! な、なんで、無言で、分かり合って、るの⁉︎」


 黒ローブの人はハワハワとわたしと猫を交互に見ます。

 どうやら彼女は分からない人らしいです。


 それにしてもハワハワしすぎです。

 挙動不審ってやつですね。

 怪しいですね。

 怪しい人には近付いてはいけません。


「お肉をどうぞ」


 私は邪神さまに作られた素晴らしい猫ちゃんに残りのお肉を串から取ってあげました。

 私たちは同志ですから。


「なあなあ。教会の場所知らねえ?」

「教会は、ここと反対ですよ。高台のほうですから」

「ありがとよ!」

「いえいえ、お気を付けてです」


 わたしは猫ちゃんに手を振ります。

 黒ローブの人がわたしに手を振り返そうとしましたが、その手付きがあまりにも不器用さんで怪しかったのでわたしは顔を逸らしました。


「ひぃん! こ、子ども、分かんない、よぉ……」

「お前が怪しいからだろ」


 その通りです。

 わたしは猫ちゃんの呟きに頷きます。


「うひょえん……」


 黒ローブの人は変な声で泣きながら、去って行きました。


「ちょっと、かわいそうでしたかね?」


 けど、見た目に騙されちゃダメです。

 わたしをジャビさまに捧げた村長や村の人たちだって、最初はやさしい顔をしてました。


 わたしはもう、ジャビさまと邪神さましか信じません。


「暗くなる前に帰りましょう」


 わたしはお肉のタレがついた指を舐めます。

 そして、そばに置いていたリンゴの入ったカゴを持とうとして……


「むぐっ!」


 後ろからお口を塞がれました。

 わたしはバタバタと抵抗しますが、あっという間に動けなくされちゃいました。


「むぐぐっ! もごごっ!」


 ああっ! しかもトカゲが落ちてしまいます!


「……! っ!」


 わたしは呪いのせいでトカゲがいないと声が出ないんです!

 そんなわたしは、大きな袋の中に入れられてしまいました。

 な、なんですか⁉︎ 誰ですか⁉︎


「本当にこいつが勇者の妹なのか⁉︎」

「さっき一緒にいたのを見た奴がいた! 間違いねえよ!」


 外からとんでもない言葉が聞こえてきました!

 ゆ、勇者の妹⁉︎

 なんて失礼な!


 わたしは魔王の側仕えにして、邪神の黒巫女ですよ!

 勇者の妹どころか、勇者とは敵対関係です!

 そもそも、わたしは勇者を見たことがありません!


 わたしはジタバタと暴れ回ります。


「おい! こいつ暴れるぞ!」

「問題ねえよ。眠り草が入ってる。そのうち寝落ちちまう!」


 そんな声が聞こえたかと思うと、わたしは、わたしは……すぴぃ。

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