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6話『技術開発局の2人』

 帝国東圏側のとある地下施設。

そこには、蝋燭による照明が点在する、迷宮が広がっている。

その暗闇の中を、質素なワンピース姿の一人の少女が憔悴した状態で駆ける…


蛇の紋様のチョーカーを付けた少女の手には、中折れ式の回転式拳銃リボルバーと林檎を模した木像を持っている。


その様子を、迷宮よりもワンフロア上の一室から、ドレスコードを決めたVIP達が見物し賭博をしている。

ワインを片手に、カジノテーブルにチップを掛ける者、親密そうに語り合う男女など様々な客が見える。


息を切らしながら迷宮を彷徨い、疲弊した少女の顔が、僅かに緩む。

少女の視線の先には、照らされた台の上に杯が設置されている。

出血し痛む右足を引きずりながら、その杯へ近付く…


一歩、また一歩と歩み寄る。

緊張の糸が解けた、少女が杯まであと一歩のところで…

背後で巨大な気配が蠢く。


気配に勘づいた少女が振り返り、回転式拳銃リボルバーの引き金を引く。

薄暗い迷宮内に、数発の銃声が反響する。


そして、迷宮の暗い地面に、血に濡れた林檎の木像が転がる。


ーーー


首都機関の地下層にある資料室…

西圏側の森で負った傷が癒えた、南花とアリサは、技術開発局の一員として資料を読み漁っていた。

何かの拍子で倒れてきたら、人溜まりもない程の大きさの棚と棚の間で集中している2人。


「やぁ、2人とも調子はどう?」

白衣の裾を揺らしながら、新たな上司エンキが訪れる。

上司であり、統括長ドミニウムへ2人は敬礼をする。


「あぁ、良いよ…技術開発局ウチでは、堅苦しいのは無しで」

虫を払うかのようなジェスチャーをした、フランクな局長が続ける。


「いきなり、神獣【ギルタブリル】討伐計画は難題過ぎたかな?」

南花とアリサへの初仕事は、帝国の東側に連なるザグロス山脈を守護する、ティアマト側の神獣を討伐することである。


「そうですね…失敗に終わった前回の討伐任務の報告書を良く読んだのですが…」

銃職人としての知見を持つ南花が先に応える。

「巨大な蠍、ギルタブリルの特殊な硬い外皮は、神格由来の大半の魔術を無効化するが…咄嗟に撃った護身用の散弾銃は、その外皮を僅かに損傷させたと…」


「この結果を鑑みてですね…ライフルの銃弾として放つ弾頭を金属で覆い、貫通力を高めれば、外皮へのダメージを与えれると思われます。」

エンキの方を向いて、自信満々に伝える南花。


「うーん…まぁ、アリなんじゃない?」

一瞬、考える様子を見せたエンキは賛同する。


「外皮を損傷させて、ヤツのコアが露出したら、後は私の雷撃をぶちかませば…今度こそイケるかもね。」

複数の研究を同時進行している為、この件に関しては熟考出来ていなかったエンキは、自身の視野からは得られない助言にニヤつく。

「これで、本件に関するギルガメッシュからのお小言が減りそうで良かった、良かった…」


「この計画を進める上で、2つか確認をしておきたいことがあります。」

アリサが進言する。


「先ず…私と南花以外にも、射撃に長けた人間を召集し、討伐小隊を編成しろとのことでしたが、あと何人ほど集めれば良いのでしょうか?」

南花が続けて提言する。

「そして、もう1つは…ギルタブリルを討伐する上で、新たな銃弾を開発する必要があるので、製鉄所から支給される金属の量を追加出来るよう助言をお願いします。」


「うん…小隊のメンバーは、君達を含めて5人程度で頼むよ。」

南花の方を向いて、エンキが続ける。

「そして、金属の追加は、私からも言っておくよ…ザグロス山脈を完全に制圧することで大量の鉄を確保出来るからね…その上でのシュリンプだと思えば安いものだよ。」


「あと3人ですか…」

短く応えたアリサは、考える様子を見せる。

「ありがとうございます。」

エンキへ感謝を伝えた南花に視線をやるアリサ。

「南花、付いてきて欲しい所があるわ…」

どこに?っと首を傾げる南花…


「東圏側B区にある【地下遊演地】に…」

「地下遊演地?」

聞いたことあるような…無いような…みたいな反応の南花。


「東圏側の地下に幾つかある、危険な娯楽施設のことですね!」

「ひぇ!」

何処からともなく現れたスーツ姿の帝国憲兵アハトに、背後を取られたエンキがビビる。


「アハトさん、お得意の迷彩魔術ですか?」

数日前に、同じ手を食らった南花が、やれやれといった表情をする。

「ま、まぁ…私は最初から気付いていたけどね…半神格だしぃ。」

見え見えの嘘をつくエンキ。


「ねぇ…アリサが、ひぇって言った?」

「いいえ、私じゃないわよ。」

エンキとアハトが会話しているのを横目に、小声で確認し合う2人。


「オホン…アハト、地下遊演地の周辺は治安が悪いし、2人に同行してあげなよ…」

気を取り直したエンキが、2人を気遣う。

「エンキ局長の心遣いは、有り難いのですが…憲兵が一緒だと逆に警戒されてしまうので、付近までで結構です。」

アリサが応える。


「そっか…じゃあ、アハト、近くまで車で送ってあげなよ。」

「了解しました。」

アハトが軽く頭を下げる。

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