69話『月世乃旅人』
再構築計画の後…ギルガメッシュは、帝国の再開発の為に王として奔走している。
忙しなく移動するなか…ギルガメッシュは腕時計を見て、時刻を確認する。
「しまった…もうこんな時間か…」
時計が午後2時を過ぎている事を意識したギルガメッシュは、強い空腹感に襲われる。
そして、ふと周囲を見渡す。
「ほぉ、屋台か…助かる。」
ギルガメッシュの視線の先には…赤いのれんに『ナガサキ』と書かれた屋台がある。
「親父、一杯良いか、急いでいるから堅めで頼む。」
その屋台の席に座り注文する。
「あいよ…」
背を向けて調理する、店主の声が気になったギルガメッシュの動きが一瞬、止まる。
「へい、チャンポンお待ち…ほぉ、久しぶりじゃないか王様。」
「ふん…聞き覚えのある声だと思えば…お前か【風来坊】…」
アヌの使徒の一人である【アトラ・ハーシス】が、店主として立っている。
「アトラ…お前、何しに来た?」
ギルガメッシュが、出されたチャンポンをすすりながら問い掛ける。
「久しぶりにこっちの方を旅するついでに、あの少女2人がやらかした件について調査しに来たんだよ。」
白い調理衣姿の飄々としたアトラが、話した後にしまったという表情を見せる。
「やらかしたとは…どういうわけだ?」
箸が止まったギルガメッシュの視線が、鋭くなる。
「いやぁ…何のことかな?」
アトラが明後日の方向を見て誤魔化そうとするが…目の前の王は逃さない。
「アヌの使徒が、このメソポタミアに限っての通り名なのは知っている…同時に複数存在する世界の歪みを監視し…時には、その問題点に介入する組織『月世乃旅人』が本当の名前なのだろ?」
そう問い詰めたギルガメッシュは、再び麺をすする。
「はっはは…流石は、星を良く識る国の王様だね…僕たちは正式には【月世乃旅人】と呼ばれているよ。」
誤魔化せないと思ったアトラが真実を告げる。
「まぁ、最高神から王権を授かった俺だからこそ知っている事実だがな…俺以外は知る者はいないと思うぞ。」
ギルガメッシュが話す様に促す。
「機密規定があるから詳しくは話せないけど…源南花君とアリサ・クロウ君によって、魔術が更に影の存在になり、科学がより突出する世界が生じたと言う事だよ…悪いが、これ以上は言えないな。」
今までの飄々とした雰囲気とは変わり、アトラが真面目な口調で答える。
「そうか…エンキやモルガーナが喜びそうな世界だな…安心してくれ俺とお前だけの話だ。」
チャンポンを完食し立ち上がった、ギルガメッシュが続ける。
「俺は、この世界で…このメソポタミアの地で、バビロニアの王としての『権利』と『責務』を全うするだけだ…どうせ、また会うことになりそうだな…またな…」
その言葉を最後に、ギルガメッシュは去っていく。
屋台を後にするギルガメッシュを、遠くから見る一人の錬金術師はベンチに座っている…
「実は私も知っているんだよね…『月世乃旅人』のことは…」
そう呟いたモルガーナ・ピルグリムは、立ち上がり…帝国東圏側B区にある博物館へと歩みを進める。
ーーー
帝国博物館の関係者以外立ち入り禁止の札が掛けられたエリアの先に、モルガーナは入っていく…
その手には、エンキドゥが封印されていたトランクと同じ物が握られている。
そして、一回り大きな本棚の目の前に立ったモルガーナは決められた場所に、そのトランクを床に置く…
すると、歯車が回る様な音と共に、本棚が右回りに半回転し…別の空間への入り口が開く。
トランクを再び手にしたモルガーナが、その入り口を通過すると…何事もなかったかの様に閉まり、元の本棚に戻る。
自室である…黄昏時の書斎に帰って来たモルガーナは、複数並ぶ本棚の中のうちの一つの前に立ち止まる。
その本棚に納められている本の一つを手に取り開く…
開かれたページには、星を模した球を手で転がす猫のマークが装飾された栞が挟まれている。
何かを確認したモルガーナは、再びその本を戻す。
その戻された本の背表紙には…
『ハイカラ・オブ・リビルド』と記されている。
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