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62話『帝国の新世界より』

帝国東圏側B区内にあるビルの一室内には、窓に雨がポツリ…ポツリ…っと当たる音だけが不気味に響いている。


その室内にあるダブルベッドの前には、アリサの元同級生だった金髪縦ロールの少女【パネトーネ・バール】を含めて、士官学校のセーラー服姿の少女3人が立たされている。


「どうしてこんな非常時に…それにアタシの友達には、手を出さないっていう約束は忘れたの?」

パネトーネは、目の前にいる偽りの旦那と、その両隣にいる男達に対して声を震わせつつも…巻き込んでしまった友人2人を庇う。


「アハハ…この帝国ももう終わりだ…そんな時だからこそだよ…パネトーネ一人で俺らの相手が出来ると言うのなら構わないぞ、アハハ!」

偽りの旦那は、帝国に蔓延し始めた混乱の空気に当てられ、普段以上に狂い出している。


偽りの旦那が、パネトーネに対して首で指図すると…両隣にいる男達も微かに笑い出す。

その指示に促されたパネトーネは、ゆっくりとセーラー服の胸当てを止めているボタンに手を掛ける。


そのパネトーネの震える様子に耐えきれなくなった、友人達が声を掛けるが…パネトーネは見え透いた虚勢を張り、ひきつった笑顔を見せる。


「こんなにも震えている女の子達に、更に悲しい思いをさせる大人達は見過ごせないな…」

落ち着いた鶴の一声で、その場の空気を一瞬にして支配したのは、帝国内では見慣れない黒いセーラー服にスカートとタイツの組み合わせの女性だった。


「お…お前、鍵が掛かっているのに、どこから入って来やがった!?」

「えっ、どこからって、地下よりも更に地下から入って来たけど。」

唐突に現れた存在に驚きを隠せない男の一人に対して、黒いセーラー服の女性はあっさりと当たり前の様に切り返す。


「ナメやがって…そもそも、お前は誰なんだよ!」

そう恐怖に駆られたもう一人の男が、殴り掛かるが…


その男が、黒いセーラー服の女性までもう一歩と言う間合いまで近付いたタイミングで、男の足元に深夜の様に黒い沼が突如として現れる。


「なんだ!?このんまは!…やめろ!離してくれ!」

それが最後の言葉となった男は、首元で黒い沼に纏わりつかれた上で…首の付け根を境に上下に切り離されてしまう。


そして、宙を舞った首は、ドップンと言う水面に投げ込まれた石に似た音を立てて、黒い沼に完全に吸収されてしまう。


「嫌だ!助けてくれ!」

もう一人の男も同様に、黒い沼に吸収されてしまう。

「ふっ、はは!お前は何者なんだよ!?」

偽りの旦那は、懐から回転式拳銃リボルバーを取り出し構えるが…


「私の名前は、黄泉ちゃん…そして…」

黄泉は、偽りの旦那に足元を見る様に、指で指示する。


「冥界の統括長ドミニウムこと、エレシュキガルだよ。」

偽りの旦那の足元にも広がる黒い沼から、続きの言葉が聞こえてきて…

その沼から現れたエレシュキガルの分身に、沼底へ引きずり込まれていく。


「なんだよ!くそが!」

そして、他の男達と同様に、最後はドプンっと言う音共にもがれた首も完全に沈む。


「いや…お願いします。助けて下さい。」

目の前の圧倒的な存在に対して命乞いをするパネトーネ達は、咄嗟に土下座する。


それに気付いたエレシュキガルが歩み寄って来る。


「うーん…そうだね…アリサ君に感謝する事だね。」

土下座する少女達の勾玉の様な形状をした魂を見た上で、エレシュキガルはそう言い残し、次の瞬間には消えていた。


「えっ…助かったの…」

緊張の糸が切れたパネトーネ達は、キョトンした表情を見せる。


ーーー


メソポタミアの地において、太陽の権能を持つマルドゥクが落ちたことで、バビロニア帝国は極夜に包まれ始める。


薄暗い地上…東圏側B区の街を、冥界の統括長ドミニウムであるエレシュキガルがマイペースに散策していく…


何かの終わり際を感じさせる曲【家路】を鼻歌で歌いながら歩くエレシュキガルの周囲を照らす為に、彼岸の花であるセンコウハナビが微かにパチパチっと燃える。


そのエレシュキガルによって選別された周囲の帝国の民達が、短い断末魔を上げながら…ドプンっという音と同時に只の黒い水溜まりと化していく…


そんな悲痛な叫びを気にすることなく、黒いセーラー服を着た冥界の管理者は、街中のショーウィンドウに目を向けたりする。


しかし、次の瞬間…軽快だったその歩みと鼻歌が止まる…


「おっ、久しぶり…私の冥界に殴り込みに来たとき以来だっけ?…妹ちゃん…」


「えぇ、そうですわね…エレシュキガル姉さん。」


冥界の統括長ドミニウムを任された姉の前に、地上の帝国西圏側の統括長ドミニウムである妹イシュタルが立ち塞がる。

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