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40話『狼とリボルバー』

帝国西圏側の第一騎士団の管理地域に、踏み込んだ南花達5人。

アリサやサクラとすれ違う住民の中には、東圏側とは違い…剣や弓矢を装備した人間が散見される…

初めて西圏側の市場を歩くコマチが、立ち止まりそうになるのを、アオイが引っ張る。


「協力してくれるのは有難いのだけれど…その…ユキノさんの件の直接的な解決に繋がらないのに、サクラ達は本当に良いの?」

先頭を歩くアリサが、自身の直ぐ後ろを歩くサクラに問い掛ける。


「うん…一度乗りかかった船だし付き合うよ…それに、アリサと南花の計画が達成することが、ユキノ姉さんを今の帝国のシステムから解放してあげる事に繋がるかもしれないし…」

賛同したサクラは、微笑む。


「そうだね…南花さんと出会ったからこそ、見えてきた可能性だと思うし。」

アオイが、南花へ視線を向けて賛同する。

「そうだな…南花と出会わなければ、ユキノの存在にも気付けな…それに…」

発言を途中で止めたコマチは、嗅覚を研ぎ澄ませる…


「コマチも気付いたかしら?…尾行されている事に。」

先頭を歩いていたアリサが、振り向く。

「アリサ、本当に?」

南花が僅かに不安そうな表情を見せる。


「えぇ…分かる範囲でも3人は、いるわね。」

「あぁ、ずっと追いかけてくる匂いはそれくらいだな。」

コマチが頷く。


「右の道に曲がろう…」

「いや…そっちの道からも、ずっと同じ匂いがする。」

提案しかけた南花の言葉を遮ったコマチが…飲食店のテラス席に、一瞬だけ視線を向ける。


「もしかして、囲まれてるの?」

アオイが、不安の声を漏らす。

「そうね…包囲されつつあるわね…」

アリサは、振り切る為に、数少ない選択肢を思索する。


「南花さんとアリサさん達ですね…グレイから話を聞いています。説明は後でしますので、彼らから逃げたければ付いて来て下さい。」

南花達に突然話し掛けてきた、ローブを着た女性の顔は、フードで口元しか見えていない。


「えっ、でも…」

「今は…あなたの提案に乗るしかないみたい。」

罠の可能性に躊躇う南花を見つつ、サクラが決断すると…他の面子も頷く。

5人の決断を聞いた、ローブの女性が走り出す。


「こっちです。」

先導するローブの女性に付いて行くしかない南花達の眼前に、地下へと伸びる階段が現れる。

「(貨物輸送用、路線…)」

地下への入り口付近の標識を一瞥した、南花は急ぐ。


南花達が誘われた地下には、線路の両脇に一定の間隔で、ランタンがほのかに灯る…


「追って来ているわね…いや、足音が変わった?」

「正面からも、さっきの奴らと似た匂いがするぞ…」

アリサが聴覚で追っ手を、コマチが嗅覚で待ち伏せを察知する。


「あなた、本当に味方なの?」

他に選択肢が無かったとはいえ、南花が改めて疑いをローブの女性に掛ける。

「えぇ…それより静かにしてください。」

その女性は、背を向けたまま…ローブのポケットに手を入れ、何かを探している。


「来ます。皆さんも迎撃の用意を…」

ローブの女性は、ポケットから小型の木槌ガベルとトランプカードを取り出す。


「えっ、はい。」

そう驚きつつも応えた南花は、神獣ギルタブリルを討伐したことで開発出来た、回転式拳銃リボルバーを構える。

より質の高い金属が手に入ったことで、口径は同じだが銃本体の強度が上がり…従来に比べて、より火薬量が多い実包マグナムを装填出来る仕様へと変化した。


「サクラ達に、背中は任せるわ。」

そう言ったアリサも使い慣れた単発式拳銃シングルピストルを構える。


「了解…」

「うん、任せて下さい。」

応えたサクラとアオイは、南花の銃と同様に実包マグナムを撃てるようになった、中折れ式の回転式拳銃リボルバーで警戒する。


「うん?…これは、人の匂いではないぞ…」

銃身の短い水平二連式散弾銃ソードオフ・ショットガンを構えた、コマチが異変に気付く。


「これは…狼…」

サクラの言葉通り…先ほど南花達が降りてきた階段から、2メートル程の獣の四肢と牙が見える。

「えぇ…魔術によって召還された、【フェンリル】です。」

ローブの女性がそう応えた直後…二匹目…三匹目…っと数が増えていく。


階段からだけではなく、線路の先の暗闇からも、フェンリルが複数匹現れる。

標的である南花達へ、十分に近付いた狼達は、一斉に飛び掛かる。


南花の回転式拳銃リボルバーが一発を放ったのを、皮切りにアリサ達も各目標に向けて発砲する。


「一発でこの大きさの獣を仕留める事が出来るのは…嬉しい誤算かな…」

自ら改良した銃弾の性能に、驚きを隠せない南花。


「線路の奥から、まだまだ来そうだし…それは今の私にとっても嬉しい誤算よ。」

そう応えたアリサは、素早く単発式拳銃シングルピストルの薬室から空薬莢を取り出し、次弾を装填する。


「流石は、ギルタブリルを討伐した方達ですね…連携が取れている…」

3匹のフェンリルから向けられる敵意を意に介さないローブの女性は、発砲と装填を交互に行うことで、戦況を優位に進める南花達を評価する。


「彼女達の救援に来た以上…私も目の前の獲物しごとを片付けるとしましょう…」

そう意気込んだローブの女性は、手にする木槌ガベルとトランプカードに魔力を流し込む…


すると…木槌ガベルは僅かに発光し…トランプカードは、術者の眼前で浮遊する。

そして、魔力が生み出す向かい風によって、フードで隠れていた女性の素顔が露になる。


「目には目を、歯には歯を…故に、汝からの敵意に対し、私は制裁を与える。」

向かい風によってローブの下から僅かに見えるフォーマルな燕尾服と、女性のキリッとした目元が、その語気をより強める印象を与える。


燕尾服の女性が手にする木槌ガベルで、眼前に浮遊するカードの内、スペードのキングを叩くと…

線路内に響き渡る、かん高い音を立てながら…飛び道具の様に、フェンリル目掛けて飛んでいき…その頭部へ突き刺さり制圧する。


「すごい…お役人さんみたい…」

判で押したように、次々と機械的にフェンリル達を制圧する燕尾服の女性の姿に、南花の口から思わず感嘆が漏れる。


「えっ…嘘でしょ…何でこんな所に…」

銃撃の合間に見える人影にアリサは、驚きを隠せない。

「どうして…シスターがいるの!?」


「あぁ、またですか…あの方は、気にしなくて大丈夫です。いや…寧ろ、誤射して貰っても構いませんよ。」

ため息をついた燕尾服の女性が辛辣な言葉を投げる。


「あのシスターさん、足元がおぼつかないし…手に酒瓶?持ってない?」

南花も信じがたい現実を、凝視してしまう…


「朝のれいはいも終えて~あたしの秘密の地下室での楽しみの一杯を…邪魔する、この音はぁ…何かな?」

頭部を覆うベールから僅かに黒髪を覗かせるシスターは、フラフラと戦場へと介入してくる。

その手には、帝国では全く流通していないウィスキー入りのスキットルが握られている。


「んぁ?一際、大きな犬だね…どうして…顔が三つもあるのかな?これは不味いね…思いの外、酔いが回っているね…」

酔っ払いのシスターの前には、南花達が対処してきたフェンリルの3倍程の大きさを誇る【ケルベロス】が現れ、敵意を示す咆哮を上げる。


「もぅ…うるさい幻聴だね!」

シスターが耳元で飛ぶ蚊を払う素振りをすると…

その右手の動きに追随する様に、朱色の薄い刃が数枚現れ、ケルベロスを切り裂き沈黙させる。


そのケルベロスが倒されたことを機に、フェンリル達は撤退していく…


「団長…昼から決めるのは、よして下さいと何回も言いましたよね?」

燕尾服の女性の語気が先ほどよりも強くなる。

「あっ…やば…よりにもよって【ハンちゃん】に見つかるとは…許してよ。」

酔っ払いシスターは、謝りつつも…へっ、へへぇと上機嫌である。


「その呼び方はやめて下さいと何度も…はぁ…皆さん、名乗るのが遅れましたが…」

燕尾服の女性は、気を取り直して自己紹介する。


「私が、第一騎士団にて秘書を務める【ハンムラビ・ミドラーシュ】と申します。そして、この酔っ払いが、第一騎士団の団長【ヨハンナ・ユノー】です。」

南花達に軽く頭を下げるハンムラビに遅れて、ヨハンナも頭を下げるが…

その拍子に、口元から地面にかけて小さな虹が掛かる。

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