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間章-珈琲と紅茶のFika Time-

帝国東圏側B区内、エンキの自室にて…

東圏側B区の統括長ドミニウムと技術開発局の局長を兼任するエンキ、西圏側の第三騎士団と第四騎士団を束ねる統括長ドミニウムであるイシュタルが言葉を交えている。


「相変わらず悪趣味な部屋ですわね…」

イシュタルは室内にある、黒く変色してしまった縫合跡がある複数の蛹が入った虫籠、大きい飼育ゲージで飼われ餌に群がる100匹程のネズミ達に対して、嫌悪感を示す。


「フッ、フフ…君には、この深淵アビスの良さは分からないだろうね。」

部屋の主である科学者ギークは口角を僅かに上げたあと、一応、来客だし…もてなしてやるかと思い切り出す。

「生憎だが、ここにはコーヒーしかないけど…それで、良いかな?」


「そのお気遣いは感謝しますが…わたくしには、これがありますので、お湯だけ頂けたらと思いますわ。」

そう応えたイシュタルが、持参していた小型のトランクを自慢気に開けると…

ティーポットやティーカップに、茶葉ウバの缶等の紅茶セットが露になる。


「はぁ…君は相変わらずマナーが良いのか、無礼なのか分からないなぁ…」

そうぼやいたエンキは、お湯を沸かす為に、アルコールランプとフラスコを実験用の備品棚から取り出し準備をする。


室内のテーブルを囲む2人…

テーブルの上には、イシュタルが持参した焼き菓子カステラが置かれ、紅茶ウバ珈琲エスプレッソの香りが立っている。


「それで…私の部屋を訪れた本題はなんだい?」

珈琲を一口飲んだエンキから切り出す。


「とぼけないで下さいませ。ギルタブリルの討伐から帰還した貴方から聞きたい事と言えば一つしかありませんでしょ?」

イシュタルは、ティーカップとソーサーを持ち紅茶の香りを嗜みつつ、眉をひそめる。


「あぁ…討伐後のあの夜、私が本当に【冥界の執事ドゥムジ】にしてやられてしまったのか?っていうことだね。」

カステラの上品な甘さにエンキはホッとする。


「えぇ、その事ですわ、どうなのですか?」

更に勿体ぶるエンキに対して、イシュタルの語尾が微かに強くなる。


「結論から言うと…電磁結界を事前に張って、ドゥムジの催眠魔術は防いだよ。エレシュキガルが、南花君達に接触する可能性が高いことは分かっていたからね…」

エンキは予想が当たった事に対して、不敵な笑みをみせる。


「どうして討伐部隊の皆さん全員に…いいえ…神獣との戦いの後で、自分自身にしか結界を張る事しか出来なかったのですね。」

エンキの討伐後の状態を労り、イシュタルは言葉を紡ぎ直す。


「うん、その通りだよ…南花君達との対話が目的ならば、こちらへ不用意に損害を与えて、彼女達を刺激する事は避けたいだろうと予測してね。」


「それで、南花さん達はどうするのですか?」

カステラを一口、頬張ったイシュタルが更に問い掛ける。


「どうもしないさ…暫くは観測するだけさ。エレシュキガルとの対話が彼女達をどう変化させるか気になるじゃないか!」

新たな科学反応の可能性に心を踊らせる科学者ギークは、珈琲を片手に、ソファーから思わず立ち上がってしまう。

「って、アァツゥ!」

そして、僅かに溢れてしまった珈琲に驚く…


「はぁ…全く貴方っていう人は…」

イシュタルは、ため息混じりにハンカチをエンキに渡し、言葉を続ける。

「己の探求心の為に、統括長ドミニウムとしての権利ノブレスを行使するばかりではなくてですね…責務オブリージュを果たすことも優先してくださいませ。」


貰ったハンカチで、白衣に付いたシミを叩き落としたエンキは、席に着く。

「全く分かっていないなぁ~イシュタル君は…私は、己の探求心の為でもなく、帝国への忠誠心から実験をしている訳では無いんだよね…」

エンキは、コーヒーを更に一口飲む。


「私は、あくまでも人類の進化のことを優先しているんだよ。帝国の枠組みとか関係無くね。」

考え込むイシュタルを他所に、目の前の科学者ギークは続ける。

「遅かれ早かれ、いずれは今の帝国の秩序システムが移り変わる時が来るだろうしね。イシュタル君はどうなんだい?」


わたくしは、権利ノブレス責務オブリージュを行使致しますわ。帝国の秩序が変わる最後の時まで…そして、この帝国が再構築された後でも、民意から必要とされるなら直向きに。」

西圏側の統括長ドミニウムイシュタルは、きっぱりと宣言する。


「なるほど…冥界を攻略しに行き、実の姉に返り討ちにされた件も、権利ノブレス責務オブリージュだったと?」

「なっ!なんで、このタイミングでその事に触れるんですの!」

エルフ特有の長い耳を真っ赤にするイシュタルの様を、エンキはニヤつきながら楽しむ。


「まだ根に持っていますの?そ…その件に関しましては、エンキさんにもご迷惑をおかけしましたわよ。」

「フ、フフ…そんなことはないさ!あ~はっはは!」


こうして、2人の珈琲と紅茶のFika Timeは終わっていく…

お読み頂きありがとうございます。

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