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10話『トネリコマンション』

地下道化師トネリコのサクラ達が、南花とアリサを目的地へと案内する。

南花の目の前にある建物は、1階部分にワイン製造場と酒類をメインに提供する軽食店が併設された所謂、ブラッスリーが営業している。

そして、その上に居住目的のマンション部分が5階、乗っている。


「ここが、地下遊演地と地下道化師トネリコの住居が併設された…

通称【トネリコマンション】よ。」

サクラが、自虐めいた声色で南花とアリサへ告げる。


「えっと、このマンションに何人くらいの地下道化師トネリコ達が住んでるの?」

ビルの下から上までに視線をやった、南花が問いかける。

「そうですね…私達のマンションには、100人くらい住んでます。」

アオイが、少し間を置いて答えてくれる。


「えっ!100人も住んでいるの?」

南花が、マンションにある窓枠から部屋数を想像し、住居人数に対して明らかに少ないことに驚きを隠せない。


「まぁ、階級の低い地下道化師トネリコ達は、一部屋に三段ベッド4つで鮨詰め状態だからな…」

コマチが買い物袋から取り出した、板チョコを噛りながら応える。


「えぇ…私達も最初は苦労したわね。」

そうこぼしたサクラやアオイ、コマチ達の蛇を模したチョーカーの一部をよく見ると、筆記体で『A』という文字に変形している。

それに対して、少年のチョーカーは一部が筆記体で『C』という文字に変形している。


「それじゃあ、行こっか。」

サクラが諭し、南花達はブラッスリーの入り口を開ける…


ブラッスリーの店内は、夕方という時間帯、控えめな照明、レコードのジャズが相まって落ち着いた雰囲気を演出している。

複数のテーブル席とバーテンダーが立つカウンター席がある。

そして、カウンター席に座るセミフォーマルな装いの男女が、入店してきた南花達を一瞥する。


「何?あの子達?」

「あぁ、地下の見世物トネリコ達だろな…」

下卑た視線を向けながら、男女が小声で言葉を交わす。


その下卑た視線に対して、あぁ…またか位にしか感じないサクラ達は、店奥にあるエレベーターへと歩みを進める。

そのエレベーターの前には、バーテンダーが立っており、地下遊演地の関係者かどうかを確認する役回りを担っているが…


そのバーテンダーは、サクラ・アオイ・コマチの3人を見るや否や、地下道化師トネリコの証であるチョーカーを確認することなく…

顔パスでエレベーターに乗ることを許可する。


エレベーターの外扉と格子形の蛇腹模様の内扉を、サクラが開け、全員が乗り込む。

そして、サクラはエレベーター内の直ぐの足元にあるボタンを踏むと、内扉が閉まり…

更にサクラが、目の前にあるレバーを左に傾けると、エレベーターが下降を始める。


その下降に合わせて、レバーの上にある階数を示すランプも点滅し、エレベーター内の正面上部にある、半円形の階数表示表の針も左に傾いていく。

そして、目的の階数に着いたエレベーターはガクンっという衝撃と共に止まる。


サクラが、エレベーターの内扉と外扉を開けたことで、見えてきた景色に南花が驚く…

「あっ、すごい!本当に地下に舞台がある!」

「うん、これが私達の活躍の場…地下遊演地です。」

アオイが南花の感嘆に応える。


南花の眼下には、広い長方形の舞台があり…

舞台より一段高い、南花達がいる階層には、それを囲むように客席がある。

客席には、純粋に演目を観覧する為に、敷き詰められた安い席…

バーが併設され、演目の結果に対して賭博を行える、VIP席の2種類ある。


「おぉ、これは…クロウ家のご令嬢さんじゃないですか。」

ねっとりとした油のような口調に、アリサは一瞬、ギクッという表情をした後…

いつもの冷静な顔で声の主の方を見る。


「お久しぶりです、【コルネッティ・バール】伯爵。」

コルネッティと呼ばれた紳士は、スーツに帽子とフォーマルな装いをしてはいるものの、肥えた腹部によってベルトは緩く、シャツの下のボタンが閉まっていない…


「最後にお会いしたのは、娘さんの士官学校の高等部への入学式でのスピーチ以来でしたね。」

「あぁ、そんな前でしたか…ウチの娘とは仲良くしてくれていますかね?アイツと言えば、長期の休みになっても家に帰ってこやしねぇ…」

バール家は帝国軍部の資金面でのパトロンの一人であり、その見返りとして多少のグレーゾーンな稼ぎに関して、黙認して貰っているという関係にある。


「えぇ…とても仲良くして頂きましたよ。とは言え、私は首都からの指令で早期に卒業扱いになりましたので…今後は娘さんとの交流が減るのは残念です。」

アリサの言葉は感謝を伝えてはいるものの、その笑顔は冷たい。


「あぁ、風の噂で聞きましたが首都勤めとはめでたい!今回は、首都絡みのことでしょうか?何にせよ、立ち話もあれですから、移動しましょう。」

金の流れの匂いを感じ取ったのか、手際が早いコルネッティが応接室に案内する。

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